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ヨイノヒ

PAOの舞台となる『ヒノモト』は、現実世界リアルと同じ時間軸で動いている為、現実世界との時差は生じない。


ただ、現実世界と大きく異なる点がある。


それはヒノモトには基本的に『夜』がこない事である。



これは特定の時間にしかログインできないプレイヤーへの配慮とされ、朝にログインしようと夜にログインしようと、日が出ている状態(天候は変わる)のヒノモトで活動する事となる。



しかし、全く夜がこない訳ではない。



先日のイベントは特別だったとしても、通常は週に1度のペースでランダムに、"24時間"夜が訪れるのだ。



午前0時00分から午後23時59分まで夜となるその日は『ヨイノヒ』と呼ばれ、対象となる日は完全にランダムである事から、運営の気まぐれとも、プレイヤーのスキルとも噂されている。


また、ヨイノヒには特定のモンスターが強化されたり、その日のみ出現するモンスターがいたりと、いつものPAOと違った世界が楽しめる為、プレイヤーの間では好評であった。



ユウが森林へと草原地帯を進んでいると、日が暮れ始め、周囲が真っ赤に染まった。



「夕方になったって事は・・・明日はヨイノヒか。そろそろ日付が変わる頃だな」



夕暮れ現象はヨイノヒの30分前から起こる。


ヨイノヒは午前0時からなので、現在は午後23時30分を過ぎた辺りだという事が窺えた。



「う〜ん。結構長い時間遊んでるな・・・。でも、どうせなら素材をゲットしてからログアウトしよう」



クエストをやりきろうと決めたユウは、途中で遭遇するモンスター達を倒しながら森林の入口へと向かう。



今回の目的は、森林内を徘徊する孤高のモンスター、『鉱石狼こうせきろうオルフェノ』がドロップする素材であった。


オルフェノ討伐の適正レベルは20以上なので、レベル20以下のプレイヤーが単独で相手するのは本来厳しいが、フブキが言うには黒鎧とオーバーコートを装備している今のユウなら単独でも倒せるとの事。



彼女の言葉を信じ、ユウは警戒しながら森林へと足を踏み入れる。


以前は森林へ入る寸前でクロードの奇襲を受けた為、前回の教訓を活かし、再び装備した盾を前面に構えながら歩を進めた。


今回は誰にも阻まれる事無く入れたが、引き続きユウは油断せず、木の影に隠れながら移動する。



探索開始から十数分経った現在。


日がだいぶ落ちて夜の気配が濃くなる中、影と同化した黒鎧姿のユウは湖のほとり近くの木々に身を潜めていた。


畔はちょっとした広場となっており、現実世界でいえば、野生動物達の水飲み場のような場所であった。



「ここならモンスターが現れるかな?」



ヨイノヒ前の影響か、森林へ足を踏み入れてから今までオルフェノどころか一度もモンスターと遭遇する事がなかったユウは、闇雲に移動する事を止めて、モンスターが現れそうな場所で待ち構える事にしたのだ。



その切り替えは功を奏し、1体のモンスターが畔へ姿を現した。


青灰せいかい色の体毛と鈍色の瞳を持つ全長1.8メートル程ある大型の狼モンスター、『鉱石狼オルフェノ』である。


森林の王者に相応しい容貌をしたオルフェノは、ユウに気付かずそのまま湖へと近付き、喉を潤し始めた。



ユウとの距離は十数メートル。



斜め後ろに位置するユウは、隠れる為に外していた盾と剣を再度装着する。


位置的には気付かれにくいが、距離が若干厳しい。


それに相手は狼。ゲームとはいえ、その特色である探知機能は備えているはずだ。


だが、完全な奇襲は不可能とはいえ、剣の届く位置まで距離を詰める事ができればチャンスはある。



すると、水を飲んでいたオルフェノがふと空を見上げ、その体勢で固まった。


今が好機とばかりにユウは音を消して木の影から離れ、一歩、二歩、三歩と助走をつけ、四歩目から全力で駆け出してオルフェノとの距離を一気に詰める。


オルフェノの尾と後ろ足を剣の範囲内に収めたユウは、足を狙って走りながら低く横払いした。



その時である。



ー ウォオオオオオオオオン!! ー



「っ!」



ー ギィイイイイン! ー



突然オルフェノが空に向かって遠吠えすると、直後、体毛が青黒色へと変色し剣を弾いた。


押し切れないと判断したユウは数歩後退する。



その間にオルフェノの身体は膨れ上がり、全長が2.5メートルを超す巨体となっていた。



「ま、まさか!?」



驚愕するユウに対し、巨大な狼モンスターは緩慢に、しかし、尋常ではない圧力を伴いながら、空からユウへと頭部を向け、黄金色の眼で彼を見据える。



「『魔石狼オルタナ』・・・!」



現在の時刻は午前0時1分。


かつてオルフェノであった狼モンスターは、ヨイノヒの加護を受けて変貌し、更に巨大で強力な『魔石狼オルタナ』として、ユウに牙を向いた。

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