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物語の終わり

 少しだけ、その後の話をしよう。


 戦闘能力を失ったベンジャミンは冒険者を引退し、孤児院からもそれなりに近い田舎にある小さな冒険者ギルドの職員に転職した。一度はSランクに上り詰めたことで敬意を払う冒険者には自分の知識と経験を惜しげもなく伝授し、落ちぶれたと馬鹿にする冒険者には容赦のない拳を伴う対応を取った。

 固有能力以上に失った魔力量が致命的で、上級魔法さえ満足に使えなくなったからこそ引退した。だが筋力や体力は並の術師に少し劣る程度に留まっているし、何より戦闘技術や経験を失ったわけではない。田舎で燻っている程度の冒険者が相手で一対一の勝負なら、七割くらいの勝率を叩き出しているらしい。


 同じく戦闘能力を失ったピーターは危険度が並のトレイルラビットどころか野兎にも劣ると判断され、例の法令における飼育、保有に関する条件がなくなった今もベンジャミンと共にある。

 今ではベンジャミンの勤める冒険者ギルドのマスコットとして愛されていて、特にウォーンという女性術師は暇さえあれば無抵抗なピーターの背も腹も手も耳も全身くまなく撫でまわしている。ベンジャミン個人としては止めさせたいところだが、こんな田舎のギルドにいてくれるのが奇跡的な実力者だから機嫌を損ねるなと上司命令により止めさせることを禁じられている。


 サムエルはベンジャミンの引退により《ラピッドステップ》が解散したことで数多くのパーティーから勧誘されたが、その全てを断り孤児院のマザーの下で魔術師として鍛え直し、最年少記録こそ逃したが未成年のうちに魔導師の称号を手にしてみせた。

 その後も冒険者に戻ることはなく、マザーやベンジャミンから教わった知識を基に風変りで革新的な研究者として王国内でも最高峰の魔法研究機関で働いている。変わり者の多い研究者の中でも特に色々と問題があるのは影響を受けた師匠達のせいだろう。




 ついでに言えば召喚勇者達はどれだけ強力なチート能力を与えられ生物を殺すことに対して忌避感が無いとしても、殺意を伴い向かってくる魔物相手に気圧される程度の烏合の衆でしかなく、長年の知識と経験を活かして戦闘以外で活躍した畜産農家の五十代男性(ちく)農人(のうと)さん以外は穀潰しにしかならなかった。

 あと使徒として優遇されているのをいいことに見目の良い異世界人の異性と深い仲になろうとする愚か者の姿も、特に色々と持て余した男達には多く見られた。だがいざ下心を発散しようとしても物理的に形が合わずに最後の最後で生殺しという実にざまぁ、もとい残念な結末を迎えていた。


 さらについでに言えば典触主人公は《ラピッドステップ》一行が去った翌日Aランクの魔物の襲撃により根城にしていた町ごとあっけない最期を迎えていた。奴隷少女をはじめ町の住民達も手遅れな状態にされていたので、ある意味まだ救いのある最期だったのかもしれない。

 典触主人公がどれほど無様な最期を迎えたのかは、主に興味のなさにより神様さえ知らないという。


 召喚勇者達が戦闘方面でまさかの役立たずでも、一人以外は他方面でも役立たずな穀潰しでも、どころか一人は一つの町を滅ぼし一つの地方をAランクの魔物が巣食う魔境に変えた厄災でも、この異世界全体としての平和には何の影響もありはしない。

 運命を司る神プロツトが描いた筋書き通り、魔王はユーシャ・ブレイバーの活躍によって見事に打ち倒された。典触主人公により魔境に変えられた地方も今は彼が守っている。




 アナは《ラピッドステップ》解散から数週間後に獣人女性だけで構成された珍しい冒険者パーティーからの誘いを受けて、一人だけ東方都市に残り冒険者として活動を続けていた。ただし生涯現役でいたということはなく、三〇歳目前という色々とギリギリなタイミングで恋人と結婚して無事に寿退職を果たした。

 ちなみに相手は義父の神父の影響で日本で言うところの男の娘と化していた、もう三年以上は交際を続けてきた魔導師の称号を持つ成人したばかりの研究職の美少年だとか。


 そして最後にフロウはベンジャミンとピーターの後を追うように彼らが勤める田舎の冒険者ギルドに拠点を移し、冒険者カードの登録名も偽名から本名のフロプシー・ウォーンに変えて、新たな生活を始めた。

 特定のパーティーには所属せず、マスコットのウサギを撫でまわしたり、ソロで植物や鉱物の採取依頼をこなしたり、ウサギを抱きしめたり、臨時で雇われ回復役をこなしたり、ウサギをモフり尽くしたり、まだ独身なので言い寄ってくる男共を適当にあしらったり、ウサギを揉みしだいたりして過ごしている。




 ちなみに、因幡の白兎神は八上比売(やかみひめ)に求婚しようと因幡へ向かう兄達の荷運びを押し付けられた大国主命に対して「八上比売は兄達ではなく貴方を選ぶでしょう」と告げて事実その通りになったという逸話から縁結びにもご利益があるとされている。

 どこぞの元Sランク冒険者なギルド職員とウサギ大好き治癒術師にもそういう縁があるのかは――神のみぞ知るところだろう。

   後書き ~執筆の裏話~


 良かった、何だかんだで完結できた……!

 というわけでここからは特に需要はなさそうな裏話なので読まなくても大丈夫です。




 唐突ですが、私は思うわけですよ。

 無能系被追放者主人公(実は囮やサポートで貢献していた、とかではなく本当に戦闘には不参加な雑用係の奴)が追放されて元パーティーメンバーを恨むのって、完全に逆恨みだよなぁ……と。


 だって考えてもみて下さい。確かに元パーティーメンバーに非がないとは言いませんが、冒険者にとって雑用とは比べ物にならないほど重要なはずの戦闘能力が皆無のくせに冒険者という肩書にすがりつくために冒険者としての実体を伴わない雑用係としてパーティーに居座っていた無能系主人公の方がよっぽど問題ありますよね?

 というか雑用のみで戦闘不参加とか作品によってはそれサポーターとか呼ばれる冒険者ではない別の職業の仕事内容ですからね?

 そして何より常識的なパーティーならその道のプロでも何でもない冒険者崩れな戦闘能力皆無の雑用係を仲間に入れるわけがないですから、無能系が入れるパーティーなんて前パーティーみたいに雑事の必要性を理解していないアレな奴らのパーティーくらいなものですからね?

 さすがに本気ではありませんが、極論を言えば雑用を押し付けられる無能系がパーティーにいたせいで元パーティーメンバーが雑事の必要性を学ぶ機会を失い冒険者として順当に成長できずに落ちぶれさせられた、なんて見方もできますからね?

 それなのによく逆恨みできたものだと思いますよ私は。むしろ常識的なパーティー相手なら門前払いされるしかない無能系に今まで冒険者という肩書を与えてきたことに感謝してもいいくらいでしょうに。

 まぁそんな屑な無能系だからこそ、作者の技量を含め下記のようなことになるんだと思いますが。


 はい、というわけでまたも唐突ですが、幕間劇で載せようかと思ったんですが文字数が少なすぎてボツになったシュジン・コウとヒ・ロインの後日談的エピソード、その一部をご覧下さい。


「も~っ、コウくんまた一人で買い出し行ったでしょ!」

「ごめん、つい昔の癖で」

「そういう雑用なんかも二人で協力してやろうって言ったでしょ! 仲間なんだから!」

「ごめんって。ほら、お詫びに休憩の短い時間でも美味しくできる料理のレシピ教えるから、機嫌なおしてよ」


 一作品くらいこういう展開あっても良くね!?


 だって考えてもみて下さい。今まで散々一人でやり続けてきた雑用をいきなりちゃんと分担してやろうとか普通は急にできないですよね?

 あとヒロインとの買い出しデート的な展開を書いている作品はまだいいんですが、作者の問題なのか、前パーティーでは雑用係として貢献してきたと自負していたはずなのに、都合よく戦闘能力を手に入れて以降は雑用関係の描写絶無な作品の多いこと多いこと。

 まぁ「俺は元パーティーメンバーと違って強いからって雑用を仲間に押し付けたりしない!」とか言われたら「お前はそれしかできない無能だっただけだろうが」と言いたくもなりますが、元雑用係なのに強くなった途端に雑用関係の描写がなくなる……なんか闇を感じますね。


 そしてある日ふと思ったわけです。無能系被追放主人公こそざまぁされるべき悪役ではなかろうかと。


 プロトタイプでは創造神サクシャーにチート能力を与えられた無能系をぶちのめすような、屑ニート戦や典触主人公戦みたいな感じだったんですけどねぇ……どうして第一章はああなったのやら?

 たぶんあれです、諸悪の根源たる作者も敵役としてざまぁしたかくなったんです。




 そんなこんなで書き始めた本作、何とか完結できて一安心です。

 本作が重陽に開始だったから次回作は端午に開始? できていなかったら鼻で笑ってやって下さい。

 それでは様式美としてこれで締めくくりましょう。

 ご愛読ありがとうございました。




 ウサミミはロップイヤー派、かずゐ

 / (⁎ÒᆺÓ)\<ベブッ

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