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獅子座の輝き

試合開始直後、2本の矢がアーサーへと放たれた。



1本は彼の正面、もう1本は側頭部の方から。


狙うタイミング、威力ともに完璧な射撃であった。


狙ったのは『アーチャー』と『ロビン』。


2人ともPAOでは名の知れたプレイヤーである。



しかし、アーサーには当たらなかった。


彼もまた開始直後、前面のプレイヤーを攻撃する為に前へと駆け出したので、側面からの矢は外れ、また、眼前へと迫る矢に至っては駆けながら手にした剣で斬り払ったのだ。


アーサーはそのまま、正面に捉えたプレイヤーとの距離を詰め、一刀の下に斬り捨てる。



剣とアーサーの攻撃力が高いのか、革鎧程度の防御力では耐える事ができず、そのプレイヤーは何も出来ないまま瞬時にHPバーを散らして消滅した。


勢いに乗った彼は、周囲にいたプレイヤーを流れるような動きで次々と屠っていく。


中には腕に覚えのあるプレイヤーもいたが、それでも2、3合しか打ち合う事ができず、流麗な剣撃の前に散っていった。



「すごいな。アニメや漫画の戦闘シーンみたいだ」


「ホントだねえ」


多人数をものともせず相手取る姿にユウとニカは思わず感嘆の息を洩らす。



「せやろ。アーさんの戦う姿はいつ見ても惚れ惚れするわ」


ベルもモニターに映るアーサーの勇姿から目を離さずに同意した。



「あの動きはスキルで強化されてるのかな?」


「ちゃうちゃう。アーさんのスキルは強化系やなくて、もっと分かりやすいやつやで。やからあの動きはアーさん自身の実力やわ」


俗に言うプレイヤースキルやなとベルは補足する。



「まあ、攻撃力と速度は、基礎値と積み重なったステータスポイントで強化されてるんやろうなあ」


ステータス等の情報を知られると戦闘する上で不利となるので、当然の事ながらプレイヤーのほぼ全員が秘密にしていた。



もちろん、アーサーのステータス情報も不明であるが、その戦闘スタイルからA【筋力】とS【敏捷】に重点を置いているのだろうと彼女は予測している。



「あの剣も強いのかな?」


ユウはアーサーが振るう剣にも興味を引かれた。


装飾が施されている柄は黒銀色で、煌めく刀身はオレンジがかっている、明らかに通常の加治屋では入手できそうにない美しい武器であった。



「『聖剣・コールブランド』」


それまで黙ってモニターを眺めていたトりスタンがユウの問いに反応する。



「伝説の剣、『エクスカリバー』の異称なんだから弱い訳がない」


驚いたユウが彼の方を向くと、もう説明は終わったとばかりに再びモニターを注視していたが、その表情はどことなく自慢気であった。



「まあ、そういう雑学的な知識は抜きにしても、あの剣は強いで」


すっかり解説係となったベルが苦笑しながら説明する。



「PAOには『聖』や『魔』が付く装備があってな。それらにはスキルが付与されてんねん」


「え!?じゃあ、その装備を付けたプレイヤーはスキルを2つ以上使えるってことか?」


「そやで。ちなみにそれらの装備は『伝承装備』言うてな、1つしか装備できひんから、プレイヤーが使えるスキルは最高2つまでって事やね」


「なるほどな。多すぎたら伝承装備の装備数イコール強さになってしまうからか」



そうなれば、プレイヤー自身のオンリーワンスキルが埋もれてしまい、PAOの楽しさが減ってしまう。


伝承装備を1つに限定するよう設定した、名も知らない開発陣のスタッフにユウは心の中で感謝した。



「んでな、伝承装備っていってもピンからキリまであってな。条件を満たせば誰でも入手できるものから、ゲーム内に1つしかないものまであるんや」


うちの箒も実は『魔杖・魔女の箒』っていうんやで。


とベルは心の中で自慢する。



「伝承装備の中でもランクがあって、誰でも入手できる低いランクの伝承装備はその分スキルも控え目で、逆に1つしかない装備は超強力なんやて。まあ、その分入手方法も激ムズらしいけどな」


「じゃあ、もしかしてアーサーの剣は・・・」


「お察しの通り、ゲーム内に1つしかない伝承装備やで。さすがにスキルは教えてくれへんだけど」


「そうなんだ。一度見てみたいな」


「それやったら・・・、アーさんが本気出せるくらい強くならんとな」



そう言ったベルは、手の掛かる弟を見守る姉のように微笑んだ。


ユウはその表情にドキリとさせられる一方、ニカからの突き殺されるような視線を浴びて冷や汗を垂らす。



ユウ達が騒いでいる間にも、アーサーは次々とプレイヤーを打ちのめしていき、第3試合の生き残りもあと数名となった。


残っているプレイヤーは誰もが強者であり、振るう武器も大剣から短槍、破城槌メイスとバリエーション豊富である。


中でも珍しいのは『アラン』というプレイヤーが使用している銃剣であった。


ライフルの先に剣が付いているような現実の銃剣とは違い、銃と剣が一体化したような独特のデザインである。



「か、かっこいい・・・!」


その洗練されたフォルムが琴線に触れ、思わずユウは呟いた。



ー バァン!バァン! ー



刃の間に設置された銃口から発砲音が響き、アーサーの足元の地面が抉られる。


対して、さすがに銃弾は避けるので精一杯なのか、アーサーはアランとの距離を詰められないでいた。


その光景を目にした残りの全プレイヤーが、決勝トーナメント進出後の事を考えて一時休戦し、銃撃で足止めされているアーサーに狙いを定める。



第3試合のクライマックスは一対多数となった。


全員の視線がアーサーに向かっている。



「あっ、アーさん、スキルを使うかもしれへんわ」


アーサーが苦境に立たされる様をモニター越しに眺めていたベルが不意に呟いた。



ー バァン! ー



その直後、銃弾を避けたアーサーが剣を掲げ、スキル名を宣言する。



獅子座レイ・レグルスの輝き!」



彼の言葉に呼応するように剣が白く輝きーー



「な、何も見えない・・・?」



彼がスキルを発動させてから、モニター画面は白一色となり何も映さなくなった。



「眩し過ぎてな。まあ、モニター越しやから何も見えないだけやけど、あのフィールドにおったら【失明】の状態異常になるか、最悪一瞬で消滅してるで」


「一瞬で・・・あれがアーサーのスキルなのか?」


獅子座レイ・レグルスの輝きって言ってたやろ?

あれは獅子座の『レグルス』っていう恒星を対象のものに宿すスキルや」


「星を!?」


「正しくは星の輝きをな。それでも凶悪やで」


「確かに。こんなに長く目眩ましされたら、一方的な戦いになるな」


「凶悪なんは、それだけやないねんけどな。・・・っと輝きが収まるで」



モニターの白さが徐々に薄まり、フィールドが正常に映し出される。


そこには両手を挙げて降伏のポーズをとるアランと、彼の首筋に剣を当てるアーサーの姿があった。



また、少し離れた場所に、メイス使いのプレイヤー『ナオト』が倒れ伏せており、彼が光の粒子となって消えた瞬間、第3試合終了のアナウンスが流れた。



「あれが上位トッププレイヤー・・・」


「すごかったね」


アーサーはもちろんのこと、アランもスキル無しの戦いでは彼に引けを取らなかった。他のプレイヤーも同様である。



「俺もあんな風に戦いたい」



彼らの戦いをの当たりにしたユウは、強くなろうと、よりいっそう強く心に決めた。

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