プロローグ(練習編)
ここは都内にふと建っている雑居マンション
その一階には二階との間に「ガジェットソルジャー・カーニバル」と記された看板が掲げてある店がある
その真ん中に刺さった円形の支柱を囲うようにショーケースがあるレジ席
そこに立っているのは店長の皆実 康介
今、スマホのような物をワイヤレス通信機で自分のノートパソコンに繋いで読み込んでいるらしい。
その様子を、青いジャンパーを着た少年がショーケースの下から覗いている
「ハ~イ登録完了。これで貴方も立派なソルジャーよ、おめでとう。お姉さん感動しちゃうわ!」
そう言って康介は少年にスマホと通信機の上部に刺さっていた持ち手が水色の鍵を渡した。
先にことわっておくが、康介は男である
「やった~!」
「それじゃあ、お姉さんと一緒に奥の方のエレベーターに乗ろうか?」
「うん!」
少年はズボンのポケットに鍵を入れた。
「お父さん達は、席で待っててください。」
康介はパソコンをシャットダウンしてから閉じ、その横に『休憩中』とプレートを追いた後横の小さな扉からレジを出た。
その後少年を店の奥にあるエレベーターに誘導しその中に入って地下へのボタンを押す。
『ドアが閉まります。』
地下一階 オフィシャルシュミレーションルーム
「さっ着いたわよ。」
少年は少し興奮した顔で我先にエレベーターからルームの中に入る
黒い壁が自分の周りを囲っており、特にその真ん中の円形の支柱が嫌でも目に入ってしまう
何故なら黒いだけじゃなく二つテレビモニター挟んでを縦に小さな溝があり、その中で黄緑色の線が
U字をなぞるように通っている。
それは男の子の感情をくすぐるという演出と言って過言じゃないのだ。
少年がまた一歩近づくと、モニターから人間に近い音声が聞こえる。
『ようこそ、お客様。』
恐らくAIコンピューター、疑似人格の機能が働いたのだろう
「あ、あの僕内田 進、ガジェットソルジャーをしに来たんです!」
『あぁ、進さんですね?その件ならノープロブレムです。』
「えっどういう事?」
『問題無い、という事です。』
「へぇ~。」
すると康介が進の後ろから近づいてAIに言う
「パラド、早くこの子の全体像を読みとってくれるかしら?」
『畏まりましたマスター、では進さまはそこから少し真ん中に移動をお願いします』
この時のモニターには人が移動して真ん中に立つ絵図が表示されている
「あっうん。」
進それを見て言われた通りに真ん中に立つ
『エクセレント、では次に両足と両手を大の字に広げて十秒くらい、動かないで下さい。』
また映像が変わり、大の字のポーズを取った人型の映像がループしてモニターに映る
「うん。」
『とその前に、一度ジャンパーを脱いだら宜しいかと、思います。』
「え?」
『このゲームは据え置きのVRとほぼ一緒、体を直接動かして敵と戦う、ゲームです。それに例え、
アバターで衣装チェンジしたにせよ、本来の衣服は着たままなので、元が動きにくくては、意味が、
ありません。』
「なら進君のジャンパーは私が預かるわ。」
『マスターがそう言うなら、ノープロブレムかと』
浩二はジャンパーを脱いだ後、康介の二の腕に掛けた。
そして真ん中に立ち、両腕は脇が見える程に、両足は肩幅より広く広げる。
するとモニターの上部から黄緑色のセンサーが発光し、進の体全体を上下に何度もスキャンした。
そしてぴったり十秒後
『OK、もう動いて、大丈夫ですよ。』
パラドから許可が下りた進は足の幅を戻す
それがつったのか少しよろめいて転んでしまった。
康介は心配して声をかける
「大丈夫?」
それに対し「大丈夫です」と起き上がった。
『それでは最後、先に渡された鍵を、ガジェットの下に差し込んで下さい。』
進はズボンのポケットから、さっき入れていた鍵を取り出す
(良かった、壊れて無かった。)
「これの事?」
『はい』
進はガジェットの下部、スマホだったら充電口な筈の場所にある鍵穴を見つける。
そこにさっきの鍵を差し込んだ
「えい!」
『グレイト、それを右回して5秒そのまま。』
「よいしょっと。」
『データ受信・・・データ受信・・・・・データ受信完了!』
「おっ!」
『Congrtulations』とモニターに黄色い文字が表示される
パラドは続けるように言う
『おめでとうございます、内田、進さま、貴方はこれで、立派なソルジャーです。』
「パラドさん・・・。」
『もう抜いても大丈夫ですよ?』
「あっいけね!」
進はパラドに言われ、慌てて鍵を真っすぐに戻して穴から抜き、またポケットにしまう。
康介はそれを笑うと、進に「笑わないで下さい!」と怒られた。
この時鍵にある変化が起こっていたのだが、進はまだ知らない。
『それでは、チュートリアルモードに移行』
「パラドちょっとだけストップ。」
『はい?』
康介はパラドを静止させると、進の方を見て言った。
「進くん、貴方にはコンピュータよりも同い年くらいの子に習った方が早いわ」
「?」
康介はふと後ろのエレベーターの方を振り向く。
「そろそろこっち来たらどう?、結。」
「っ!」
進も少し遅れてその方を向くと、そのエレベーターのドアの方から静かに覗いている少女が一人
何処か紫かかった黒髪を延ばして、黒い上着と長ズボン首に薄い紫色の毛糸マフラーを巻いている。
恐らく康介達がエレベーターを出て、そのエレベーターを一階に戻った時に使ったのだろう
「・・・・。」
「店長さん、あの子はだれ?」
進にそう聞かれて康介は答えた。
「紹介するわ進くん、彼女は私の一人娘の皆実 結。貴方より少し早くガジェソルをやっている先輩と言ったところかしら?」
「娘って?」
「おっとそうきたか!えっと娘って言うのはね~」
「うん。」
康介は胸に両手の平をトントンと柔らかく優しく叩きながらそう言った。
「私の、『家族』と言う意味よ。」
「へぇ〜」
母はいるのか聞くと、結の母は生まれてすぐに亡くなってしまったので、今は康介と二人で暮らして
いるという。
「あ、あの」
「?」
進が女の子の声に反応してエレベーターの方を向くと、さっきまでその中から覗いていた結が、いつの間にか自分の目の前まで来ていた。
「うぉビックリした!」
進がそう一歩下がると、結は顔を更に赤くして焦りながら両手の平をこちらに開いて振る
「あっそんなにビックリしないで下さい!えと、その、あっ!」
他に言葉が見つからないと感じた結は、一旦深呼吸をして興奮を抑える
そして静かに通に右手を差し延ばした。
「初めまして、私はゆいって言います。えっと、貴方はなんて言うのですか?」
「あぁ、進だよ。内田進・・・宜しく。」
そう言って通もその手を握ると、ふとパラドが呟いた。
『マスター、これが初々しいと言うものなのでしょうか?』
「そのセリフ、絶対二人の前では言わないで?」
『了解しました。』
「じゃあ、ガジェットソルジャーをどうすれば始められるのか説明するね。」
そう言いながら結は上着の右ポケットからガジェットを取り出して画面をこちらに見せる。
「うん。」
「まず、画面をやさしく押してタイトルがめんを開いたら、互いのガジェットの上部から見えない線を重ねるの。」
「ほうほう」
進は結がしたようにタイトル画面を開き、見えない線を重ねるようにガジェットの上部を一列にぴったり重ねた。
「あっそんなに近づけたら効果は薄いの」
「え?」
「もう少し、遠いめに・・・そうだ!せめて前ならえの腕くらいまで」
「分かった!」
進は少し下がった。
すると二人はガジェットの画面が変わり『他のソルジャーを発見、対戦を許可しますか?』と表示された。
「じゃ、じゃあ次にがめん右下の白い丸ボタンを、押して」
「うん。」
進と結は、液晶画面の右下の青色の枠に入った白い丸ボタンを押す。
『了解しました・・・では、戦う前の儀を行なって下さい。』
「戦う前の・・・儀?」
ここでパラドが口を開いた。
『今画面の中央に移っている、剣のつばとつばを重ねる映像が観えるでしょうか?』
「うん。」
『その剣と同じように、ガジェットを少し空に掲げて、それらが重なる、』
「ぱ、パラドックス、私が言うから静かにして!」
『申し訳、御座いません。ユイ様』
「大丈夫だよパラドさん、僕全然解かってないから。」
『はい?』
「だって結ちゃんに教えてもらっているから」
そう言って進は顔をパラドから結に移す
「でしょ?」
「!」
結はますます心臓の鼓動が収まり切らなくなったが、耐えた。
通がただ天然なだけとはいざ知らずに・・・。
「じゃ、じゃあ戦う前の儀式を行うから、私に続いてね。」
「うん。」
結は長くそして小さく深呼吸をする。
目つきを少し鋭くし、ガジェット横側に、そう剣を持つようにして構えた後少し斜め上に掲げた。
「さぁ、そちらの番ですよ?」
「お、おう(少しキャラ変わったか?)。」
進もそれに続くように見えない剣のつばを合わせる。
『キィ~ン』
そして二人の意識と体は、別世界へと飛ばされる事となる・・・・
ガジェットステージ1‐1 森林の道
「あれ?さっきまで僕たち、黒い部屋に居たはずだよね?」
「戦う前の儀式をしたから、ゲームの世界に飛ばされたのよ。」
『OK!ガジェット・オン』
「っ!」
『竹取姫をアバターインスト―ル・・・リンク成功!』
結の姿はいつの間にか上着の紫が目立つ十二束と、金ぴかな月の髪飾りが目立ったまるで平安時代の姫君の衣装になっていた。
そしてガジェットも手元から消えている
「さっ、戦いを始めましょう。」
「その前にちょっと良い?」
「何かしら?」
「君、いつの間に着替えたの?」
「・・・何を寝ぼけているのかしら?ガジェットオンを行えばこんな事簡単でしょう?」
「いやガジェットオンって何?」
「・・・えっ?」
ここで結は進がガジェソルに関して素人である事を改めて気が付き、口を右手で塞いだ。
結は右手人差し指で頭をかきながら謝る
「ごめんなさい、まさか貴方がそこまでとは思わなかったわ。」
「?」
そしてその手を下ろしながら続ける
「ガジェットオンって言うのは、そのガジェットの下側に鍵穴があるのが見えるかしら?」
「あっこれかな?」
「そう、それにさっき登録に使ったキーを差し込んでね」
「うん、わかった!」
そう言ってポケットからまたキーを取り出したが、その鍵の変化に初めて気が付いた。
「あっ持ち手があかいぞ!」
そう、実はさっき登録をしたときに水色から紅い色に染まってしまっていたのだ。
「何かの故障かな?」
結がどういう訳かを説明する
「安心して、それは壊れているわけじゃなくてガジェットキー本来の仕様なのよ。」
「ほう」
「パラドックスらがソルジャーを登録する際、キーの持ち手の色をその人に印象に合った色に変化する
の。」
「というと?」
「つまり『貴方には赤色が似合う』と勝手に判断したって訳・・・因みにパラドックスが居るのはここの店舗だけよ。他の店ではパラドじゃなくて大型プリンターを使うから登録ができるまで半日は掛かるそうよ」
「へぇ~そうなんだー」
「さっ、早くガジェットオンなさい。」
「どうするの?」
「さっき登録をしたときと変わらないわ、まず鍵穴にキーをやさしく差し込んで」
「うん」
『ガッチャンッ!』
『ガジェット・オン、REDY?』
「そして右に回す、この時が少し重要!」
「えっなに?」
「右に回す時、少しこう叫ぶの・・・『ガジェットオン!』」
『OK!ガジェット・オン!』
「こら!なんで自分で言わないで私に言わせるのよ!?」
「えっなんで?」
『桃の戦士、アバターインストール』
結の説教も虚しく散るようにして、進の姿は額に桃のマークがある鉢巻、着ていた衣装白い半被に、
その腰に東和刀を収めた姿に変身した。
靴も草鞋になったが、心地は変わらなかった。
「変身した後は簡単な話し、ただ体力ゲージが尽きるまで戦うまでよ!」
そう言って結は通を指しながら技を唱える
『月光の矢!』
すると結の後ろから白く光り矢を三本発射した。
「はっ!」
それを進は後ろにスキップして躱す。
相手が地面に着地した瞬間、結はその矢の弾幕を通に目掛けて一点に放つ
進は刀を抜いて弾き返した。
『月光の加護』
しかし易々と全て月の形をしたバリアで防御されてしまった。
「おぉ、眩しい。」
「自分の攻撃でヘマする人だと思った?」
「?」
「こう見えても私、レイドボスを一人で倒した事があるのよ?」
「ほう、レイドボスとな?」
「知ったかぶりしてんじゃないわよ。」
レイドボスとはあるステ―ジで決まった時間に出現するモンスターの事
ソルジャーはシングルやパーティモードで『クエスト』と呼ばれるイベントでそのモンスターらを討伐する事を目指し、成功すれば活躍に応じてレアな衣装や武器などの報酬がも貰える。
・・・という説明を開いた進
「へぇ~、成る程ね。」
「バトル中にヘルプ見てんじゃないわよ」
「えっ?」
一時の油断を付かれた!
進は結の蹴りを食らって遠くへ飛ばされる。
何とか着地したはいいが、今のダメ―ジで体力の半分まで減ってしまった。
「強い・・・・そしてなんてこったい。」
『月の矢!』
「はっ!」
次の弾幕が来る!
「何かないのか?」と進は考えたその時、握って東和刀の刃が紅い炎の様に光る
進は無意識の内それを両手で縦に振り、弾幕を全て跳ね返した。
結はぶっ飛ばし過ぎたせいか進が見えていない
ましてや弾幕が跳ね返される事を予想しなかったので、バリアが間に合わずに跳ね返ったなかで三本程食らってしまった。
体力も約三割程減ってしまう始末
「くっ・・・体力が!」
すると進が見える所まで少し近づいて来る
「おいかぐや姫さんよ」
「?」
「当たらない言うときながら・・・思いっきり当たってその様って何よ?」
「これしきの事でなめんてんじゃないわよ!」
「?」
「私は天国のお母さんの為に頑張らなくちゃいけないの、だからここで躓いてはいられないのよ!」
そう言って結は左手人差し指で天を差した。
そしてその指を矢に見立てるように立てたまま下ろし、反対の手でそれを引くような姿勢を取る
「・・・結ちゃん。」
「くらいなさい、『大月見魔法完全なる月光の弓矢』!」
結がそう唱えると左手の甲に光の弓矢ができ、右手でその弦を離すと矢が一直線に進むに飛んで行った。
「はっ!?」
同情したせいか、進は少し反応が遅れてその矢が左肩上を掠めてしまう。
「しまった!?」
掠めようがそのショックは大きなもので、進後ろに跳びそのまま仰向けに倒れ込んでしまった。
(はぁ・・・はぁ・・・体がなんか、苦しい。)
結は倒れ込みながら苦しむ通の足元まで近づき、その顔に左手人差し指を指す
「めでたい初陣がこの有り様で申し訳ないけど、私は容赦しないから」
するとその人差し指の少し上に小さな月光の矢が浮かぶ
終わりを覚悟した進
矢を放とうとした結
そう二人の勝負の決着がつこうとした、その時だった。
「がおおおおおおおおお!!」
突然結から見て左側の森林の方から、巨大な獣のが叫び声が響く。
「「!」」
すると二人の目の前にモニターが黄色い背景に乱入モンスターが来ると表示が出される
(乱入モンスター!こんな平凡なステージに何故!?)
結はパラドの名前を何度も呼ぶ。
しかし鳴き声をした方を向けばいつの間にかそのモンスター、巨大な熊から右フックパンチを受けて反対の樹木まで吹っ飛ばされ、背中から叩きつけられた。
(うそでしょ?体力が!・・・母さん。)
結、熊の攻撃が強かったのか、両目を静かに閉じて眠ってまった。
『ソルジャー『YUI』気絶、ゲームオーバーです』
「結ちゃん!」
進は熊の右足に踏まれそうになったが何とか左に転がって回避する。
そしてその勢いで跪いて起き上がり、襲いかかった熊を見上げその大きさに驚愕してしまった。
「何だ、コイツは?」
「グルルル・・・・」
今回はここまでです。
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