ウィリアム大佐・Ⅱ
箸休め回です
飛ばしても本編にはほとんど影響ありません。
よんだら少しだけ楽しくなるかも、な回です
よろしくお願いいたします
レオニア国軍の未来を背負って立つと言われる男、ウィリアム大佐は夜も忙しい。
ツールフという田舎町から王都へ戻ったばかりの彼は、自宅の一室でバスローブ姿のまま、仕事をしていた。
ウィリアム大佐率いる特務隊の任務は今現在行われている『草刈り作戦』の一部、とりわけ危険な思想犯や政治犯を監視、もしくは逮捕を行うものだった。
(メンバーは揃いつつある……順調にいけば年明けにも准将へ昇進……あとは)
彼の野望は大きい。そして叶えた後も忙しいだろう。
彼が持つ気がかりは一つだけ。
それは——
「お兄様……失礼します」
ドアがノックされ、誰かがやってきた。
ウィリアム大佐にとっての気がかりだ。
入って来たのは、ウィリアムと同じ輝かしい金髪とサファイアブルーの瞳を持つ女性。
抜群の美しい容姿を持つ妹の来訪に、彼は笑顔を作る。
「やあ、クラウディア。こちらへ来てくれ」
「はい……」
兄と同じくバスローブ姿の妹・クラウディアはウィリアムの前に立った。
八頭身の見事なスタイルは見る者を唸らせる。
「学校はどうだい?」
「問題はありません」
クラウディアは十七歳。ウィリアムにとっては歳の離れた妹である。
「任務の方は?」
「忙しいです……」
「そうだよね、特務少尉殿」
彼女は士官学校の学生でありながら、極めて優れた能力と実績を持つ。本来なら学業に専念するところを特例で任務にあたっているのだった。
「君は自慢の妹だよ。ではいつもの確認をさせてもらおうか」
「はい……」
感情のない瞳のまま、彼女は来ているバスローブをゆっくりと脱ぎ始める。
しゅるりと着ているものが落ちたあと、クラウディアは下着姿になった。
ウィリアムはその姿を至近距離から食い入るように見つめ、時々満足げに頷く。
いったいなにを確認しているのか。それは——
「素晴らしい筋肉だ……」
兄は妹の筋肉を確認していた。
うっとりした恍惚の表情。
きめ細かい肌に浮かぶうっすらとした筋肉の線を見て、ウィリアムは感心した。
「炭水化物は?」
「計算通りの量を……」
「不摂生はしていないようだね」
「はい……」
「うん、これならおばあ様の剣技も極められる。いや、その上にすら……」
確認が終わり、再びバスローブを着たクラウディアは、やや俯き加減で兄に尋ねた。
「お兄様……また任務に行かれるのですか……?」
妹が寂しがっている、と考えた兄は笑顔になる。
「寂しがらせてすまない。王都にはしばらくいるけど、中々ここには戻って来られないかもね」
「そう……ですか」
「だが、それも心配しなくていい。僕の特務隊に君を配属させてもらう」
「!?」
「もちろん、僕の右腕として。それならいつも一緒にいられるだろう?」
「……はい」
クラウディアの返事に満足したウィリアムは、鍛錬を怠らないように指示して、下がらせた。
完璧な容姿と、完璧な剣。そして頭脳。クラウディアはウィリアムの宝だ。
気がかりは自分が見ていない間に、悪い虫がついてしまうかもしれないということである。
「まあ、釣り合う者などいるわけもないが」
嫁がせる気はないが、もしも必要に駆られた場合は、王族以外にないだろう。
「さて、あとは例の実験体のことだが……」
机に戻り、資料を確認する。
ツールフ近郊にて悪名高い『グレン隊』の一個小隊が全滅したことで、実験体に対する警戒度は上がっている。
「サブロウに任せてもいいけどね」
彼の部下であるサブロウ少尉は謎の大男と実験体のことを知っている。
しかし、共に戦ったという経緯から、情にほだされてしまう可能性もあった。
「ギョーム大尉では武力が足りない」
優秀だが戦闘は得意としていない大尉では返り討ちにあうだろう。
だとすると、やはり妹であるクラウディアこそが自分の右腕にふさわしいと思った。
「おっと、その前に少将との食事があったか」
ウィリアム大佐は公私ともに忙しい。
一つの事に専念できないのがもどかしいところではあるが、さらに高みを目指すのであればしかたがなかった。
「僕がフィールディング家を必ず再興してみせる」
彼は固く決意するのであった。




