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早朝のこと

アーサーの勝利によって、生き残っているプレイヤー達が更に勢い付き、イベントの残り時間が5分を切ったところで、砂漠の兵達の全滅が確認された。



『これにてイベントを終了致します。たくさんの御参加ありがとうございました。また、順位発表および報酬贈与は集計終了次第お伝え、配布致しますので、しばらく御待ちください。繰り返しますーー』



運営のアナウンスと共に砂漠のフィールドにいるイベント勝者達、各観覧席にいる敗者達の足元に転移用の魔法陣が浮かび上がる。



イベントの勝者いきのこりは、『アーサー』『トりスタン』『エルドリッサ』『ちょこぱふぇ』『斑鳩』の5人。


彼らはハイタッチをしたり、肩を組んだりしいてお互いにイベント攻略クリアの喜びを分かち合っていた。


その光景を眩しげに見ていたユウは、次第に悔しさと憧れを持つようになった。



自分ももっと強くなってあの場に立ちたい。



ニカやベル、アランと別れの挨拶をしたユウは、人知れず決意の拳を握りしめながら観覧席を後にした。



イベントから一夜明けたGW初日の早朝。



大和ユウはいつもより早い時間から、河川敷で自主練習を行う。



「ふっ!はっ!」



アーサーとアラジンや、他のプレイヤー達の戦いを見たユウ(大和)は昨夜あまり眠れなかった。


彼らの勇姿を見た大和(ユウ)の心に火がつき、興奮が抑えられなかったのだ。



いつもより早い時間の上、連休ゴールデンウィークという事もあり、河川敷を通る人はいつも以上に少ない。


人目が少ない分、大和はいつも以上に周りを気にせず自主練に集中でき、早々と自分の世界へのめり込んでいった。



「ユウ?」



自主練を開始してから1時間近く経過した頃、PAOのPNプレイヤーネームで大和を呼ぶ声がした。


大和が練習を中断して周囲へ意識を向けると、いつの間にか近くにブロンドヘアーの容姿端麗な男性が立っていた。



「アーサーさん!?」



その人物こそ、先日のハンバーガーショップでの1件で知り合い、また、昨夜のイベントで強敵アラジンに激闘の末打ち勝った上位トッププレイヤー、アーサーであった。



「やあ、昨夜ぶりだね。現実リアルでは久しぶりだけど」


「そうですね。こっちでまた会うとは思いませんでした。それと昨日はお疲れ様でした」


「ユウもお疲れ様。ここへは運動目的で時々来るんだ。

・・・それにしてもユウが噂の『傘剣士』だったとはね。少し前から見ていたが、確かにPAOでの動作と通ずるものがあるな」



アーサーは大和と傘を交互に見て、納得するように頷いた。



「傘剣士?」



一方の大和は聞き慣れない単語に首を傾げる。



「僕の家族もここを時々通るんだけどね、その時に、傘を剣のように振り回す人物をよく見かけるらしいんだ。

不審者かもしれないと心配していたけど・・・本当に剣の練習をしていたんだね」


「あ、その、迷惑をお掛けしてごめんなさい・・・」



アーサーは苦笑気味に説明し、納得した大和は迷惑をかけた事を謝罪した。しかし、アーサーはその謝罪を否定する。



「いや、悪い事じゃないから謝らなくて良いよ。むしろ、己を磨く為の行動なのだから胸を張るべきだ」


「でも、動機がゲームで強くなりたいって理由だし・・・不純じゃないですかね?」


「不純であるものか。ゲームであろうと何だろうと、高みを目指す事に恥じる必要はない。もちろん犯罪を除いてね」


更にアーサーは言葉を続ける。


「僕達上位プレイヤーの多くは君のように現実世界リアルでも鍛練して、経験とイメージを得ているんだ。

だから断言しよう、ユウ。その鍛練を続けていけば君はきっと強くなる」



アーサー自身が上位プレイヤーである為、説得力のある言葉となり、大和は素直に聞き入れた。



「ありがとうございます。俺、頑張って強くなって、いつかアーサーさんと戦いたいです」


「ああ、僕も君と戦う日を楽しみにしてるよ」



大和は新たな目標を掲げ、アーサーは笑顔でそれに応える。


その後、少し雑談した2人は別れ、アーサーはジョギングを、大和は傘で剣術の鍛練を再開した。



「はっ!せっ!」



大和はアーサーと出会う前より気合いを入れて鍛練を行う。



彼と約束したのだ。


強くなって戦うと。


そして、彼は応じてくれたのだ。


楽しみにしていると。


その約束を果たす為、大和は再び自分の世界へと潜っていった。

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