2 警告
持つものを全て持って俺たちは下に下りた。
そこにはカウンターで作業しているイタリカと暗い顔をして俺たちを待つフィールがいた。
「お!、おはよう二人とも。昨夜はよく眠れたかい?」
イタリカが俺たちに気づいて声をかけてくる。
「お陰様で、疲れましたからね。」
俺が少し皮肉を込めて言うと響とフィールは俺から目を逸らす。
「それなら良かったよ、そう言ってもらえるのが宿屋をやってて良かったって思える時なのさ。」
イタリカは豪快に笑った。
「代金は・・・これで。」
俺は金を取り出してカウンターへ置いた。
「・・・ねぇ、なんかこれものすごく多くないかい?」
そこには指定された代金の十倍の金が置かれていた。
「・・・今日中にそれを使って少し外れの村にいるハイネスって男のところに行け、せめてもの恩返しだ。」
俺は威圧するようにあえて強めの口調で言った。
「あの、それってどういう・・・」
フィールの問いに響はばつが悪そうに下を向く。俺はフィールの方を見て言った。
「今日、この国は潰れる。そこに行けばしばらくは安全だし、すぐに俺たちも向かう。俺の名前を言えばよくしてくれるはずだからな・・・これは警告だ。命が惜しければ俺の言うとおりにしておけ。」
「・・・。」
フィールとイタリカは俺を見つめたまま黙っている。さすがにいきなり過ぎただろうか。
だが、なんだかここで彼女達を見捨てれば自分が許せなくなるような気がした。
「無理にとは言わない、考えといてくれ。世話になったな。」
気が付くと口調は完全に戻ってしまっていた。まあ、もう取り繕う必要もないが。
俺は二人から背を向けて宿屋を出ようとした。
「カズハさん!」
フィールに呼ばれ俺は反射的に振り替える。
「・・・信じてますから。ぜったいにまた会いましょうね。」
フィールは目に涙を浮かべてそう言った。
俺はどんな顔をしていいのかわからない。だが、
「なら、待ってろ。」
そう言い残して俺は何かを背負うように宿屋を出た。
町に出た俺達はまず城の方へ向かい下見を始めた。
「・・・ここの壁なら破壊しやすいか?」
「裏側だし、下手に階段とか壊しちゃったら不味いんじゃない?」
「それもそうか。」
そんな風に響と話ながら侵入経路とその後の動きについて話していた。
「正門からじゃ駄目なの?」
「駄目ってわけじゃないが数が多くて分が悪くなるのもな・・・それにそれだと町もパニックになりやすいしな。王が落ちればすぐにこの国はパニックになるだろうが。」
「うーん、私は何か出来ないかな。」
「援護だけしてくれればそれでいい。危ない目には合わせたくないからな。」
「・・・そっか。」
響は少し残念そうに呟いた。
ここで何かあったら俺は響の母親に顔向けできない。約束もあるしな。
そうやって城の周りをぶらぶらと歩いていると後ろからなにかが近づいてくる気配がして俺はとっさに響を抱えて振り替える。
「誰だ。」
フードを被った男はこちらをじっと見つめている。
俺は響を抱えている手に少し力をいれた。その手のなかで響は声にならないような悲鳴を上げる。
「・・・俺とおんなじ臭いがするのさ。」
俺は男を睨む。するとフードをとってニヤリと笑った。
「血の臭い、戦場の臭いだ。多くの修羅場をこえて、戦い抜いてきた兵士の臭い。」
男はローブを脱いで武器を持ってないことを証明するように手を上げる。
その手は機械だった。
「俺の名はブゲル、戦闘狂のただの技師さ。」
ブゲルと名乗った男はただただ俺たちを見て笑っていた。
どもども、結構上手くいってます。
さてと、章も出来たのでしばらくこの書き方で落ち着きそうですね。
次もぜひ読んでください!