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少年兵と蒼空  作者: 酒月沢 杏
第三章 蒼い剣と鉄錆色の国潰し
19/25

12 傲慢の城2

お待たせしました。

 「・・・響、すまん。」

 「え・・・!?」

 俺は蒼月光を持っていない左腕で響を抱き寄せる。

 そして右腕に魔力を流し込むイメージをすると共に自分の右と左にそれを流すシュミレーションをする。

 「っ!!」

 魔力の充電完了と共に力を込めて蒼月光を振り下ろす。

 その瞬間、俺の両側の廊下は青い結晶が走るように連なりシャドウの大軍を貫いた。

 そして一瞬の沈黙の後、がしゃがしゃと音を立てながら結晶は青白い光となり消えた。

 「・・・何が起こったの?」

 響がわけがわからないという顔をしながら呟いた。

 「こいつを使って薙ぎ払った。」

 俺は見せるように蒼月光を少し上げる。

 「魔法?」

 「まあ、簡単に言えばそうかな。正式には俺が使っているわけじゃないから魔具になるが。」

 興味深そうに蒼月光を見る響はすこしだけ楽しそうだ。

 「なあ、そろそろ放してもらっていいか?、動けん。」

 響は急に引き寄せたせいか俺の首に手をまわしてガッチリ固定していた。

 「え?・・・あ。」

 状況と今の体制を理解したのかまたもや顔が赤くなる。

 「ご、ごごごめん!!」

 そういいながら飛ぶように離れた。

 「いや、俺の方こそ悪かった。いきなりあんなことしてしまって。驚くほうが自然だろう。」

 そういいながら俺は服に付いた埃を払い落とす。

 「さあ、謁見の間を目指そう。」

 「え?、ま、まってよ!」

 歩き出した俺に響は小走りでついていく。

 「さっきまであんなにいたのに、嘘みたいに静かだね・・・ちょと不気味だな。」

 あたりを見まわしながら隣を歩く響が呟く。

 「さっきのでほとんど倒してしまったのか、それともまだ隠れているのか・・・」

 その後も小さな群れには会うが特別強いわけでもない。さっきのは天井を壊した時の音で集まってきたのだろうか。

 それから数分で大きな空間に出た。

 そこは他と違いかなり広く、奥には大きい観音開きの扉があった。

 「恐らく、あれが謁見の間だろう。」

 「・・・罠とかはないのかな?」

 不安そうな声で響が言う。

 「まあ、あるだろうな。」

 でも、行かなきゃ始まらないし、終わらない。

 「すぐに撃てるようにしとけ。」

 「うん。」

 俺はレーヴァテインを握りゆっくりと近づく。

 すると何かが発動したかのように空中にブラックホールのようなものが出来る。

 そこから何かが集まるように動き人の形を形成していく。

 それは少女の姿となり地面に降りた。

 「そんな・・・!?」

 響がその姿を見ると同時に絶望に染まる。

 「どうした。」

 「あ、あの子は・・・」

 響は震える声で言った。

 「クレアさんたちの娘のミーナちゃんだよ・・・!?」

 「なっ!?、ほんとか響!!」

 俺は信じられず声を上げる。

 「う、うん。写真見たから・・・間違いないよ。」

 そんな風に話しているとミーナの姿をしたシャドウがこちらをギロリと睨み口を開く。

 『我々こそ《英雄達の意識ヒーローズ・スピリチュアル》、国に殺された哀れな人の意識。お前たちには私達がどう見える?、どう映る、その姿こそ俺達の中で最も意識の強いもの。最も哀れな殺され方をした哀れなるもの。決してお前たちなどに私達の、我々の、俺達の・・・光を壊させたりなどしない!!!』

 目の前にいる蛮神は吠える。まるで憎しみを、怒りを、悲しみを解き放つように。

 そしてこちらに向かって加速した。

 「っ!」

 咄嗟にレーヴァテインで攻撃を防ぐ。幼い少女の手にはその姿に似合わない大きく禍々しい大鎌が握られていた。

 『おかあ・・・さん・・・、寂しい、よ・・・イタイヨ!!」

 顔は不気味に笑い、目からは止まることのない涙が溢れ続けている。

 「響!!、こいつは俺を狙ってる!、お前は離れて援護しろ!」

 「へ?、う、うん!」

 俺が響に叫ぶと情けない返事ともに柱のある方へ走る。

 なぜかはわからないがこいつは響には目もむけず俺を攻撃し続けている。個人的には好都合だが一撃一撃が強く、体力的にもあまりのんびりはしていられなさそうだ。

 俺は脚を中心に強化魔法をかけて応戦する。

 しかし、一向に隙を見せず攻撃はむしろ激しくなっていく。

 ふと、俺が飛んだ瞬間、大鎌が俺の体をとらえた。

 「しまっ・・・!?」

 その時、銃声とともに蛮神は横に吹き飛んだ。

 『ァァ!?』

 蛮神は小さく呻き声を上げる。

 「ふっ!」

 俺はその瞬間を逃さずレーヴァテインを振り下ろす。

 そして少女の姿をした蛮神は二つに両断される。そこから血が流れることはなかった。

 代わりに新しい頭が現れる。それは不完全で黒く淀んでいた。

 恐らくこれがこいつの正体なのだろう。

 俺は素早く蒼月光を抜き、ヒーローズ・スピリチュアルに突き立てる。

 「これで終わりだ!」

 蒼月光にありったけの魔力を流し込む。

 瞬間、目の前は綺麗な青一色になった。

 まるでヒーローズ・スピリチュアルを中心に花が咲いたようにその結晶はそれを貫き、そびえ立っていた。

 数秒の沈黙の後、結晶は元ある場所に帰るかのようにヒーローズ・スピリチュアルの体と共に砕け景色の中に溶けた。

 「・・・凄い。」

 後ろに立っていた響が啞然とした様子で漏らした。

 「いや、正直言うが自分が一番驚いている。あの大量のシャドウから逃げる時もそうだったがこの蒼月光の力は凄まじい。」

 そう言いながら俺は苦笑いを漏らした。

 「蛮神すら一撃で倒せるなんて・・・」

 「・・・それはわからん。今回は神などの多くの信仰があるような蛮神じゃなかった。今後もし、世界レベルで崇拝されているような神の蛮神に出会ったら今回のようには絶対にいかないだろう。あくまで手段として、蒼月光の力を過信しすぎるといつか想定外のことが起きた時に対処できなくなる。」

 俺がそう言うと響は複雑そうな顔をしながら「なんか説教されてる・・・」と呟いた。残念ながら聞こえている。

 「すまん、つい癖が。昔から隊長として隊員の指導をすることも多かったからな・・・」

 「へぇ、面白そうだから今度詳しく聞かせてね。」

 なぜか先ほどの不機嫌さは消え去り好奇心と期待に満ちた眼差しで俺にそう言った。

 「・・・気が向いたらな。」

 俺は誤魔化すようにまわれ右をして恐らく謁見の間であろう巨大な観音開きの扉の前に立った。

 「恐らく楽王の鐘笛はこの中だ。」

 「・・・早くアレンちゃんたちのところに持って行ってあげないとね。」

 「ああ。」

 俺は剣を強く握り扉を押した。

神刃千里です。(唐突)

今回は1ヶ月以上空いてしまい本当にすみませんでした。

この二人をイチャイチャさせながら戦わせるのって結構骨が折れるんすよね、バランスが難しいんですよ。いや、皆様からしてみたら知ったこっちゃねぇって話なんですけど。

という訳でまた次でお会いしましょう。

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