道化とドワーフ
さて、フィールドに出て戦闘したいのは山々だが、少々装備品が心もとない。なぜなら初期装備があまり使えなさそうだからだ。
まず、曲芸師の初期防具がこれだ。
名称「ピエロセット(全身)」
全ステータス+1 DEX+10
不壊
『これで君もピエロの仲間入り。』
・・・名前の通り、ピエロセットである。見た目がまんまピエロっぽい感じだ。そして性能もピエロである。全ステータス+1だ。まだ、3や5くらいなら救いがあったが、1である。そして、DEX+10だ。無駄に器用さが上がる。どういうことなんだ。使い道が全くわからない。不壊は初期装備故にだろうが、この装備が壊れなかろうがどうでもいい。つーか壊れてしまえ。添えられた説明文的なのも腹が立つ。誰が進んで仲間に入るか。馬鹿野郎。
次に初期武器である。
名称「ボール」×100
STR+1
使い捨て(回収可)
『ボールはピエロの必需品。武器であり、武器でない。』
名称「投げナイフ」×10
STR+5
使い捨て(回収可)
『ナイフもピエロの必需品。刺さると痛い。』
・・・ボールは攻撃+1で投げナイフは攻撃+5である。ボールに関しては論外だ。説明文からして、武器であることを否定している。投げナイフの方はまだ使えそうだ。しかし、個数が問題だ。10個しかない。回収可能とはいっても少ない。ボールは100個もあるくせに。いらねえよそんなに。
と、まあこんな感じなので戦闘には期待できない。
サブ職である錬金術師は生産職なので、戦闘に役立つ物は得られないため何か買う必要がある。
というわけで、武器屋までやってきた。ギルドに行く道にあったのは覚えていたのですぐ着いた。まあ、マップ見たんだけど。
武器屋に入るとそこにはドワーフがいた。いかにも「儂、ドワーフです」って感じを出しているドワーフだ。髭もじゃで、少し背丈が小さい奴だ。どうやら、今は武器の手入れをしていたらしい。
「いらっしゃい。」
こちらに見向きもせず、喋ったドワーフは外見の通り低い声だ。
まあ逆に、高い声だったら噴出してしまうが。
「こんにちは。」
「何を探してる。」
目の前のドワーフはいまだ武器の手入れをしており、こちらを見ようともしない。無愛想すぎるだろう!
「ええと、曲芸師の装備を買いにと思いまして・・・。」
「何ぃ?曲芸師?」
そこで、俺にやっと目を向ける。
「ああ、そうです。曲芸師です。」
「何でそんな奇妙な恰好して芸をするような奴に儂の装備を売ってやらなきゃいけねえんだ。」
うん、確かに。気持ちはわからんでもない。
俺だって変なピエロの恰好して武器屋に来るやつなんて門前払いするだろう。俺は今の所、装備がピエロセットしかないため、外すとインナーだけになってしまう。そうしたら武器屋に行く前に逮捕である。最初に服屋に行くべきだったか・・・。後悔する。まあ、曲芸師と言って売ってくれるかはわからないが。
と、まあそんな考えを持った俺の、ドワーフに対する受け答えはこれだった。
「ですよねー」
乾いた笑いと共に言う。
目の前のドワーフを見ると、俺の反応が意外だったのかちょっと驚いているようだ。
「お、おう。お前さん、なんか大変そうだな・・・。」
おお・・・!わかってくれるかこの職業に振り回されている思いを!
「よし、作ってやろうお前さんの装備を」
「本当ですか!?」
よし、案外いい人そうだ。なんか一定の理解をしてくれているみたいだし。
「ただし」
ん?不穏な言葉が出てきたぞ?
「外にいるラビットとスライムを5体ずつ倒してこい」
―特別クエスト―
【実力を見せろ】
ラビット、スライムを5体ずつ討伐せよ。
ラビット 0/5
スライム 0/5
全然理解してなかったわこのドワーフ!俺は外に出て戦うために装備がほしいというのに、外に出て倒してこいとは・・・。まあ、ラビットとスライムだから大丈夫かな?序盤の敵だしなんとかなるだろう。
・・・そうだ、何故最初だというのにそんな装備を気にしているんだ。まだ、始めたばかりなのだから弱い敵しかでないはずだ。流石にそんな強い敵は出てこない。よく考えればまだいらなかったな装備。
永保さん、それを世間一般ではフラグと呼ぶんだよ。