9 暖かい場所
書き溜めの霊圧が消えた・・・?!
扉を開けて外に出るとそこにはクレアの膝の上に座り、抱きしめられている響の姿だった。
「・・・なにしてんだ響。」
「え、あ、ちっ違うの!!、別にサボってたわけじゃなくてクレアさんが代金はこうすればチャラにしてくれるって・・・」
「ええ!?、響ちゃんバラしちゃダメでしょ!!」
響を抱きしめたままクレアは叫ぶ。なんの意味もないが。
心なしかブゲルの顔が少し悲しそうな顔になる。しかしそれはすぐに呆れたような苦笑に変わった。
「おいおい、そんなのでチャラにされちゃ困るんだよ。」
「うるさい!、私はこの響ちゃんを代金としてもらうから!!」
「ええ!?」
なんかめんどくさいことになってきたな・・・
そう思い俺はクレアに近付き抱かれていた響の手をつかみ無理やり引き寄せる。
「ふぇ?!」
「なっ!」
響は何が起きたのかわからないとでも言うように固まり、クレアはおもちゃを取られた子供のようなリアクションをする。
「渡しませんよ?、響がここに居たいと言うなら別ですが。」
俺は響を抱き寄せてクレアから守るようにする。
自分でもなぜこんなことをしたのかわからなかった。だが、取られると思うと無性に腹が立った。これじゃまるで俺まで子供みたいじゃないか。
わかってはいる。響は物じゃないしこの世界に残るならどうこう言うつもりはないが、それでもどこか感じたことのないような引っ掛かりがあった。
「え、じゃあじゃあ、響ちゃんは私たちと・・・暮らしたい?」
この言葉に響とクレアは少し悲しい目をした。
そう、あの時みたいな・・・いや、駄目だ。思い出すな。
「すみません、私はカズハについていきます。」
響がそう言った時にホッとしてしまった自分に嫌悪を感じる。
なぜ、なぜ俺は安心している?
「そっか・・・あーあ、フラれちゃったぁ。」
「バーカ、お前が強引過ぎるんだよ。」
顔を伏せたクレアの頭をブゲルは優しい顔で撫でる。
なぜ、この二人が結婚したかって理由が少しだけ理解できた気がする。
「まあ、気にするな。俺たちにも色々あるんだ・・・さて、銃の方は仕上がってるのか?。遊んでるってことはもちろん出来てるんだよなぁ?」
ブゲルは話題を変えるためか少し無理やりに本題へ切り替える。
「・・・当たり前じゃない。私を誰だと思ってるのよ。」
いや、知らないけど。
などと辛辣なツッコミが浮かんだが心の奥にしまう。
「響ちゃん。見せてあげて?」
「は、はい。」
そう言って響は机に立てかけてあった物の布を取る。
それは猟銃に近い形状の狙撃銃だった。観察するようにその銃をみるとスコープを置くところにはなぜか青い結晶が付いていることに気付く。
「あの、これは?」
「ああ、スコープの代わりよ。倍率もこっちの方が色々変えれるし、やろうと思えば動く敵をロックできるの。」
「ほぉ、弾は?」
「一応響ちゃんには説明したけど、中に炎の魔法石が入ってるの。だからそれで飛ばせるからこの鉄の玉でいいわ。」
そう言ってクレアが織り出したのは直径一センチぐらいの鉄の玉だった。
「これなら君の持ってる道具?的なやつで量産が出来るって響ちゃんから聞いたんだけど。」
「ええ、大丈夫ですよ。」
なるほど、覚えていたのか。
確かにただの鉄の玉ならブラックボックスでいくらでも量産できる。
投げナイフもあるがこれならまだ十分余裕があるだろう。
「使い方もちゃんと教えたし、撃つときの音もほとんどしないから響ちゃんの安全を出来る限り考慮して作ったから問題はないはずよ。」
クレアは一仕事終えたと言わんばかりに伸びをしてから立ち上がる。
「さて、これで私の出来ることはおしまい。これ以上はなにもしてあげられない。」
「ありがとうございました、クレアさん。」
響が深々と頭を下げる。
「いいよ、私は好きでやってるの。それに響ちゃんと色々お話出来て楽しかったしね!」
クレアは笑った。その笑顔が作り物というのは俺から見ても明らかだったがそこにいる全員が触れなかった。
「それでは、そろそろ行きます。」
俺がそう言いながら窓の外を見ると空は赤に染まり、もうすぐ日が沈む頃だった。
「そうか。もう大丈夫か?」
「ああ、ブゲルのくれた剣があればきっとなんとかなるだろう。」
俺は鞘に納めてある蒼月光を見せる。
「・・・さっきクレアも行ってたが俺たちが出来るのはここまでだ。だが、今出来ることはすべてやったつもりだ。絶対に生きて帰ってこい。」
「ああ、わかってるさ。」
「男と男の約束だぜ?」
そう言って俺とブゲルは拳と拳でハイタッチをした。
「それじゃあ行くか。」
「うん。」
響が銃を抱えて俺の隣にくる。
「じゃあ、お世話になりました。早めに逃げてくださいね。」
「荷物は整えてある、大丈夫だ。」
ブゲルはそう言って笑った。それとは対照的にクレアの顔は暗い。
そんなクレアに響は駆け寄って笑顔で言った。
「代わりにはならないかもしれないですけど・・・またね、"お母さん"。」
「っ!?」
クレアは響を勢いよく抱き締めた。
「・・・ありがとう、響ちゃん。ちゃんと無事に戻ってきてね。」
ほとんど鼻声の言葉に響は優しく笑う。
「大丈夫です。なんたってカズハが守ってくれますから。」
そんな言葉に少しだけ重みを感じる。もう、俺の命は俺だけのものではないんだ。
「・・・クレア、そろそろ放してやれ、嬢ちゃんが動けないだろ?」
「うっ、うぅ・・・」
気が付けばほとんど泣いていた。
しかしクレアはおとなしく響を放した。
「では。」
俺たちは二人にもう一度別れを告げてから家を出た。
「・・・ミーナ。」
家を出るときに聞こえた名前を俺は知るとこはなかった。
どもども、神刃千里です。
今回も読んでいただきありがとうございます!
さて、ついに国潰しですね!ワクワクします!
まだ書いてないんですけどね!
・・・すみません、頑張って書きます。
次もぜひ読んでください!




