11 傲慢の城1
また、やっちゃいましたね。
窓から侵入しクリアリングを素早く済ませる。
なんだか兵士として戦っていた時を思い出して緊張が増す。
「・・・思ったよりも静かだね。」
響が小声で言った。
確かに交代の時間にしては少ない、少し無用心すぎやしないか?
「様子がおかしいのは確かだ、離れるなよ。」
「わかってるよ・・・」
響はいじけたように言った。少しくどかったかもしれない。
そんな風に少しだけ無駄口をたたきながら進んでいると曲がり角のところで足音が聞こえてきた。
「・・・五人か、いけるとは思うが間違いなく他の巡回に見つかるな。」
俺一人なら間違いなく突っ込んでいたが今回は響もいる。あまり無茶な動きはできない。
「私は大丈夫、体力には自信あるよ。」
若干のドヤ顔で言った響を俺は微妙な視線で見つめる。そういう問題じゃないんだ。
「後ろから援護射撃を頼む。片づけたら一気に走る。」
「了解。」
俺はレーヴァテインを構える。そして曲がり角を一気にかけた。
「なっ!?、敵襲!」
一番奥にいた兵士が叫ぶ。
前にいた二人は反応する前に胸のあたりに斬撃の跡がついた。
次を切ろうと身をねじった瞬間、発砲音とともに奥の兵士が倒れる。
響の援護は俺の思っていたよりも高性能なのかもしれない。
「ふっ!」
負けじと俺も剣を振り残りの二人を沈める。
そのまま兵士たちは力なく倒れた。
「やるじゃないか響。」
俺は率直な感想を述べる。
「なんだろう、人を撃つのにためらいがなくなってる。」
そう言って手の中にある銃を見つめる。
「・・・それが快感になった時、お前は人間じゃなくなる。気をつけろよ。」
「う、うん・・・」
響はいまいちピンと来ていない様子で頷いた。
「よし、いくぞ。」
「あ、そういえばどこを目指すの?」
「取り敢えず玉座を落としに行く。そのほうが宝具も探しやすいだろ?」
そして俺たちは地面を蹴った。
一階はとにかく広い。上に上がる階段が全然見つからない。
何回か兵士と遭遇したが先ほどとほとんど同じ感じで始末していった。
これだけ人を切っても切れ味が全く落ちないレーヴァテインに今更ながら驚いたりもしていた。
「・・・広いね。」
うんざりだとでも言いたげな声で響は言った。
外から見た時もかなり大きいとは思っていたがまさか更に入り組んでいるとは思わなかった。
「さすがにキツイな・・・」
このままではここで包囲される危険がある。
そこで俺はある博打を思いつく。
「響、自動式防御装置は起動してるか?」
「え?、あ、うん。」
響は訳が分からないと首を傾げる。
「すまん。」
「へ?」
俺はレーヴァテインを出力全開にして飛び上がる。
そのままの勢いで天井を切った。
天井は高周波ブレードによって砕かれ瓦礫が音を立てて落ちる。
「・・・よし。」
「よしじゃないよ!?」
瓦礫の中から響が飛び上がり叫ぶ。
「あ?、どうした。これで上に行けるだろ?」
正直迷路のような城のせいでイライラしていたのもあった。それで破壊衝動にかられたのも否定できない。
だがこれしか手がなかったのも確かだ。
「むぅ、そうだけど・・・」
響は納得できないとでも言うように唸る。
「でもどうやって上るの?、結構高いよ?」
そう言って響は上を見上げる。見当た目だけでも恐らく五メートルはあるこの天井は恐らく常人では届かない高さだろう。
「・・・響、ジッとしてろ。」
俺はそう言って響を後ろから抱える。
世に言うお姫様抱っこというやつだ・・・と由良魏博士が言っていた。
この格好は負傷者などを運ぶのに楽だからという理由で戦時中は重宝していた。
「え、ちょ・・・え?」
響は状況が掴めないようで顔を赤くして固まっている。
俺はそんな響をよそに地面を蹴って飛んだ。フォルスからもらった魔法は今更だが実に便利だ。
・・・いま思い出したがこの魔法の名前を俺は知らない。説明やイメージのためにもつけておくべきだろうか。
飛び上がり穴の開いた天井を抜けて二階の廊下に着地する。
「響、今更だが怪我はないか?」
大丈夫だとは思うが一応聞いておく。何かあってからでは遅いからな。
「う、うん。どこも痛くないよ。」
響は俺に目を合わせずにそう言った。
「そうか。」
取り敢えず響を降ろす。一瞬名残惜しそうな顔をしたが特に気にする必要もないだろう。
「・・・気配がおかしいな。」
「え?」
おかしい、というのは少しわかりにくいかもしれない。正確には人間の気配じゃないのだ。
どこかで感じたことのある重く、不気味な気配。
「シャドウだ。」
「シャ、シャドウってまさかフィア・シャドウ?」
「いや、同じだが違う。恐らく違う負の感情を核にしているやつだろう。」
しかもフィアとは違い気配は大きくない。もっと小型で数も多い。
その時、曲がり角からフラフラとおぼつかない歩き方で甲冑が歩いてきた。
「嘘、巡回!?」
「いや、違う。」
鉄仮面で顔の部分を覆っているせいで分かりにくいがあれは恐らく人間じゃない。
「カナ・・・シイ・・・」
そう呟きながらこっちに近づいてくる。
よく見ると後ろにも同じような甲冑がズラリと並んでいた。
「・・・あれがシャドウだ、構えろ。」
「あれが!?」
響は動揺した様子で言った。無理もない、俺も少しだけ動揺していた。
「ア、アァ・・・アァァァァァ!!!」
一番前にいたシャドウが叫んだのを合図に全てのシャドウが俺たちに殺意を向けて襲いかかって来た。
その一瞬、俺は蒼月光を素早く抜いた。
どうも、休むことに定評のある神刃千里です。
さてさて、今回ですか傲慢の城1とあるように2.3もあります。(3はわからん)
・・・まあ、それだけなんですけど。
微妙な切り方をしているのはそのせいでもあったりします。
それではまた次でお会いしましょう。
次もぜひ読んでください!




