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改竄された《ラピッドステップ》の死闘

挿絵(By みてみん)

 先に動いたのは、もちろん召喚勇者の少年。

「喰らえっ!!」

 叫びながら右手を突き出す。そんなシンプルなポーズとは裏腹に、繰り出される攻撃は複雑怪奇極まりない。


 魔法攻撃なのだろうが、その形状を言葉で説明するならたてがみの生えた蛇、すなわち東洋における龍の一種と言うべき形状。この異世界には空想上でも存在しないそれは、しかしこんなところにも干渉力の効果が出ているのかどこか見る者に神々しさを感じさせる。

 そんな龍を模した形状の魔法、しかもそれぞれ火、水、風、地という地球の四大元素説と同じ属性の魔力により形作られた四頭が、少年が叫び始めると同時に背後から飛び出していた。


 もちろん本来なら起こりえないことである。この異世界において魔法とは、その真名を唱えなければ発動しないものである。より正確には真名を唱えることで初めて体外に魔力を解放できる。そのため熟練の治癒術による自己回復という例外こそあるものの、それ以外にいわゆる無詠唱のようなことはできない。

 ついでに言えば、この異世界の生物は四大元素の属性を一つしか持たず、それ以外の属性の力を扱うことはできない。これは術師に限った話ではなく、例えばアナが使う巨大な魔鉈は風の刃を発生させるが、これはアナが風属性の持ち主だからできることである。もし魔鉈の効果が炎をまとうものであれば、アナにとってはただの巨大な鉈にしかならなかった。なので四大元素説の四属性を全て扱うことなど、この異世界の住人には不可能である。


 高速で飛来する四頭の龍。一方的にこの異世界の法則を無視することで対処不可能と化した攻撃により《ラピッドステップ》全員を無抵抗のままに蹂躙する――つもりだったのだろう。

 少年には自分の攻撃が異常である自覚などないだろうが、少なくとも先制攻撃をしかけたつもりではあっただろう。確かに先に動いたのは少年だったが、今さら少しばかり先に動いたところで先手を取れるわけがない。


 それは文字通りの形をした隠し玉。町に近付く前に予め発動させておいたサムエルの魔法。気付かれないよう拳大にまで小さくし、先ほどまでは外堀に忍ばせておいた引力球。もちろん中には爆炎がたっぷりと込められている。

 サムエルが魔導師の称号を手にするべく一つの魔法として組み上げようとしている未完成の攻撃魔法は、事前に異なる魔法を発動させ組み合わせておく必要がある。だからこそ事前準備さえしていれば瞬時に撃ち出せる。


 そんな隠し玉を一つしか用意していないわけがない。魔力制御の関係で六つしか用意できなかったうちの四つを惜しげもなく使い、飛来する四属性の龍を放たれた熱線で相殺する。

Explosion(エクスプロージョン)!」

 そして四発放ちながら唱えておいた魔法を三発同時発動させて反撃する。上級魔法の同時発動という超絶技巧なのだが、法則無視というイカサマ技が相手では分が悪い。熱線が相殺に終わった以上、残り二つしかない隠し玉を攻撃には使えない。


 だからこれは、あくまで牽制のための反撃。少年の連れを巻き込むように爆撃しているが、それも少年に守らせて動きを封じるための作戦である。決してリア充を爆発させようとか思っているわけではない。そもそも思うわけがない。

 それ以前に主人公側の行動としてどうなのかという意見は黙殺する。そもそも相手が法則無視という比喩ではない本物のチート使いなのだから、片方にだけ正々堂々と人道的な戦いを強いるのも妙な話ではあるまいか。


「くっ、卑劣な真似を! ハアッ!!」

 少年の雄叫びと共に魔法障壁が展開される。防御魔法自体はこの異世界にも存在するが、それは盾のようなものであって少年のようにドーム状に展開されるものではない。ついでに詠唱と展開にかかる時間により防御が間に合うことがほとんどないので使われもしない。にも関わらず『くっ、卑劣な真似を!』などと余計なことを口にしている余裕があるのだから、時空の歪みでも生じているのかもしれない。

 どちらがより卑劣なのかなど、語るまでもないだろう。


 展開した障壁は隣の連れを守るためのものらしく、少年の方は障壁の外にいながら当然のように無傷であり、服に焦げ目どころか煤も付いていない。もちろん原理は不明であり、法則は無視されている。

 そして少年は身体能力に物を言わせて力強く地面を蹴り、爆炎の中から一直線に飛び出した。完全に一致するわけではないが、この異世界の運動力学は地球のそれと共通する部分が多い。なので陸上どころか運動部でさえない少年が力任せに地面を蹴っても文字通り斜め上の方向に飛び出してしまうはずなのだが、もはや語るまでもなく法則を無視して地面とほぼ水平に飛び出せている。


 そして爆炎の向こうから飛び出していた馬上槍(ランス)と正面衝突した。


 この馬上槍は市販品ではなく、アナの固有能力に合わせて作られた物である。アナの固有能力【瞬撃】には投擲のように武器から完全に手を離してしまう場合は急激に失速してしまう欠点がある。しかし抜け道として極端に長くした柄を管槍のような管に通すことで遠距離刺突を可能とする。

 まさか馬鹿みたいに正面から突っ込んでくるとは思っていなかったので、牽制のつもりが直撃してしまいアナの方が驚いている。


 やはり少年は無傷であり服にも穴どころかほつれもできていない。そして正面衝突した馬上槍を弾き返してみせる。相変わらずの法則無視だが、それでも少年の速度は格段に落ちた上に今は地に足が着いていない。

 法則を無視できる少年にしてみれば一瞬にも満たない隙なのだろうが、神速で跳ぶ一つで一羽の最強にしてみれば充分に長い時間である。


Linkage(リンケージ)Stage(ステージ) (フォー)

 存在接続魔法「Linkage(リンケージ)」の四段階目は、単純な戦闘能力という意味では三段階目に劣る。何故そんな段階が存在するのかと言えば、固有能力のリソースさえ融通できる状態だからである。

 大雑把に説明するなら【看破】の神眼の効果を半減させることで【跳越者】の効果を四割増しにできる。半減なので五割増しにとはならないが、ただでさえ破格の性能を誇る固有能力の効果を強化するという前代未聞の行為は、少年のチート技にも見劣りしないえげつなさである。


 そこまで繋がりを強く太く深くしてしまうと、いくらベンジャミンとピーターのコンビとは言え存在そのものが拒絶反応を起こしてしまうため多用も長期戦もできない。普通は二段階目で吐き気をもよおすので充分とんでもない相性の良さなのだが。


 とにかく今、ベンジャミンは限界まで固有能力のリソースを融通している。この状態のピーターであれば、少年の干渉力にも対抗できる。

 空間跳躍により少年の背後に移動する。反応できてしまうのだろうが関係ない。反撃が間に合いさえしなければ構わない。そして間に合わせる気など欠片もない。元よりトレイルラビットは一秒しか戦えない種。一瞬の差を制することにかけては何よりも長けている。

 神速の一蹴り。それが少年の身体に傷をつけることはない。だが少年の無敵の身体という守りを跳び越えて【跳越者】の効果が届く!


 奇跡の神ゴツゴウシュギーより最強のチート能力を授けられた召喚勇者。そんな少年の身体の内側から魂やら生命力やら干渉力やらが散り散りに飛び跳ね、どこか幻想的な光景を作り上げている。

 時間にすればほんの一〇秒にも満たない間の出来事でしかないが、致死性の攻撃が飛び交った死闘は《ラピッドステップ》全員の生還と召喚勇者の少年の死亡という結果に終わっ




     ※WARNING!

   生命活動ノ停止ガ確認サレマシタ。

   チート能力【THE☆HERO】ヲ起動シマス。


   改竄ニヨル蘇生措置ヲ実行シマスカ?

    >YES

     NO

   現時間軸ヨリ活動ヲ再開シマスカ?

     YES

    >NO


   過去改竄ニヨル戦闘能力強化ヲ実行シマスカ?

    >YES

     NO


   改竄後ノ時間軸ヨリ活動ヲ再開シマスカ?

    >YES

     NO


   チート能力【THE☆HERO】ヲ終了シマス。

最強召喚勇者主人公様に負けはない。

敗北どころか苦戦さえ必要ない。

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