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隠れ加治屋

街に戻り、ニカに案内されるまま連れられた先は、双子の加治屋のどちらでもなく、ちょっとした路地裏にある普通の民家であった。



「この前ぶらぶら散策してたら、たまたま見つけたんだよ」


とは黒騎士少女の御言葉。



「フブキさーん」


本当にここが加治屋なのかと疑問を持つユウを尻目に、彼女は扉を3回ノックして、家主と思われる人物の名前を呼んだ。


すると民家の扉が開き、中から中年の女性が顔を出した。



「なんだいニカ・・・だよね?その兜は。また依頼かい?」


言動から察するに、この女性がフブキらしい。



「はいっ。ただ、今回は私じゃなくて私のお、お友達のなんですけど」


友達というワードが言い慣れていない為か、少しだけつっかえてしまう。



「お友達ぃ?そんな正体隠しの防具をいつも被ってる極度の恥ずかしがり屋に友達なんて・・・」



女性はそこでようやくニカの隣にいたユウに気付く。



「・・・いたね。友達」


「はいっ!」


目を大きくして驚く女性に、ニカは元気よく答えた。


きっと兜の下は満面の笑顔に違いない。



「初めまして、ニカさんの友達のユウと申します」


ようやく口を挟めるタイミングを見つけたユウは、早速自己紹介を行った。


それと同時に女性に対して、一目見た瞬間から気になっている事を訊ねる。



「あの、不躾な質問ですが・・・フブキさんは鬼族の方ですか?」



そう、彼女の頭には鬼族の証である角が二本生えていたのであった。


その昔、まだヒノモトの小国と交流していた時代、フブキの先祖である刀鍛冶が見聞を拡げる為にヒノモトへと移り住み、その後も、フブキの家系は鬼族とヒノモトの交流がなくなってからも、ヒノモト内で細々と隠れ加治屋を営んできたのである。



家の中に通されたユウ達は、彼女からこの街で隠れ加治屋を営んでいる経緯を聞かされた。



「今じゃ、同じようにこちらに隠れ住んでる仲間や、訳ありの奴ら相手にしか商売してないけどね」


「じゃあ、一般人相手に仕事するのはニカさんが久しぶりだったんですか?」


「何言ってんだい。ニカの兜の元になった正体隠しの面も鬼族だけの技術なんだから、私らと関わりがあるだけでも、このも十分訳ありさね」



呆れたように彼女は言葉を紡ぎニカを見るが、その目には優しい光が灯っていた。



「それに、オニガシマに攻めてきた連中を追い払う手伝いをしてくれたり、獣皇女の女騎士なんだから、私に言わせりゃ訳ありの中でも群を抜いてるね。その友達のアンタもね」


「ユウ君も同じだよ。一緒にオニガシマで戦ったの」


「そうなのかい?」


「はい。ただ、鬼族の人達が強過ぎてお役に立てたのかは微妙ですが」


「アハハハハ!鬼族の男連中は屈強だからね。それでも・・・私の故郷がお世話になったね。お礼と言っちゃなんだけど、依頼を受けさせてもらうよ」


「本当っ!?ありがとう!」


「ありがとうございます!」



話がまとまったところで、ユウも正体隠しの面をフブキに差し出し、ニカの兜のように加工してほしい旨の依頼をした。



「御安いごようさ。ちなみにニカの時はヨウサイの鎧皮を合わせたけど、アンタ・・・ユウも何か合わせるかい?」


「あ、俺はそういう素材がないからーー」


「私のヨウサイの素材を使って!」


「いや、それはニカさんのものーー」


「まだ余ってるし2人で討伐したんだから半分こしようよ!それでも納得できないなら、また素材集めを手伝ってくれると嬉しいな」



フブキとユウとの会話にニカが割って入る。


始めは彼女の提案を申し訳ないと断りかけたが、勢いに圧され甘える事にした。



「それじゃ、しばらくここで待ってな」


「分かりました、ありがとうございます。よろしくお願いします。」


「ありがとう。フブキさん!」



彼女は奥の部屋へと消えていき、しばらくした後、黒い兜を手にして戻ってきた。


2人はフブキに再度お礼を言い別れ、街の大通りへ戻る。



「ニカさん、今日はありがとう」


「えへへ、ユウ君とお揃い・・・え?、あ、ごめんっ!何かな?」


「助けてくれて、更にフブキさんまで紹介してくれてありがとう」


「あ、ううん!喜んでもらえて私も嬉しいよ。それに一緒に素材集めやレベリングもしてもらえるし」


「そっか。じゃあ、早速フィールドに出てみる?」


「うん!明日は土曜日だし、今日は遅くまで遊ぶつもりだったの。ユウ君は何時まで大丈夫?」


「俺も明日は用事ないし、ニカさんに合わせるよ。いっぱい楽しもう」


「朝までいっしょ・・・」


「ニカさん?」


「うふふ、そだね!いっぱい楽しんで強くなろうねっ!」


「お、おう」



ニカの声は兜でくぐもって、所々聞き取れなかったが、彼女もやる気十分だという事は窺えたので、ユウも気合いを入れて目一杯楽しむ事にした。



こうして2人は再びフィールドへと舞い戻ったのであった。

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