支援魔導師の魔道
ベンジャミンが自作した存在接続魔法「Linkage」ほど狂気の発想による魔法など今後人類から創り出されることはない。それが現存する魔導師やその候補者たる天才達全員の共通見解である。
この異世界において魔法で起きる事象とは、この異世界で起こる現象の延長線上にしかない。だからこそ多くの者が新たに魔法を創り出そうとする時は自然現象を基にする。サムエルが挑んでいるように複数の魔法を組み合わせた時の現象を基にする者はごく一部しかいない。
そして神様への祈りを基にする罰当たりな者など、この異世界においてはベンジャミン以外に存在しないだろう。
さらに言えば、存在接続魔法において今まで披露してきた四段階目までの状態は当初ベンジャミンが目指した最終目標への過程にすぎない。何故ならこの魔法は神様には決して勝てない人の身でなお神様に抗う手段を求め、人の子の信仰を通じて神様が力を得る現象を基に逆転させ、神様の領域から力を引きずり出せはしないかという考えから創り出されている。
祈りを捧げる際に現れる人の世と神様の領域を繋ぐ径路を模すことで魔力や体力という力を相互に融通できるようにし、現代では禁じられ秘匿された生贄を捧げる儀式から着想を得て存在そのものを捧げ合うに至り、そしていつしかベンジャミンは本当にその存在を神様の領域に繋げられるに至っていた。
神様の領域に繋がるというのは、いつぞや復讐の神ザ=マァとの戦いで見せたように生身で無理矢理乗り込むのとはわけが違う。仏教における極楽浄土へ行くようなものともまた違い、しいて言うならエネルギーの総量のようなものを基に存在の格を上げることで成り立つ。
ベンジャミンはピーターと存在を繋げることで人や魔物の限界を超え、その上でさらに【跳越者】によりもう一段階限界を超越することでこれを可能としている。
だがその上でベンジャミンは失敗した。
初めから無理を承知での挑戦だったとは言え、人も魔物も人の世の存在も超越した存在たる【跳越者】と言えど神様の領域の力を扱うことも留めることもできなかった現実に、ベンジャミンもそれなりに傷付きはした。
だが結果として、この無謀な挑戦によりベンジャミンは思いがけず最期の切り札を手に入れることになる。
俗に感じるかもしれないが、この異世界においては神様の中でも格差は存在するし、格差社会のような状況も存在する。簡単に言うと名も無き神は力を蓄えることで存在の格を上げ名を得ることができるが、名も無き神であるためほとんど信仰を得られないという負の連鎖のような状況にある。そのため名も無き神の多くは力を得る機会に飢えている。
それこそ千載一遇の好機を前に、格下の存在である人の子を相手に取引を持ちかけてしまう神様も存在してしまうくらいには。
その名も無き神がベンジャミンとピーター、一つで一羽のウサギの存在を神様の領域で見付けた時、一羽は今にもその存在が霧散し消滅しようとしていた。ステージⅣの能力で何とか神様の領域まで辿り着いたものの、命をかけてやっとの思いでようやく辿り着けた一羽では、当たり前のものとしてそこに存在するだけの神様の領域の力を前に扱う以前にただ圧倒され押し潰されかけていたのである。
そんな一羽を名も無き神が助けたのは善意ではない。取引のためである。名も無き神にとって一羽はあまりにも相性の良すぎる餌であった。もちろん消滅しようとしているところをそのまま吸収してしまっても多くの力を得られはしたが、名も無き神は気付いていた。今のままでは名を得るには少し足りないことに。彼らがあと数年も鍛えれば、名を得るのに充分な糧となることに。
だからこそ救い、生かし、一つの契約を結んだ上で帰した。
一人と一匹としてではなく一つで一羽として、いつか必ず自らを生贄として捧げるという契約を。
もちろん名が無いとは言え神様相手に不履行などできるわけがない。質が落ちてでも死ぬ直前に強制的に差し押さえられるだけである。
どうせ差し押さえられるのであれば気にする必要はないのかと問われれば、もちろんそんなことはない。特にベンジャミンのような者にしてみれば、最期の切り札を手に入れられるのだから。
確かに強制的に差し押さえることもできるが、そうなってしまうと名を得られるかどうか確実性に欠けてしまう。そうならないために名も無き神は、名を得た場合に余剰分の力をどう使うかを契約の内容に盛り込んでいる。厳密には少し違うが、大雑把に言えば自らを生贄として捧げた場合は神様の協力を得られるということである。
だからこそ最期の切り札。命を削るなんて生易しいものではなく、命を捧げた後で初めて一度だけ振るうことのできる力。死に瀕した際に死をもって抗うという破綻した手段。
誇らしい仲間達が悪足掻きで稼いだ数秒の間に呟いた一言。契約履行の宣言たるその一言をもって、ベンジャミンとピーターは光の奔流に飲み込まれる前に絶命していた。だから《ラピッドステップ》が最後の時を迎えてなお、事態は動き続けていた。
光の奔流の圧倒的なエネルギー量により焼き払われたベンジャミンの遺灰。
少年の力に干渉されることなく黒い塵と化したピーターの遺体。
それらが溶け合い白い粒子となり、一つの形を成していく。
その形はどこか、知る人ぞ知る神様の姿に似ていた。
※EMERGENCY!
未知ナル脅威ノ存在ガ確認サレマシタ。
チート能力【THE☆HERO】ヲ緊急起動シマス。
改竄ニヨル戦闘能力強化ヲ検討中……
戦闘能力強化デハ脅威ヲ排除デキナイ可能性有。
過去改竄ニヨル事象抹消ヲ推奨シマス。
過去改竄ヲ実行シマスカ?
>YES
NO
改竄後ノ時間軸ヨリ活動ヲ再開シマスカ?
>YES
NO
チート能力【THE☆HERO】ヲ終了シマス。
これ今月末までに完結しそうだなぁ……次どうしよう?
でも次回もちょっと遅くなりそうです。早めにできればいいんですが……




