その3
翌朝・・・?
気が付くと、彼は一人真っ暗な空間でうつ伏せに倒れるように寝ていた所を目を覚ました。
(あれ、なんでこんな場所で寝てたんだ僕?)
進はお風呂に入った後に、すぐ自分の部屋のベットで寝た事をちゃんと覚えている
それが確かならこんな不自然な場所で寝ていた筈が無い
彼はちょっとアザラシだった姿勢から起き上がってみると、自分が脚が裸足だという事にも気がづく
しかし寝る時そうだったのですぐ不自然に感じなくなった。
注目を周りに戻そう
進は静かに前、左そして右の順に首と顔を動して辺りを見渡すが、本当に何も無いし真っ暗だ
おまけに自分で声も出せない
息がし辛いので少し指先で首元を触れて声を出そうとして初めて分かった。
進は前を向き直すと、突然その目の前が差し込むように白く光り出し少し思わず手で顔を覆った。
その光が小さくなると、進はその覆っていた手を下ろしながら前を見る
するとそこに居たのはウールのYシャツを着た女性と、その肩に手を置いてこっちを見るYシャツスーツ姿の男性だった
「っ!」
二人共優しい笑顔で表情でこちらを見ており、進にとってはもう二度と会えない筈の二人だった。
進も釣られて笑みを見せ返す
しかしその時、二人は髪の端から燃え始める
「えっ!?」
進の表情は状況に付いていけないような驚きに変わる
その驚きを他所に二人はその表情を変えず、そうまるで写真のような紙の如く燃えて燃え、何時しかその場から居なくなってしまった。
「・・・!」
進は酷く言葉を失って絶望してしまう
またその時辺りが燃える木の柱の瓦礫で囲まれていた風景に変わってしまったのだ。
まるでそこは火事の現場の真ん中そして真っ只中
彼、皆実進も気が付けば体が内田進だった頃に戻っており・・・全てを把握した彼の大きな叫び声はそれは周りに響いていっただろう
そしてこの一連の全ては彼の夢だった。
翌日の深夜 康介家進の部屋
「はっ!?」
彼少し月の光りを背に受けながら目を覚ましながら上半身を起こす
「・・・・?」
必死にどんな夢を見たのか思い出そうとしたが、不思議な事に何も思い出せなかった。
「なんだったんだ?」
しかし首と繋がった顔は自然に机の方を向くとその眼差しには机の奥の方に小さな写真立てがあり、そこにはさっき会った二人の間に立ってピースしている幼い頃の自分が写っている
「・・・・。」
この状況の全てを説明する為に話は十年程前に遡る
進がソルジャーになったあの日
康介に車で迎えに行ってもらった事があっただろう
しかし実家は酷く焼き焦げていていくら消防士が消火活動を行っても全然消えず
それを目視した進が車から降りて家の中に入ろうとするも、警察官の一人に捕まってしまいそれは叶わなわかった。
無力な彼は消火活動のなか家が全焼するのを目の前にするだけだった・・・
進はその後身寄りも身内も居ない事から、今暮らしている皆実家に泊まる形式で過ごす事になった
すると火事から数日後、警察官がその家にやって来て康介と結と進にこう告げた。
『進くんの両親の遺体が・・・・見つかりました。』
すぐさま三人はパトカーで警察署を訪れ、個室に案内されては進の両親と対面した。
二人は担架のようなテーブル乗せられながら白いシーツを掛けられ顔には布を被せられている
そんな最中進は目の色が灰色で少し抜け殻の状態ながら、我先そして静かにドアより少し手前まで部屋入った。
「お父さん・・・それにお母さん。」
家族だからか、シーツを被せされている筈なのに進は左で寝ているのが自分の父で、右に寝ているのが母だと理解した。
そう、先の写真に写っていたのと夢に出て来た人物は進の両親だ。
進はそれぞれに首を動かしながら何度もまた「お父さん、お母さん」と繰り返している
警官と共に、康介はどうしようもない結は相変わらずどうしたらいいかわからない表情でそれを見守っている
進が両親を呼ぶ声は段々と大きくなり、在ろうことか進はテーブルの脚を揺らして父の方を起こそうとする
「ねぇ、何とか言ってよ!」と
これはまずいと康介は進を抱いて止めようとしたがその時進はシーツを掴んでいた為父の無惨な姿が丸裸になってしまった。
「「っ!!」」
それは小学生の進から見ても足の裏を見た結から見ても酷い有り様
例えるなら燃えて膨れながら破けたウコンの皮のようだ。
進は恐怖心が堪えきれなくなると、声にならない悲鳴を発してものの数秒で喉が枯れて気絶してしまう
そのショックが脳を間接的に傷つけてしまったのか、精神年齢やらが小学生から成長しなくなってしまった。
そのまた数日後
進の両親の葬式は皆実家の和室で行われた
その仏壇の途中、ドア側の一番後ろで康介と進むに挟まれて座っていた結は、彼が居なくなった事に気が付いてこっそり部屋出ては、すぐに階段を上がって行った彼を見つける
「進くん?」
結がその跡をこっそり追ってみると当時物置部屋として使われていた進の部屋に入って行くのを目撃し、その中に入る。
その部屋の中はドアを開けなければとても暗く、物置部屋だけに段ボール箱が幾つもの山の如く幾つも積み重なっていた
その中で進が手前の少し斜め左の段ボール箱の山を背に、体育座りして蹲っているのを発見した結は、少し笑みを浮かべながら静かにその横に同じ姿勢で寄り添うように座った
「ん?」
「どうかしたの進くん?」
「どうかしたって、結ちゃんも解かっている筈だろ?今の僕の気持ち」
進は一度結を見てそう聞いた後また下を向いてしまう
結は優しい笑みを忘れずにしながらこう返した。
「親が居なくなって悲しいのは解かるよ、私が考えるにその表情に違う事に関しても落ち込んでいるように見えるよ?」
「えっ?」
「例えば、死んだ人に申し訳ない事があるとか?」
「・・・・鋭いね、結ちゃんは?」
「ふふっ、そりゃあ私も同じようなもんだから、それでパパにこうして慰められたり?」
そう言って結が天井を見上げると、進は「実は、」と口を開いた
なんでもそれは幼稚園を卒業する少し前の話し
蟻とキリギリスと言う話しを母から読み聞かされた進は「蟻はなんて酷いんだ!」怒りを燃やし、翌日その幼稚園のお庭で巣から出て来た蟻にコップ一杯に入れた水道水を巣に流し込んで全滅させたという
それがバレると母にまず頭を叩かれて酷く怒られてしまった
「キリギリスを見殺しにした蟻ももっと悪いけど、その蟻さんを殺した進はもっと悪いんだよ?」
「なんで?」
「良い?生き物の命って言うのはとても弱く切なく、時に簡単に消えちゃうものなの」
「うん」
「それを面白半分で消しちゃう人は心無い人間と思われてしまうのよ。」
「え?」
「つまりね、進がやった事は蟻さんより泥棒さんよりもいけない事なんだよ!」
その母の一喝で彼は気づかされ、そして味わった。
命を粗末にしてはいけないという事を自分がした取り返しのつかないという事を・・・
その目の前は自然に涙で溢れて行き、進はそれを少し擦りながら謝る
「ごめんなさい・・ごめんなさいお母さん。」
「解かってくれた?」
「うん!」
「それならいいけど、謝るべきは母さんじゃないよ。」
「?」
進は母の提案ですぐに蟻の巣が合ったところに砂を盛って墓を作って合掌し、その後家に帰ったとの事
「へぇ~そんな事が遭ったんだ。」
「うん、それでそのバチが当たって母さんが死んだと思ってより悲しくなっちゃって」
「わかるなぁその気持ち。」
「えっ?」
「私も前にシンデレラに憧れたりしてね、それで玄関ではいひーる履いたりして怒られた事があったりしてね」
「へぇ~じゃあ何でさ、今かぐや姫みたいな感じなの?」
「そう言うのもあったんだけど、なんかやっぱり動きにくくて」
「成る程」
「それにね、かぐや姫は最後月に昇っていくでしょう?それと同じように天国のママにもそれが届く事を願ってそうしたの。」
「結ちゃん・・・?」
すると結は突然さっきの進みたいに顔を腹の方に蹲った
「・・・お母さん。」
どうやら急に母を思い出したせいか悲しくなってしまった様子
それを少し悟った進は優しく肩に手を乗せる
それに反応した結は不思議そうな顔で少し汗を出しながら進の方を向いた。
「進くん?」
「結ちゃん、僕はね・・・」
「?」
その後二人の知らず知らずの内に葬式は終わって、康介の提案で両親のお墓は家があった土地に立てられる事となり、また結のお願いから進を正式に皆実家に引き取られる事となる
(元々進と結は同じ学校だからその点でも問題は無いとか?)
更に言えば進の脳の低下に関して、勉強面では支障は出ない事が様子見てわかったのでその心配は無くなった
そしてあの火事の後、彼は少し平均とは桁外れた身体能力と頭脳の開花を発揮し、それは中学生の頃から目立ち始めるようになる
しかしその頃から彼にとっては結とのすれ違いも目立ち始めて、増してや名字で呼んでと言われる始末になった。
そして現在、進は天野学校に入学する際とある事情で式に間に合わず、更に結は学校を休むようになってしまった為に天野学校から特例で家庭教師を雇ってそこで勉強を習うようになった。
「・・・・。」
彼はその事を今静かに思い出し、浮かべたと思うと、左の壁にそっとゆっくりと手の平をつける
それは今も尚結と寄りを戻したい仲直りしたいと願っているといった何よりの証拠、彼はそして電源が切れたロボットのように自然と倒れて眠りつくのだった。
今日の語録は無しです(予定)。
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