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少年兵と蒼空  作者: 酒月沢 杏
第一章 蒼い空と世界の剣
2/25

蒼い剣と茜色の歌

いつかまた会えることを信じて時空を超えたカズハ・ブルーローズ、光の中を抜けて目覚めた先に待ち受ける運命とは。



 

 真っ白な空間そこにはただ虚しさと虚無が広がる。

 俺は命からがら空間を渡り、気がつけばこんな白い空間にいるなんて笑えないレベルの絶望感しかなかった。

 サラルの目とシャドウ、これから何が起こるかどうかもわからずまずはガリアが残してくれたブラックボックスで人のいる集落を探そうとおもっていたのだが・・・

 「なんもないな」

 そこから見えるのはただただ続く白一色のみだった。

 「とりあえず歩くか」

 直感だけを頼りに明後日の方向へ歩く。

 歩いている感覚はあるが景色が一切変わらないから歩いているような気がしないという奇妙な感覚が俺の精神を蝕んでいく。

 短いはずなのに遠い、旅立った数分後にすでに俺のストレスはマッハだった。

 

 ふらふらと歩いていると一瞬風を感じる。

 その方向を向くがなにもない、しかし宛がない今はそれすら地獄にたれる蜘蛛の糸のようだった。

 その方向に向けて走り出す。

 しばらく走っていた。何かあるわけではないが何かがあるという確信はあった。

 瞬間、世界は形を大きく変えた。

 目の前に広がるのは清々しく晴れた青い空と元の世界では見たこともない青々とした草原、そして赤い屋根に煙突のついたこじんまりとした一軒家だった。

 「あれがモクセイの家。不思議な形だ。」

 俺の世界に植物は育たない。草原なんて見たこともないし、すぐに壊れ、燃えてしまう木でできた家なんて本の中でしか見たことがなかった。

 これを見て改めて異世界に来たことを痛感させられる。湧き上げるのは未知への期待と恐怖、しかし前に進まなければいけない。

 生唾をのみ家に向かって歩く。

 すると家からは女の歌声が聞こえてきた。

 「誰か住んでるのか・・・?」

 友好的な人間なら良いが敵対されたらどうしようかと思いとりあえずいつでも剣を取り出せるようにブラックボックスを左手に握る。

 気がつけば扉の前に立っていた。こんな扉では盗賊が来たときなどは大丈夫なのかと少し心配になる。

 覚悟を決めて戸を叩く。

 「はぁい、ちょっと待ってくださいね~。」

 中からは若い女性の声がした。敵意のある声には聞こえない、俺はそっと胸を撫で下ろす。

 戸が開かれると中から声の主と思われる女の人が出てきた。

 「お客さん何て初めてだわ!、さあさあ上がってぇ、今お茶を出すわ。」

 「え、あっはい。」

 彼女のテンションに押される。

 言われるがまま椅子に座り出された紅茶を飲む。

 部屋を見渡すと不思議な物ばかりが置いてある。そのなかでも人の頭ほどある水晶玉がひときわ存在感を放っていた。

 「あっ、自己紹介がまだだったわ、私は赤城春野、よろしくね。」

 突然の自己紹介に少し困惑するがとりあえず敵意が無いのを示すためにも名乗っておこう。

 「俺はカズハ・ブルーローズと言います。ここは、いったいどこなんですか?」

 「そんなにかしこまらなくても良いのよ?。ここは言ってしまえば時空の狭間、無にして無ではない場所・・・らしいわ。」

 春野さんの曖昧な説明に俺は首を傾げる。

 「私も上手く説明できないのよ、数年前に前任者の人から引き継ぎをされてろくな説明もされずに消えちゃったから。」

 「前任者・・・、交代制なのか?。ということはこれは職か何かなのですか?」

 俺の質問に春野さんは困ったような顔をする。

 「そうと言えばそうかしら、ここの空間は誰かの魂を柱にして成り立つの。それでそれが消える前に新しい魂を補充してここを保たせる・・・、みたいな感じらしいの。だから仕事って仕事はしてないけどここにいるのが仕事って感じかしらね」

 なるほど、まあ大体はわかったが下手すれば俺はここで柱としてここに縛り付けられる可能性が出てきたわけだ。

 「ということは、俺が貴方と交代ってことですか・・・?」

 声が震える、死が確実に近付く恐怖を肌に感じる。

 そんな言葉に春野さんは優しい笑みで答える。

 「大丈夫よ、貴方は多分迷い混んだだけ。柱の時間は100から死んだときの年齢をひくと出るんだけど、私はまだ50年以上あるわ。」

 一気に体から力が抜け息を吐く。

 「そういえばこの水晶玉が気になっていたようだけど、知りたい?」

 急な不意打ちに思考停止する、しかしここから出る方法すらわからない今これが数少ない証拠なのは嫌でもわかった。

 「教えて下さい、ここから出る方法を。」

 すると春野さんは微笑む。

 「少し気が早いわ。まずは貴方のためにサラルの目とシャドウについて話さなくちゃね。」

 「?!」

 以外なワードに俺は心臓が止まりそうになる。

 「どうしてそれを?、もしかして俺のこと、知ってるんですか?」

 「さあ、どうかしらね。そこに関しては黙秘権を行使するわ。」

 春野さんは怪しく微笑む。少しだけ恐怖を感じてしまう。この人は俺の知らない《何か》を持っている。

 それでも深淵を覗くような恐怖に押し潰されこれ以上は聞けなかった。

 「サラルの目はある程度知っていると思うわ。時空の狭間、これは色々な世界に作られた《壁》に空いた穴、これは人々の負の感情から生まれる刃によって世界を仕切る壁を傷付けてしまうことで出来るの。そしてこの負の傷から生まれるのがシャドウよ、シャドウにも二種類あるの、1つは純粋に傷と負の感情から生まれるシャドウ、これはそれぞれ司る負の感情があって個体で強さは違うけどどれも目的は1つ、それは世界の完全統合よ。」

 「世界の完全統合?」

 一とうり話終えたのを確認して引っ掛かったところでかいつまむ。

 「そう、それぞれの世界で仲間を増やしたり自分の力を強くするために人に負の感情を持たせるの、それで実体化して今度は虐殺を始めるの。そのときに生まれる絶望などの大きな負の感情が壁を切り裂いて他の世界との統合を果す。そうやってまるで巣を増やすように世界を蝕むの。」

 「それが俺と何の関係が?」

 春野さんは真っ直ぐと真剣な目をして俺を見る。

 「貴方は世界に選ばれたの、このサラルの目を塞ぎ歩きながらシャドウを全滅させるための《ワールドセイバー》にね。」

 ワールドセイバー、世界の剣とはまた皮肉だ。家族のために振るっていた剣が今度は世界のために振るえだなんて。

 「とりあえず二つ目のシャドウの説明をするわ、こっちは人の強い思いと魂、信仰や神話、伝承や民謡などから生まれるシャドウ、こちらは信仰や思いが強ければ強いほどシャドウの力も強大になるわ、むしろこっちの方が厄介ね。世界を破壊したりはしないのだけど、思いによっては大きな災害を起こしたりするの、蛮神とかマテリアルシャドウとか呼ばれているわ。前者は負の感情で名をつけられるけどこっちは神話での神の名前や思いにそった名前がつけられるの、その世界に行ったらそこの伝承や神話、人の歴などを知っておくと弱点などが知れるわ。」

 ふぅっと春野さんはある程度説明しおえたのか息をつく。

 「サラルの目とシャドウについてはこんな感じだけど質問とかあるかしら。」

 「サラルの目ってどうやって閉じるんですか?」

 「あっ、忘れてた。」

 忘れてたんですか・・・

 「サラルの目は誰かがサラルの目を使うと壁がその傷の存在に気づいて自動的に修復されるの、だから貴方は一週回って貴方の世界に戻る頃にはすべてのサラルの目が塞がるってことよ。」

 「い、一週?!、俺は一刻も早くもとの世界に帰りたいんです!」

 「落ち着いて、世界の数は全部で15個よ、貴方の世界も入れて。回るのに一年もいらないわ。」

 その言葉に俺はそっと胸を撫で下ろす。

 「15個の世界には一人ずつ導き手という人達がいるわ。この世界での導き手は私になるのだけど、世界によっては自分が導き手だと自覚していない人もいるからそこは頑張って探して?」

 投げやりだなぁ、とか言ったら駄目なのか?

 「まあ、これで私から説明できることはすべてよ、他にも気になることがあるかもしれないけど多分追々わかってくるわ。」

 「は、はぁ・・・」

 説明を終えると春野さんはまるで別人のように優しい笑みになる

 「お茶、入れ直すね。」

 「あ、ありがとうございます。」

 何か凄いこの人のペースに乗せられている気がする。

 お茶を入れ直して戻ってくると今度はしょぼんとした顔で話始める。

 この人、表情豊かだなぁ・・・

 「えっとぉ、これは個人的な相談なんだけど聞いてくれる?」

 「あっ、はい。一応、教えてもらった恩もありますし。」

 「ありがとう、ちょっと待ってて?」

 春野さんは席を立つと重そうに水晶玉を持ってきた。

 「これはね、ここからでも元々私が住んでた世界を見ることが出来る水晶なの。」

 春野さんは目を瞑って手をかざす。

 「水晶をしっかりと見て意識を集中させて?」

 「は、はい。」

 言われるがままに水晶に意識を集中させる。

 すると意識が吸い込まれるような感覚がする。

 瞬きをした瞬間、そこに広がるのは見たことのないような町の風景だった。

 「ここが生前に私が住んでいた街、貴方に頼みたいのは私の娘のことなの。」

 春野さんは少し悲しそうな顔で呟くようにいった。

 「私、生前に少し特別な力を持っていてね?、それがあの子にも遺伝してしまって。それが悪用されそうなの。」

 「その、能力とは?」

 「この街には昔から伝わる伝承があるの。」

 「その昔、地に眠る龍が目覚め地震を起こして人々を苦しめていた。それを沈めるためにある一人の巫女が歌でその怒りを沈めて眠らせた。」

 「人は彼女の一族を《歌謡の巫女》と呼んで崇めた。その子孫というのが私なの。歌に込めたことが現実になる。その歌に対する思いが強ければ強いほどにね。」

 彼女の凛とした声に俺は何も言えなかった。それはまるで戒めのように、それが罪滅ぼしだと言わんばかりの雰囲気を感じた。

 「少し見てほしいものがあるの、ついてきて。」

 手を引かれて向かった先は少し大きめのコンクリートで作られた建物だった。

 「確か、古い書物で読んだことがあります。学校?、でしたっけ。」

 「そう、あれは私の娘、赤城響あかぎひびきが通ってる学校。あの建物の三階のところに響がいるわ。」

 窓を覗くと同じ服を着た同い年ぐらいの男女が何人もいる。

 「あの窓側の一番後ろに座ってるのが響よ。」

 腰まである黒く長い髪の少女、当たり前だが他の男女と同じ服を着ていた。

 そこに三人の女が近づいてくる。

 それと同時に春野さんの目付きが鋭くなる。

 それは確実な敵意そのものだった。

 『おはよう、響さん』

 リーダーと思われる一番前の女が響に話しかける。

 そこには馬鹿にするような嘲笑うように見ているものがほとんどだった。

 『ねぇ、私、今日は彼氏とデートの約束があるのよ。今日の掃除当番、変わってくれないかしら?』

 多分あれは集団リンチとか言うやつなのだろうか。よくわからない単語がいくつかあるが少なくとも響が侮辱されているのだけはよくわかった。

 隣にいる春野さんは怒りを露にして女を睨んでいる。

 『うん、変わる・・・』

 響はうつむいて答える。けして変わりたくて変わったなんてわけじゃないだろう。

 『あっ、じゃあ私も変わってもらおっかなー。』

 『私もぉ、お願い響さん』

 後ろの女が続けて畳み掛けるように言う。

 あれは確実に狙い、悪意を持って放ったのだろう。

 見ているだけで腹が立ってくる光景だ。胸糞悪くて仕方ない。

 これが身内だったらと思うとこの辛さは計り知れないだろう。

 それを今、春野さんはみせられているのだ。

 結局、響は小さく頷いて全て引き受けていた。

 春野さんはどんな気持ちでこの光景を見ているのだろう。

 俺をここまで案内したということはこの光景を春野さんは何度も目にしていることになる。

 俺はこの光景をただ黙って見ていた。

 「・・・もう、いいかしら」

 春野さんは苦しい表情をして問う

 「ええ、ありがとうございます。」

 ふと瞬きををした時には先程まで居た街の風景はなく、落ち着いた木の家の内装が広がっていた。

 「私はね、さっき響をいじめていた女の子の父親に殺されたの。」

 「っ?!」

 辛い、なんてもんじゃない。

 春野さんはトラウマその物を無理して見せていてくれたのだ。よく見ると少し息も上がっていた。

 「その父親って言うのはね高校時代に私に恋をしていたらしいの」

 苦しそうに語り出す春野さんを俺は止めることは出来なかった。

 「でも、私は夫の裕策と両思いでそのまま大学まで一緒にいって結婚したの。でも、彼は諦めなかった。」

 春野さんはギュッと拳を強く握る

 「私が響を身ごもってすぐの頃、彼は自分の手下を使って裕策を車でひき殺したの。それから毎日のように電話やメールをしてくるようになって響が生まれた頃には家に押し掛けてくるようになったわ。家の扉を叩いて怒鳴り声をあげたりもしてた。」

 春野さんは苦しそうに顔を歪める

 「私はその後しばらくして引っ越した。出来るだけバレないように少し遠い隣街のマンションに、そこで二年間暮らしたのだけどやはりバレてしまった。彼が家に押し入って来たの。その時響は保育園に預けていたから助かったのだけど、私は彼に俺のものになれと言われたけどそれを拒否して結局椅子で殴り殺されてしまった。」

 殺された場面を思い出してしまったからか苦しそうに歪んだ表情は恐怖の表情に変わる。

 明らかに無理しているのは目に見えてわかったがどうしても俺は春野さんを止められなかった。

 「私はその前に親戚に頼んで私に何かあったら響をかくまってほしいと遺書を使ってなんとか彼から響を遠ざけたの。でも、中学で彼の娘と響が親友になったのをきっかけに彼は響の存在を知ってあの子をいじめるように娘に言った。それで響はあんな風になってしまった。」

 一通り話終えて春野さんは机に倒れる。

 「大丈夫ですか!?」

 「大丈夫、少し疲れただけだから。」

 「無理しないでください。」

 俺は彼女に手を添えて起き上がるのを手伝った。

 「・・・それで、お願いというのはここからなのだけど。今、裕策をシャドウが利用して響に能力の解放をさせようとしているの。」

 「能力の解放?、それってあの歌謡の巫女の?」

 「ええ、その歌謡の巫女の力に負の感情を乗せて《ノロイノウタ》という呪術を作ろうとしているの」

 「ノロイノウタ?」

 「いにしえの巫女から伝わる処刑の歌なの。その歌の呪いの力を使って相手を呪殺するという禁忌の歌の一つ。そもそもは罪人を他の人間の手を汚さずに処刑するための力だったのだけどあまりにも強力で三代目で禁忌とされて封印という形で禁じられたの。」

 「にしてもそれとシャドウにどのような関係が?」

 シャドウも仲間を増やすためには負の感情を集めなきゃいけないが殺してしまっては意味がないだろう

 「シャドウは死への恐怖をあつめようとしているわ。今回のシャドウは膨れ上がった恐怖の感情、《フィア・シャドウ》。恐怖を感じさせるには死が一番都合がいいってわけ。」

 「それって死ぬ直前の感情を集めると言うことですか?」

 春野さんはコクリと頷いた。

 「では俺にどうしろと?」

 春野さんは目を閉じて軽く深呼吸をしてから真っ直ぐと俺を見据える。

 「貴方にはシャドウが響をサラルの目のある狭間に引き込む隙を狙って一緒に入り込んで響を救ってほしいの。」

 「なるほど、でも救うと言っても具体的にはどうしますか?」

 「基本的にはフィア・シャドウを消滅させてほしいのそうすればあの子はもうシャドウから狙われることもない。でも、響が彼の娘を殺したということになればこの世界で生きるのは難しくなるわ。」

 「だからあの子に選択肢をあげてほしい、貴方について行くか、それともこの世界に残るかを」

 「それってどちらも良い道とは言えないんじゃないですか?、この世界に残ればその男に狙われるし、俺に着いてくるのは死と隣り合わせの過酷な旅になるだろうしこの世界には二度と戻ってこれないのでは?」

 俺の問いに春野さんはまたしても苦しい表情になる。

 「それでも、あの子に楽な道はもうないの。だから最後はあの子に選んでほしい。」

 そこには導き手でも、時空の狭間の管理人でもない、ただ一人の親の姿があった。

 「わかりました。そのお願い、引き受けましょう。そしてもし響が俺に着いてくるなら、戦神に誓って必ず守ります。」

 「ありがとう、カズハくん。」

 春野さんは安堵したのか優しく微笑む

 「あれを見てからでは心苦しいかもしれないけれど響は多分学校で力を使うと思うから学校近くに出来るだけいるようにしてね。」

 「わかりました。」

 確かにあの光景を何度も見るとなると胃に穴が飽きそうなほど胸糞悪そうだが、仕方ないだろう。

 「じゃあそろそろお別れね、久しぶりに人と話せて楽しかったわ。」

 「俺も色々と教えていただきありがとうございました。」

 「でも、もう二度と会えないと思うとやっぱり寂しいわね。」

 春野さんは少し寂しそうに言う

 「名残惜しいのは俺も同じですが使命なので。だからせめて、響を助けるところまでは見守っていてくださいね。」

 「ええ、わかったわ。響のこと、よろしくね。」

 「はい。」

 そういった後に俺の体は光に包まれる。

 「貴方に歌の加護がありますように。」

 光の中から見えた春野さんの涙を俺は絶対に忘れないと誓った。

 

 

 目が覚めるとそこには上空から見た灰色の街が広がっていた。

 「無事に来れたのか?」

 あたりを見回すと細い通路が何個かありまるで迷路のようだった。

 「とりあえず学校を目指すか。」

 よく見ると西の方に春野さんと見た学校があった。でも

 「たどり着けるのか、これ・・・?」

 突っ立っていても始まらないのでとりあえず西に向かって歩くことにした。

 

 歩き出してから多分三十分ぐらいたった。

 「つ、ついた・・・!」

 迷路のような通路などには苦戦したが大きな道に出てしまえばこちらのもので以外とすんなり行くことが出来た。

 「しばらくここで待機か。・・・腹へったな。」

 実質俺のもといた世界から何も食べていない。

 口に入れたとしたら春野さんがいれた紅茶ぐらいだった。

 「お茶菓子、食っときゃ良かったか?」

 でもあんな状態で食えるわけがない。

 俺、餓死すんじゃねぇの?とか思うくらいには腹が減っていた。

 学校の窓を見ると同い年ぐらいの男女が必死に机に向かっている。

 ぽけーと学校の窓を眺めていると後ろから声をかけられる

 「あんちゃん、こんなところでなにしてんだい?」

 「っ?!」

 驚いて後ろを向くとそこには俺より少し上くらいの男が立っていた。

 「こんなところで学校何か覗いてると不審者扱いされるぞ?」

 「す、すみません。貴方は?」

 その男はニカッと笑って

 「俺は山田良治やまだりょうじってんだ。そこでラーメン屋をやってんだよ。あっ、あとタメ口で良いからな。」

 「わかりま・・・、わかった。でさ良治、俺今腹が減っていてどこか飯食えるとこ知らないか?」

 すると良治は驚いたような顔をする

 「あんちゃんもしかしてラーメン知らねぇのか?」

 「ラーメン?、それは食べ物なのか?」

 「マジかよあんちゃん、ラーメン知らないなんてあんた何もんだ?!。良いぜ俺が食わしてやるよ、本物のラーメンってやつを!!」

 「おお!!、何かよくわからんがありがとう。」

 そのまま俺は引きずられるように店のなかに連れてかれた。

 

 「じゃあ席に座って待ってな!」

 俺は半分わけもわからず席に座らされこの状態である。

 ラーメンということは麺類の食べ物なのだろうか。

 麺という食べ物があると言うのは本で読んだことがあった。

 戦争の時は小麦が貴重だったから小麦を使って作る麺は写真などでしか見たことがなかった。

 そんなことを考えていると厨房から嗅いだことのない香ばしい良い香りがした。

 「お待ち!、しょうゆラーメンな!」

 目の前に出されたのは本当に麺だった。実物を見たのは初めてだ。

 俺は麺を箸でつかみ口に運ぶ。

 「っ?!、なんだこれめちゃくちゃうまい!」

 「だろ?!、やっぱりラーメン知らずに生きるとか人生の半分は損してるぜ!」

 まあ、そこまてでではないがこれは相当うまい。

 この味付けがしょうゆというやつなのだろう。魚の風味がするのも麺の味を引き立てて今まで食べたことのない衝撃的な味だった。

 気がつけば完食。目の前のどんぶりは空になっていた。

 「ごちそうさま。うまかった。」

 「そいつは良かった。あんちゃん相当腹減ってたんだな、良い食べっぷりだったぜ!」

 よくわからんが誉められたらしい。俺はとりあえず「ありがとう」と言っておいた。

 「なあ、お礼ついでに聞いていいか?」

 「ん?、どうしたあんちゃん。答えれる範囲なら何でも答えるぜ?」

 「赤城裕策って知ってるか?」

 「?!」

 良治の顔が明らかに変わる

 「あんちゃん、まさか前田んとこのもんか?」

 それは明らかな敵意、強い憎しみがこもっていた。

 「大丈夫だ、敵ではない。その赤城裕策を殺したやつのことを知りたいんだ。」

 「あんちゃん、どこまで知ってる?」

 「あえて言うなら赤城響の現在までの生い立ち全部、かな。でもその前田ってやつのことは一切知らない。」

 良治の敵意が少し和らぐ

 「あんちゃんはどこまでも不思議な奴だな、だからさっきあんなとこで学校を覗いてたのか。」

 良治は敵意がなくなったからか俺を真っ直ぐと見つめ話し出す

 「前田は俺と裕策と春野の同級生でな、裕策と前田は親友だったんだ。」

 「でも、前田は春野に恋をしてから変わっちまった。春野と裕策が結ばれてからも奴は諦めずに春野を手にいれようとした。」

 「その結果があれだ。裕策を殺しその家族を恐怖におとしめ、さらには春野まで殺した。それに娘の響ちゃんの人生すら狂わせたんだ。」

 そこには強い怒りと憎しみの表情があった。

 「なあ、部外者のあんちゃんに頼むのもおかしいかも知れねぇ、でも頼む。せめて響ちゃんだけでも救ってやってくれ・・・、頼む。」

 良治は俺に深々と頭を下げた

 「わかった。もともとそのつもりだし、ラーメンを食わせてくれた恩もあるからな。」

 「もともとって・・・、本当にあんちゃん何もんだ?」

 「俺は春野さんに頼まれてな、まあ、これ以上は言えないが赤城響の安全だけは保証してやる。」

 「な?!、あんちゃん春野を知ってるのか?!」

 「まあ一応、知ってるというか知り合いというか・・・まあ、そんなとこかな。」

 俺は席を立つと少し足早に扉へ向かう

 「心配するな、赤城響は必ず救ってみせる。約束やこの恩も果たさなきゃだしな。」

 「あ、あんちゃん!」

 「?」

 扉に手をかけた俺を良治は引き留める

 「響ちゃんをよろしく頼む。あと最後に名前だけ聞かせてくれ」

 「ああ、言ってなかったか。俺はカズハ・ブルーローズ。じゃあな、ラーメン、うまかったぜ。」

 そのまま俺は店を出て学校周辺へと戻った。

 

 夜、あの世界から出て初めての夜だ。

 俺は今この世界で使える金を持っていないから宿を借りることもできず結果赤城響のあとをつけその近くの公園と呼ばれる場所で一晩過ごすことにした。

 「まあ、戦場で寝るときよりは何倍もましだろ。殺される心配もないし」

 俺は街灯の近くにある長椅子に腰を下ろす。

 しばらく目を閉じていると歌のようなものが聞こえてきた。

 「これは・・・!」

 この歌、どこかで聞いたことあると思ったら俺が家を見つけた時に聞こえてきた歌だった。

 すると不思議なことに自分の心が不思議と穏やかになった。

 「これが歌謡の巫女の力か、ということは響はこうやってあのいじめの怒りを沈めていたのか。」

 とはいっても半場無理矢理だ。いつ爆発するかもわからない。

 「君、もしかして家出か?」

 後ろから突然話しかけられあわてて振り向く。

 なぜかこの世界に来てから後ろから突然話しかけられることが多くなった気がする。

 振り向くとそこには薄汚れたコートを着たおじさんがいた。

 「それとも噂を聞き付けてきたのかい?」

 「噂、ですか?」

 そのおじさんは響のいる部屋を見上げながら

 「あそこに住んでる女の子の歌声を聞くととても心が落ち着くって近所で噂になってるらしい、だからたまに仕事に疲れた若いもんが来ることがあるんだ。」

 そういいながらおじさんは笑う

 「良い歌だろ?、俺もここで二年ほどホームレスしてるがいつもこの歌に助けてもらってんだ。それで、君はどうしてこんなとこに?」

 「あ、俺は少し事情があって・・・今日止まるとこがないのでここで一晩すごそうかと。」

 するとおじさんはなぜか悟ったような顔をする

 「あー、なるほどなぁ、若いときには色々あるもんだ。早めに帰るんだぜ?」

 何か勘違いしているのだろうが正直都合がよくて助かるので黙っている。

 「これやるよ、俺からのプレゼントだ。」

 おじさんから投げられたものを受けとる。見るとそれはパンだった。

 「なんも食ってないだろ?、ここであったのも何かの縁だ、もらってくれ」

 「あ、ありがとうございます。その、どうして俺にこんなによくしてくれるんですか?」

 「ああ、息子を思い出してな。」

 「息子さん?」

 「俺の息子なぁ、事故に見せかけて殺されたんだ。」

 おじさんはそれを見ながら懐かしむように穏やかな口調で話し出す。

 「まあ、結局その事実も揉み消されて俺はそいつらに財産から何から全部とられてこの様よ。命だけでも取られなかっただけまだましだがな。」

 するとおじさんはフゥと息をつく

 「なあ、君が何しようとしてるかはなんとなく気づいてるんだ。俺の孫、助けてくれるんだろ?」

 「?!、どうして・・・!」

 「図星か、まあ、感ってやつかな。でもまあこの状況からうちの孫を救ってくれるなら文句は言わん。」

 「そのパンとかは俺からの少なからずの料金とでも思ってくれ・・・。孫をよろしく頼む。」

 色々な人にお願いされてしまった。

 愛されてるんだな、赤城響って人間は。

 「ええ、任せてください。」

 俺の言葉におじさんは嬉しそうに笑う。

 「これで俺の未練はもうないな、やっと楽になれるわけだ。」

 「な?!、早まっちゃ駄目ですよ!」

 「はっ、なにバカなこと言ってんだ。まだ死ぬ気なんてさらさらねぇよ。俺は単に心配事がなくなってスッキリしたってだけだ。」

 俺は安心で息をつく

 「じゃあな、頑張れよ。」

 「パン、ありがとうございました。」

 おじさんは歩きながら俺に手を振った。

 俺はもらったパンをかじる。

 「うまっ・・・」

 少し塩味がするパンはかたくて、とても美味しかった。

 

 起きると目の前には空が広がっていた。

 なぜだろうものすごく胸騒ぎがする。

 「急ぐか・・・」

 ブラックボックスがあるのを確認して走り出す。

 「頼む、間に合ってくれ」

 俺はただ急ぐ一心で学校へと向かった。

 

 学校に近くに連れて感じるのはただただ黒い何か、俺の兵士としての感が危険だと告げている。

 学校を見ながら走っていると突然歌声が聞こえてくる。

 歌だけなら昨日のと同じだったが今日のは明らかに違う。

 気持ち悪い、聞いているだけで死にたくなるような憎しみがわきあげてくる。

 これが呪いの歌、これを直接ぶつけられればただではすまないだろう。

 そんな呪いの歌に 耐えながら学校に向かう。

 学校の門のようなところにつくとそこには深淵があった。

 回りには響をいじめていた女が倒れている。見るも無惨な姿だった。

 「内側からやられてる、これが歌の力だってのか・・・?」

 目の前には深淵のような狭間がたたずんでいた。

 「君、危ないから下がってなさい!」

 後ろから話しかけてきたのは全身を青色でおおった男だった。

 「ご遺族ですか?、ここは警察の我々に任せて下がってください。」

 同じような格好をした女も俺に話しかけてくる。

 この二人は多分俺を止めようとしている。

 まあ、迷っている暇はなさそうだ。深淵の狭間はどんどん小さくなっていた。

 「すみません、それじゃあ。」

 「ちょっと、君!!」

 俺は走りだし深淵に飛び込んだ。

 

 気がつくとまた、白い空間にいた。

 目の前には派手な民族衣装のようなものを着た女の人がたっていた。

 「私は初代歌謡の巫女、名を赤城櫻葉之夜夢あかぎさくらはのやゆめと言う。長きにわたる眠りから覚め気がついたらここにいた。」

 「えぇと、俺はカズハ・ブルーローズ。赤城響を探しているのですが。」

 「ほぅ、我が一族の子孫をのぉ」

 夜夢は怪しく微笑む。

 「なぜか私にはサラルの目とやらを守れとか言われておってのぉ、このようじゃとお主を殺さねばならぬようじゃ。」

 殺意、これは人間ではない化け物だ。まともにやりあって勝てるかと言われると自信がない。

 「出来れば楽しませておくれ、私が飽きるまで立っておればここを通してやろうぞ」

 体中に寒気が走る。

 ブラックボックスからレーヴァテインをとりだす。

 瞬きをした瞬間、目の前にはペンぐらいの鋭い針が目の前にあった。

 俺は慌てて弾き返す。

 「・・・つ、強い」

 ただの針のはずなのに弾いたときの衝撃はとても重かった。

 まるで弾丸のようだ。

 いつまでも守っているわけにもいかない、俺は夜夢の懐まで飛び貫こうとする。

 しかしまたも一瞬にして夜夢の姿は消えてそこには針が残る

 針はキンと音をたてて俺の剣に弾かれる。

 「っ!」

 後ろに向いて切りつけるがそこにはなにもなくブンッと風を切る音がなる

 「残念、私はこっちよ」

 上を向くと夜夢と雨のような大量の針、俺は剣を頭の上に出し走る。

 頭上からカンカンと重い音と衝撃がする。

 「結構耐えれるのね、他の人間よりは何倍も強いみたいね。」

 夜夢はニヤリと笑う。

 「私も少々疲れてきた、次を耐えれたら終わりにしてやろう。話したいこともあるしな」

 夜夢は高く上がり歌を歌う。

 苦しみがないと言うことは死の歌ではないだろう。

 「私は少々近接戦闘は苦手でな、奴に相手をしてもらおう。」

 下から現れたのは剣と盾を持った男、全身は影のように真っ黒だった。

 「歌人形。命を宿すように歌うことで傀儡を作る私達歌謡の巫女の禁忌の一つよ。では、私はここで見てるから頑張ってね。」

 夜夢が話終えると歌人形は突然飛びかかってきた。

 「っ?!」

 こちらも強い、一撃がとてつもなく重い、流さないと潰される。

 俺は歌人形の剣を横へと受け流しながら隙をうかがう。

 しかしなかなか隙を見せない。

 「このままじゃ体力がもたない、一気にかたをつけないと。」

 何か使えないかとブラックボックスの中に何が入っていたか必死に思い出す。

 そうだ!!

 俺は出来るだけ歌人形から距離をとり、ブラックボックスからエンジンブレードをとりだす。

 これをまた出すことになるとは思わなかった。

 エンジンブレードは特攻兵のためにブラックボックスの中で無限生産できるようになっている。

 つまり、めちゃくちゃ消耗品なのだ。だから盾がわりには使えるだろう。

 俺はエンジンブレードを左に持つ。

 「あら、二刀流とか言うやつかしら、見た目だけじゃないと良いけれど。」

 「大丈夫です、退屈はさせません。」

 一気にかたをつける。二本の剣を構え向かってくる歌人形に突っ込む。

 少し飛び体を空中で回転させて遠心力で叩きつける。

 その衝撃で歌人形は少しよろめく。

 その隙を見逃さない

 レーヴァテインとエンジンブレードを一気に叩き込む

 「倒れろぉぉぉぉ!!」

 怒濤の攻撃に歌人形の防御は崩れ切り刻まれる。

 確実な手応えがしたあと、歌人形は粒子のようになって消えた。

 「はあぁ・・・はあぁ・・・」

 集中したせいか結構つかれた。

 「見事じゃ、認めよう。では、こちらにこい。」

 俺は恐る恐る夜夢に近付く

 「そんなに警戒せんでもよい、もう何もせん。」

 夜夢は戦っていたときとは対象にニコニコと楽しそうに笑っていた。

 「これを渡しておこう、これからの世界で金がないと不便だろうてな。」

 夜夢は懐から銀色の袋を取り出して渡してくれる。

 「・・・えっとー、これは?」

 「それはな、宝具《賢王の財宝袋》と言ってな?、その世界に合った金を1日三万円分ほど出すことができる。悪用するでないぞ?、三万もあればよほど贅沢をしなければ飯と宿代ぐらいにはなるだろ。」

 「そんな貴重なもの、もらっていいのですか?」

 すると夜夢は豪快に笑う。

 「はっはっは!、かまわんよ。私の一族の因果すら絶ってくれるんじゃ、お礼ぐらいせんとな・・・、我が子孫を頼んだぞ。」

 「はい、・・・やはり愛されてるんですね赤城響は。」

 「当たり前じゃなんたって私の一族の人間じゃからな。」

 すると夜夢の横に黒い裂け目のようなものが現れる。

 「さあ行け、あとは頼むぞカズハよ」

 「はい、さようなら。安らかに」

 「あちゃー、バレてたかのぉ。さすがじゃな」

 「バレるも何も貴方はシャドウなんでしょ?、俺がサラルの目使ったら自分が消えることも知っててこんなことしたんですよね?」

 「消えると言ってももう何百年も前に死んでるし、あまり変わらんがの。まあ、楽しかったぞ。ありがとうな」

 俺も思わず笑みが漏れる

 「それじゃあ行きます。ありがとうございました。」

 「達者でな、カズハ」

 俺は走りだし黒い裂け目のようなものにレーヴァテインを片手に飛び込んだ。

 

 飛び込んだ先には白い化け物と追い詰められた赤城響がいた。

 「さぁ、恐怖に落ちろ!!」

 巨大な白い手を響に向かって振り下ろす。

 元凶はあいつか

 「はぁぁぁ!!」

 俺は白い腕を切り落とす。

 「がぁぁぁぁ?!、糞がぁ、お前ぇ!!」

 とりあえず確認してそのあと殲滅しよう。

 「あんたが赤城響か?、まあ話はあとだ。とりあえずはこいつを片付ける。」

 俺はスッと剣を構えるとフィアに向かってとんだ。

 「舐めやがってぇ、恐怖のドン底に叩き落としてやる!!」

 フィアが殴る体制に入る。

 その動きは遅くまるで止まってるようにも見えた。

 俺は叩き割るようにフィアの頭を真っ二つに切る。

 「地獄で詫びろ、フィア・シャドウ。」

 「んぁ?!」

 するとフィアは力尽きるように光の粒子になって消えた。

 ていうか、今のセリフはちょっと臭かった。恥ずかしい・・・

 「ふぅ、なんとかなるもんだな。」

 「えっと・・・、貴方は?」

 響は困惑したような顔でこちらを見る。

 「あぁ、俺はカズハ・ブルーローズ、カズハって呼んでくれ。」

 とりあえず事情を話す。

 「俺は一応君のお母さん、赤城春野さんに君を助けるように頼まれたんだ。」

 「お母さんが?、でもお母さんは死んでいるはずだよ。」

 「あぁ、君のお母さんは時空の狭間に取り残されて意識だけがある状態だったんだ。話がややこしくなるから細かい説明は省くけど、俺は異世界から来てサラルの目を探してたんだけどたまたま迷い混んだ時空の狭間で春野さんにあってそこですべての事情を聞いて君を助けて欲しいと言われてここに来たんだ。」

 「サラルの目を?、というよりサラルの目ってなんなの?」

 「んー、あんまり説明してる時間ないんだ。ここから出るのが先だが、君に選択肢がある。」

 「選択肢?、どういつこと?」

 春野さんからもらった最後の選択、春野さん最後まで見守っててあげてください。

 「この世界は時空の狭間と君の夢が混ざりあって出来ている。だからすぐにこの世界は崩壊して君の目が覚めるだろう。そうすれば君は現実世界でいくつか面倒事に巻き込まれる。確か前田誠二とか言う男に命を狙われることになるだろう。」

 「それって、私が前田優子を殺したから?」

 これは正直に言って良いか迷うとこだが、残っていたらそのいじめグループの親の奴になにされるかは明白だろう。

 「あぁ、正確にはお前が殺したわけではないからなんとも言えないが、少なくとも前田とか言う男はお前が殺したと思っている。だから俺から二つ選択肢がある。一つはここに残って現実世界で生きて行くか。もう一つは俺と一緒に来て次の世界とかで居場所を探すか。今は細かい疑問や理屈抜きでどうしたいか選んでくれ。」

 響はしばらく考え込む。

 確かに重い決断だろう。何があるかわからない異世界についさっき会ったばかりの他人と一緒に行けと言われたら迷うのは当然だろう。

 しばらくすると覚悟を決めたように顔を上げて俺を見つめ口を開く。

 「ここに残って殺されるくらいなら異世界に逃げる。」

 それが響の決断なら俺は何も言えないな。

 「わかった。二度と戻れないけど未練は無いな。」

 「ええ、大丈夫。」

 「よし、お前のことは俺が守る。責任持ってな。」

 約束もしたしな。

 すると響は後ろを向く

 「お父さん、お母さん、さよなら。二人とも私のことずっと見ててくれてありがとうね。」

 響は自分の両親にお別れを言った。

 そういえば俺も自分の両親とちゃんと話せたことなかったな。

 思い出すと少しだけ寂しくなる。

 「さあ、この中に飛び込むぞ。」

 俺は響の手を引きサラルの目に飛び込む。

 これでしばらくは一人じゃない。

 次はどんな世界だろうか。

 でも、俺がワールドセイバーである限り戦いはどんな世界だろうと避けられない。

 どんな困難があるかもわからない。

 だからこそ絶対に生きて自分の世界に帰ろうと白い光に包まれながらそう心に誓った。

どうも、お恥ずかしながら二話を書き終えてしまった神刃千里です。

コメントやレビューって意外と書かれないと言う厳しい現実を突きつけられ、どうすれば良いかめちゃくちゃ悩んでたりします。

そのためお恥ずかしながらこのように出させていただきました。

宣伝とかってどうなんだろうとかURLを使ってみようかとか色々考えています。

軽い気持ちで始めてしまったので内心すごく焦ったりしてます。

もしこれを見ているかたがいたらリアルに宣伝などをしていただけたら嬉しいですお願いします(必死)

これ良いのかな?、まあ、面白いと思ってお友達の方々と共有するーぐらいの気持ちでやってくれると嬉しいです。

では、なんだか生々しい話になってきたので内容へ

もう読んでいただいた方はわかるかと思いますが今回は説明を中心にしてしまったため内容が少々薄くなってしまいました。

それでもこれからの話の土台として知っておけばこれから出てくる設定や話などをよりわかりやすく、より楽しめるようにと思いここで説明半分の小説にさせていただきました。

今回の内容で面白くないと思ったら次を!、つ、次こそはやって見せます!チャンスをください!!(雑魚幹部感)

というわけで出来れば次の回を見ていただき判断してください、頑張ります。

出来れば僕が潰れるまで一緒に付き合ってくれると嬉しいです。

では、読んでくれた皆様ありがとうございました。

出来れば感想、指摘、宣伝などをしていただけるととても嬉しいです。画面の前でブルーライトを存分に浴びながら僕がニヤニヤします(誰得)

それでは皆様の健康と自分の無事を祈りつつ・・・

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