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黒騎士二人

「はぁっ!」



ー ギャインッ! ー



ユウの斬撃を浴びた『コボルトリーダー』は身体を両断され、瞬く間に光の粒子となって消える。


同種のコボルトより強い個体であっても、今のユウとニカの前では通常のコボルトと大差はなかった。



「ふう。凄いなこの鎧。全然ダメージを受けない」


「ふふふ。少しだけ動きが鈍くなるけど、防御力は折紙付きだよ」



感心するように黒騎士は頷き、もう1人の黒騎士も明るく相槌を打つ。


そう、現在ニカはもちろん、ユウも黒い全身鎧の騎士姿となっていた。



2人の鎧姿は男女の差はあれど、ほぼ同じ造りであり、鎧の性能ステータスも同じであった。


ただ、兜だけは大きく異なり、ニカはユニコーンをモチーフとしているのに対し、ユウの兜はドラゴンをモチーフとしている。


これはフブキのセンスであり、厚意によるものであった。



もちろん黒騎士姿はいたく目立ち、それが2人もいる事で、彼らを目撃した他のプレイヤー達やネットの掲示板の間で話題となり、PNプレイヤーネーム特定や、黒鎧の入手方法特定が盛んに行われた。


しかし、裏加治屋であるフブキの出現コンタクト条件の困難さや、正体隠しの能力がある兜のおかげでPNを割られる事なく、ユウ達に辿り着いた者はいなかった。



そんな騒ぎになってるとも知らずユウ達は和気あいあいと、出現するモンスター達を薙ぎ払いながら歩を進める。



彼らが向かう先は、街へ戻る前の山脈方面ではなく、始まりの街や第2の街が属している国の首都にあたる、『王都』と呼ばれる街であった。


山脈へと続く森林には、まだクロードもしくは他のPKがいる可能性もあり、王都の方へは草原一本で、奇襲される心配も森林よりは低い為、目的地を変更したのだ。



ユウ達は現在、王都まであと少しの地点にいた。



「お邪魔虫モンスターは多いけど、ピクニックみたいだったねっ」


冒険も終盤に差し掛かり、ニカは声を弾ませてユウに笑い掛ける。



「そうだな。見渡す限り草原だし、気持ち良い景色だったよ」


「本当だね。お菓子やお弁当があればもっと楽しかったんだけどね。それにしても王都はやっぱり凄いね。まだ離れているここからでも城壁がおっきく見えるよ」



まだ少し距離のある目的地を見たニカは感嘆の息を漏らす。


その距離からでも分かる程、街は広大であり、また、囲う城壁も高く立派であった。



「あれだけ広かったら1日2日じゃ全て見て回り切れないだろうな。まあ、数日後にゴールデンウィークもあるし、その時にでもゆっくり見ようかな」


「ご、ごーるでんうぃーく・・・」


「ん?ニカさん、どうかした?」


「あ、あのね、ユウ君!」


「う、うん?」



突然ニカが緊張と真剣さをブレンドした大声でユウに問い掛けたので、彼は思わず身構えてしまった。



「ゴールデンウィークなんだけど・・・ユウ君はどうするの?」


「ああ、なんだ。その事か」



真剣な悩みや相談だと思っていたユウは、他愛もない話題だったので、拍子抜け半分、安堵半分で小さく息をつく。



「俺は特に予定は決まってないよ。強いて言うなら少しだけ実家に顔を見せるのと、後はこのPAOくらいかな」


「そ、そうなんだ」



よしっ。


ニカの気合いの籠った小声は幸いにもユウには聞こえなかった。



「じゃ、じゃあさ、ユウ君、良かったらーー」


「あー、マジでいた!」


「本当かよ?おっ、マジだ」


「マジで真っ黒なのな」



ニカが意を決して緊張気味にユウへと話しかけた時、無情にも複数の騒がしい声が割り込んできた。



王都の方から近付いてきた3人は、いずれも銀色の全身鎧姿であり、顔は見えないが声を聞く限りは男性のようだった。



「チッ。ネームとレベルが分からねえ。なあ、お前ら名前は何だ?」


3人のうちの1人、『エッケザックス』という名のプレイヤーがユウ達に問い掛ける。



「・・・」



相手が友好的でなく無作法な言葉遣いだからか、ユウは口を閉ざし盾と剣を構え、ニカは俯きながら無言で後退して、彼らから距離をとった。



「おいおい、シカトかよ。ムカつくなあ。リーダー、予定通り殺そうぜ」


『グラム』というプレイヤーが、鎧と同じ色の両手剣を構えて、苛立ちを含んだ声で悪態をつく。



「まあ、こいつらに聞いたところで教えてくれそうにないしな。それより殺していっちょ有名になってやるか」


「片方はビビッて逃げてるし、それに武器はまだ初心者用だし、どうせ見かけ倒しだ。今回は楽勝だな」



リーダー格とおぼしき、『ティルヴィング』というプレイヤーがグラムの意見に同意し、エッケザックスが同調してユウ達を挑発した。


それでもユウは無言である。



「ケッ!言い返す根性もねえのかよ、腰抜け!・・・あ?ギャハハハッ!マジか!コイツ震えてやがる!」



ユウから一番距離の近いエッケザックスは、彼の剣を握る手が震えているのを見て、大きく嘲笑した。



「ああ、これもう勝ち確定だわ」


「仲間に置いて逃げられ、コイツ自身は戦う前から震えてるし、ダサ過ぎるだろ」



エッケザックスの言葉を聞いた2人も次々と嘲笑し、それぞれの得物を構えながらユウとの距離を詰める。



実際、ユウは震えていた。


だが、彼らにではない。


負のオーラを駄々漏れさせている後方の存在かのじょにである。



ちなみに、彼らがユウを馬鹿にする度に暗いオーラはその量を増やしていった。



そして、爆発する時が訪れた。



「さあ、さっさと殺して次の獲物でもーー」



ー ドォオン! ー



ティルヴィングが大剣を腰だめに構えたまま、ユウへと突進攻撃を仕掛けようとした時、激しい衝突音と共に彼の姿が消えた。



「「なっ!?」」



エッケザックスとグラムが仲間の突然の消失に驚愕している中、ユウだけは落ち着いていた。


というか達観していた。



(やっぱりニカさんだけは怒らせないようにしないと・・・)



彼は知っている。


ティルヴィングが消えたのは彼女の仕業だと。


正確には消えたのではなく、ニカの突進攻撃の直撃を受けて突き飛ばされたのだ。



その証拠に、エッケザックスらの後方に本命武器ランスを携えた彼女が立っており、ランスの先にはティルヴィングが突き刺さっていた。



彼らがティルヴィングを捜す為に周囲を見回したところ、ちょうど彼が光の粒子となって消える瞬間を目撃する。



「・・・は?」


「え・・・?」



それでもエッケザックス達は状況を飲み込めず、武器を構えながら棒立ち状態となっていた。


そんな彼らにニカは、再びランスの槍先を向ける。



「せっかく・・・勇気を出したのにぃいいいい!!」



恨みの籠った絶叫を伴いながら、黒い彗星は咄嗟に突き出した盾ごとエッケザックスを貫いた。



「嘘・・・だろ・・・」



信じられないという声で呟いた彼は、ティルヴィングと同じく光の粒子となって消える。



「何なんだよ、お前ら」


ようやく我に返ったグラムは、ユウ達に激しい怒りをぶつけた。



「弱いフリは演技かよ。怖じ気付いて震える真似までしやがって卑怯だぞ」



震えたのは演技じゃない、だとか、そもそも弱そうとかはそっちの勘違いでは?など、言いたい事は多々あるが、一方的とはいえ今は戦闘中なのでユウ多くは口にせず、構えた剣をしまいただ一言。



火竜フレアドラ右手ハンド。」



ユウの右手が黒籠手ごと赤く煌めく竜鱗を纏う。



「チッ!『ソード石像スタチュー』!」



グラムもスキルを発動させ、ユウの足元の地面から石の剣を突出させたが、彼は既に走り出していた為、空振りに終わる。



「クソがッ!」



連発できないスキルなのか、グラムは悪態を付きながら両手剣でユウを迎え撃つ。



ー ヒュオッ! ー



風切り音と共に放たれた鋭い袈裟斬りはユウに当たったかのように見えたが、剣先が彼に触れた瞬間、その姿が揺らめいて消え、剣はむなしく地面へと墜ちていった。



「あ?」



グラムは驚愕し、そして、自身の胸に赤く煌めく右手が突き刺さっているのに気付いた。



「マジかよ・・・」



本日何度目かになる「マジ」を発し、彼も光の粒子となって消えていった。



こうして、PKパーティを返り討ちにした黒騎士二人の実力は、返り討ちにされた本人達や目撃者達の証言によりあらわとなり、更に有名となった。



なお、ユウこと大和のゴールデンウィークの予定に、重要事項としてニカこと花奈との遊ぶ日が入ったのは言うまでもない。

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