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大和と????

PK3人を退け、無事に王都へたどり着く着いた頃には、なかなかの時間になっていたので、2人は地点登録だけ行って解散する事にした。


地点登録を行うと、次回ログイン時のスタート地点の候補として選択できるのだ。



「それじゃあね。おやすみ、ユウ君♪」


「ああ、おやすみ。ニカさん」



GW中にユウと遊ぶ約束ができたニカはすっかり上機嫌になり、鼻唄を口ずさみながらログアウトしていった。



「おおぅ」



1人になったユウは周囲をぐるりと見渡し、人知れず感嘆の息を吐く。


第2の街も広かったが、王都ここはそれ以上、いや、比較にならないほど広大であった。



王都では、ルールを決めたPVP戦ができる『コロシアム』等の新たな施設がたくさんあり、プレイヤーやNPCが至るところで賑わっている。


ユウは「少しだけ見て回りたい・・・」という誘惑に駆られるが、さすがに休日を丸々寝て過ごす事はしたくないので、なんとか誘惑を振り切り、PAOの世界を後にした。



現実世界に戻ると、あと少しで始発電車が動き出す時間となっており、慌てて歯を磨き、今度は夢の世界へと旅立っていった。



「ん・・・」



そして昼過ぎ。


暖かい陽気に誘われて大和ユウは起きる。



「ん~!今日は晴れ!そして休み!よし!出掛けよう!」



誰かに言い聞かせている訳でもなく、大和はテンション高く今日の予定おもいつきを高らかに宣言する。


天気の良い休日で気分が高揚しているのだ。



彼は鼻唄を口ずさみながら、やるべき事をこなし、出掛ける準備が完了次第家を出た。


思い付きであった為、特に目的地もなくブラブラ歩いていると、いつも剣術の練習をしている河川敷に着いてしまった。



「今日は休もうと思ってたけど・・・日課だから無意識のうちに身体に刷り込まれてたのかな」



やる事も決まっておらず、せっかく訪れたので大和は剣術の練習を開始する。



愛用の傘がないので想像の盾と剣を握り、覚えた型を1つずつ確認する。


今日は休日の昼間かつ素手な分、一段と怪しい人物と化していた。


時折、堤防を通る人が興味深気に大和を見るが、彼は気にした様子もなく、型稽古に集中する。



結局、大和が剣術の練習を終了させたのは1時間近く経ってからであった。



「ふう。天気が良いからついつい熱が入った」



煌めく汗を拭い、満足した彼は河川敷を後にする。


PAO内で実際に盾と剣を構えて動いているので、素手でもイメージしやすく、型稽古とはいえ、その動きは様になっていた。



ー くう~・・・ ー



「・・・結構動いたし、腹が減ったな」


元々、外出先で食事をしようと考えていたので、家では軽くしか食べていない。


思い立ったが吉日とばかりに、大和は近くにある有名なハンバーガーチェーンに足を運んだ。



お昼時から少し時間がズレている為、店内の客数は落ち着いており、注文カウンターに並んでいる人数も彼を含めて数人しかいない。


これは比較的早く食べれそうだと大和は安心して列に並んだ。



しかし



「ねえ、ここってお姉さんは注文できないの?」


「俺、ハンバーガーのパンズ、ピクルス、パティ、ソース抜き」


「あの、お客様、他に並んでいるお客様にご迷惑が・・・」



大和の2組前の2人が無茶苦茶な注文を繰り返し店員を困らせているようで、列の動きが滞ってしまっていた。


本来なら、隣のカウンターで他の店員が対応するはずだが、どうやらもう1人の店員は注文側の2人と知り合いのようで、ニヤニヤしながらやり取りを眺めているだけで接客する気はないらしい。



大和は激怒した。


かの暴君でもこのような卑劣な事はしないだろう。


お腹すいた。


店員だけでなく、他の客に迷惑をかけていったい何様のつもりだろうか。


お腹すいた。



更に最低なのは、もう1人の店員もグルだという事だ。


その為、店員側から咎められる事もなく、だから奴らは余計に調子づくのだ。


お腹すいた。



全くもって卑怯な奴らだ!お腹すいた!


大和は空腹と怒りが限界まで達し、ついに爆発した。



「おい!アンタらーー」


「止めないか、君達。店員さんが困っているだろう?」



しかし、大和の怒りの咆哮は、突如として発せられた落ち着いた男性の声によってかき消された。



通常なら怒号が落ち着いた声に消されるはずがない。だが、消された。


何故なら、その落ち着いた声もまた、静かだが確かな怒りを含んでいたからである。



声の主は大和の前に並んでいる人物であった。


年齢は大和より少し年上のようで身長は高く、ちらりと見た横顔は端麗で、綺麗なブロンドヘアと相まって、まるで俳優やモデルのようであった。


もしかしたら、本当に俳優やモデルかもしれない。



そんな圧倒的な存在感を放つ男性を相手に、2人組は振り返る時こそ喧嘩腰で面倒臭気であったが、彼の顔を見た途端にその表情に驚愕と焦りが浮かんだ。



「え!?ア、アンタ!もしかして、PAOの!?」


「何だ、僕の事を知っているのか。ならば話が早い。君達もPAOプレイヤーなら、そんなつまらない事をしていないで、早く注文を済ませてくれ」


「な、何指図してんだ。ここはPAOじゃねえんーー」


「あ?僕、いや、俺の事を知っているんだろう?短気だという事も。確かにここはPAOじゃない。だが、だからといってお前達の振る舞いを見過ごす気はないし、喧嘩を売るというなら喜んで買おう。

PAOをしているお前達も分かるはずだが、スキルとステータス以外の実力はPAOと同じだぞ?」



2人組のうちの1人が、怯みながらも噛みつこうとしたが、男性のよく通る声は背筋が寒くなる程低くなり、有無を言わさぬ威圧感を伴った。


また、彼の脅しのような言葉により、なけなしの強がりが消し飛んだ2人組は、捨て台詞を吐いて、そそくさと店から出ていった。



残った2人組の知り合いであった店員も逃げるように奥へ引っ込み、その場には目を潤ませた女性店員とブロンドヘアの男性、大和の3人が残された。



「余計な事をして申し訳ない」


「いえ!とても助かりました!ありがとうございます!」



男性が女性店員に謝ると、彼女は慌てて否定し感謝の言葉を口にする。


心無しか頬が紅く染まり、目がハートマークになっている。



女性店員と2、3口会話をした後、彼は注文を行い、大和へと振り返った。



「君の出番も奪ってしまったね」


「いえ、あそこで俺が声をあげても、貴方のようにスマートに解決できなかったので、むしろ俺も助かりました」


「あれは偶然だよ。彼らがPAO・・・同じVRMMOをプレイしていたから早く解決できたんだ」


「あの・・・実は俺もPAOプレイヤーなんです。まだ始めたばかりですが」


「そうだったのか!凄い偶然だな!あ、でも、今は大人気のゲームだからあり得る事か」



男性は大和の言葉に驚き、喜び、そして納得した。



「貴方はPAOでも有名なんですね」


「ん?君は知らないのか?・・・あ、始めたばかりだしな。僕のPNプレイヤーネームは『アーサー』。覚えておいて損はないよ」


「アーサーさんですか。分かりました。覚えておきます。ちなみに俺のPNは『ユウ』です」


「『ユウ』か。俺も覚えておこう。ちなみに今はどこまで到達してる?」


「昨日ようやく王都に着いたところです。」


「最初の王都かな?なら良いタイミングだね」


「?」


「その様子じゃ今日はまだログインしていないな。今日、告知があって来週にイベントが開催するんだってさ。内容はコロシアムでのPVP戦らしい」


「イベント!?」


「ふふ、詳しくはログインした時に分かる。っと」


アーサーの注文品が完成し店員に呼ばれたので、彼は嬉々として受け取りにいった。



「さて、それじゃ先に失礼するよ。機会があればまたPAOで会おう」


「はい!」


アーサーは大和ユウに声を掛けると、足早に店外へと歩いていった。



「アーサー・・・。名前からして強そうだな」



大和は1人呟き、自分の注文品が出来上がるまで、のんびりとPAOの事を考えた。



ちなみにアーサーが注文した商品はキッズセットであった。

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