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幕間 勝利者達の戯れ

「あ、あの!助けていただきありがとうございました!」



ニカは決勝トーナメント出場者用の観覧席に転位してすぐ、同じく転位してきた弓使いのプレイヤー『トりスタン』に礼を言った。


偶然だったとしても、敗北寸前であった彼女が、彼のおかげで生き残れた事に変わりはない。


真っ先にユウの元へ向かい褒めてもらいたい気持ちもあったが、ニカはそれよりも礼節を優先した。



「別に。『アーサー』に頼まれただけだし」


対して、トりスタンは素っ気ない態度で応じる。


「アーサー?」


「・・・まさか知らないの?」



彼女の反応に、トりスタンの目が少しだけ鋭くなり、張り詰めた空気が流れる。


その時、第三者が助け船を出した。



「りっ君はアーさんの事になると情熱的になるなあ」


ニカが振り返ると、そこにはベルとユウがいた。



「お疲れ様、ニカさん。ごめんなさい、トりスタンさん。俺もアーサーという名前は知っているんですけど、実際どんな人物かは知らなくて」


「謝る事はないで、ユウ君。ちなみにアーさん・・・『アーサー』は上位トッププレイヤーの1人で、たぶんPAOの中で一番有名なんちゃうかな」


「アーサーを知らなくてPAOをやってるなんて・・・。なんでアーサーはこんな奴らを・・・」


「もう!りっ君、そんな言い方したらアカンやろ?

この子らはまだ初心者やねんから、知らん事もあるって」



トりスタンはなおも不機嫌であり、ベルは彼を諌めると共に、ユウ達に事情を説明する。



「ユウ君と、えと、」


「ニカです」


「ニカちゃんか、よろしくなあ。さっきの試合すごかったで。うちはミルキー・ベル。ベルって呼んでな」


「あっ、は、はい。ありがとうございます・・・」



ユウと距離が近いベルを警戒していたニカであったが、彼女の柔和な微笑みに毒気を抜かれ敵意も薄れた。



「それでな。りっ君はアーさんのギルドメンバーで彼の信奉者やねん。だから普段はクールやのにアーさんの事になると少し暴走するんよ。今みたいに、アーさんに気に掛けられてる!って、やきもち焼いたりな」


「・・・そんなんじゃないし」


少し冷静になったトりスタンは、ばつが悪そうにそっぽを向き、呟くような小さい声で反論する。



「ああ、なるほどです」


その気持ちが理解できたニカは納得した。



「分かったやろ?それに拗ねたりするとあんな感じになるから逆に構いたくなるねん」


「あ、それも分かります!あと、ずっと気になってたんですけど、トりスタンさんの『り』は何で平仮名なんですか?」


「ああー、それな。それは本人から聞いた方が早いわ」



ベルは苦笑しながら、トりスタンに答えを促す。


彼はなおも顔を背けたまま、苦々しい口調で話した。



「・・・『トリスタン』は先に使われてたんだ」


「あ~・・・」



ニカとユウは揃って何とも言えない表情となった。


PAOは同じPNがつけられない。


その為、必然的に早い者勝ちとなる。


特に有名な英雄や歴史上の人物、漫画、アニメ、ゲームキャラクターは人気であり、競争率も激しい。



先にネームが取られた場合、ほとんどの者は違う名前を模索するのだが、トりスタンはそのネームに固執したようだ。



「私はオシャレで可愛いと思いますっ」


「うるさい」



その割に気にしているのか、ニカのフォローも一蹴される。



「いいんだ。ネームなんて。アーサーに実力を認められてるんだから」


トりスタンは自分に言い聞かせるように呟く。その呟きを聞いたニカは疑問を口にした。



「そういえば、アーサーさんは何で私を助けてくれたのでしょうか?」


「・・・別にアンタ個人を助けるよう頼まれた訳じゃない。『契約者』がいたら決勝戦に行かせるように言われただけだし」


面倒臭そうな表情をしながらも、トりスタンは答える。



「契約者?」


「特別なモンスターと契約を結んでいるプレイヤーの事。アンタも正体隠しの防具を装備しているし、契約者なんだろ?」



プレイヤーネームやレベルを隠す正体隠しの面は、今のところ前回イベントを鬼側で参戦したプレイヤーにしか配布されていない。


そして、そのプレイヤー達は例外なく契約者であった。



「・・・もしかしてトりスタンさんも?」



ニカが確認しようとした時、モニターの向こうから歓声が上がった。


第3試合の準備が整ったのだ。


そして、そのフィールドには、青いラインが入った白い全身鎧に身を包んだ騎士、『アーサー』が立っていた。



立っているだけなのに、周囲のプレイヤーから距離を置かれ、ニカの時と同じ空白地帯ができている。


だが、理由は異なる。


不気味な存在として避けられていたニカに対し、アーサーの場合は名声と実力によって避けられているのだ。


オーダーメイドらしき獅子を模した兜を被り、威風堂々とした立ち姿は、王者の貫禄があった。



「あれがアーサー・・・」


「決勝戦で当たるかもしれんから、アーさんの戦いは見といた方がええで。まあ、見たところで勝てるかは分からんけどなあ」


「勝てるはずないだろ。でも、ベルに賛成。見て絶望すれば良いんだ」



ベルとトりスタンの言葉を聞き、ユウ達はアーサーの一挙一動を逃すまいと、モニターに集中する。


そして


『0・・・戦闘開始バトルスタート!』


第3試合が始まった。

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