7 彼女だけが聞いた話
番外編以来の響ちゃん目線です。
カズハと別れたあと、私は奥の広い倉庫のような場所に連れてこられていた。
「さてさて、響ちゃんをモフモフしたいから早く終わらせちゃおうか!」
クレアさんはそんな風に意気込んでいるが私としては少し不安がある。
ていうかモフモフという単語に少々身の危険を感じるのだ。
「響ちゃんの今使ってる銃を見せてくれないかな?」
「え?、あ、はい。」
突然真面目な顔で言われて少し戸惑ったがすぐに理解して私は背中に背負っていた銃を取り出してクレアさんに渡す。
「・・・おぉ、これってこの国の兵士が使ってる銃じゃない。拾ったの?」
「ええ、まあ、ちょっと・・・」
私はクレアさんからそっと目を逸らす。まさか戦場跡地のど真ん中で死体を漁っただなんて言えない。
「怪しまれなかった?、流石にこの国の兵もそこまで馬鹿じゃないはずだけど・・・」
クレアさんの少し棘のある言い方に私は苦笑いをする。
「カズハがこの国の兵士の国書を使って誤魔化したんです。」
「あぁなるほど。よく考えるね。」
そしてクレアさんは銃を持って隅の方にあった作業台に銃を置いた。
「それじゃあこれをモデルに有り合わせで作るけど、何か希望とかある?」
「希望・・・ですか?」
いまいちピンとこない。
「えっと、音を小さくとか威力強めとか後は・・・弾の簡素化かな。でもまあ何でも出来るわけじゃないからその辺は考えてね。」
私は少し考え込む。そしてカズハの話の中にあったことを一つ思い出した。
「あの・・・弾を金属だけにする事って出来ますか?」
「具体的には?」
「弾に火薬を使わず、銃に飛ばすための機能を付けて弾は金属のみで作ってほしいのですが。」
「それはいいけど・・・なんで?」
「カズハが言ってたんですが・・・私も上手く説明出来ないんですけど簡単なものならほぼ無限に量産出来るって言っていたので、弾を金属のみの簡単な設計にすれば弾には困らないかと思って。」
私も投げナイフの時に軽く聞いた程度なので上手く説明できなかったが、少しでも長く使えるようにと思った結果だった。
「んー、了解。じゃあそれをコンセプトに作ってみるね。ベースはライフルでいい?」
「はい。お願いします。」
「じゃあ暇になるかもしれないけどそこで待っててね。出来る限りすぐに終わらせるから。」
そう言ってクレアさんは作業台に黙々と向かった。
私は近くにあった椅子に座って息をつく。ふと私のもと居た世界を出てまだ3日したたっていないことに気づいた。
それなのになんだかものすごく長い時間旅をしていた気分になる。それぐらい濃い3日間だったのだろう。
私はあの世界に居たときより少しだけ変わった気がする。
1日で喋る量があの世界に居たときよりも三倍ぐらいになった気がする。
正直言うとカズハと喋ったり何かをしているとすごく楽しい。
なんだか落ち着くし言葉に表せないような安心感がある。
私は自分をもっと暗い人間だと思っていたが本当は思ったよりも明るいのかもしれない。
実際中学の時には案外普通に人と話せていたのだ。いじめもあり、自分を押し殺していたのかもしれない。
そんな風に自分の今を見つめながらボーっとしていると後ろから肩を叩かれる。
振り替えるとプニッと頬っぺたにクレアさんの指が刺さる。
「・・・なんですか?」
なんだか無性にイラッときたのでつい声にトゲが入ってしまう。
「お、怒らないで。悪気があったわけじゃないの。」
クレアさんは少し焦った感じでブンブンと顔の前で手を振る。
「怒ってないので大丈夫なのですが・・・それで、なんですか?」
「えっと、一応仮完成したから試し撃ちしてもらえないかなって。」
「わかりました。」
ボーっとしてて気づかなかったが大分時間がたっていたようだ。
私は椅子から立ち上がりクレアさんと作業台に向かう。
「じゃじゃーん!、これがプロトタイプです!」
そこには軽く装飾を施した少しゴツいマスケット銃のようなものが置いてあった。
「この上に付いてる結晶はなんですか?」
私は装飾のなかでもひときわ目立つ青い色の結晶を指差す。
「これ?、これは光倍結晶って言って光の量を魔法で調節したりしてスコープとか望遠鏡の代わりになるクリスタルなのよ?、この国では結構一般的な技術なの。」
「へぇ。」
私はなんとなく結晶を除いてみる。すると青かったはずの結晶は透明に見えるようになり真ん中に向かって十字が現れる。
「倍率はそこの横にあるダイヤルで変えられるよ。」
言われた通りに私はダイヤルを前に回すと結晶から見える床が急に近くなった。
「おぉー!」
「喜んでもらえて何よりね。」
そう言ってクレアさんは微笑んだ。
その笑顔に少しだけ寂しさが混じる。
それは私が最後に見たお母さんの顔にそっくりだった。
「・・・どうかした?」
ジッと見つめる私にクレアさんは不思議そうに聞いてきた。
「あ、いえ。なんだか少しだけ悲しそうな顔をしてたのでどうしたのかなーなんて・・・ははっ、すみません。」
なんだかまずいことを言ってしまった気がして私は笑って誤魔化す。
クレアさんは黙り込んでしまう。私はそれを黙って見つめていた。
それから少し時間がたってふと、クレアさんが口を開く。
「・・・少しだけ、話を聞いてもらえないかな。」
私は無言で頷きクレアさんに向かい合うように座る。
「少しだけ辛い話になるけどいいかしら。」
「はい。私が聞いて、クレアさんが少しでも楽になるのならいくらでも話してください。」
クレアさんは最初の時とは違う落ち着いた様子で淡々と語り始めた。
どもども、神刃千里です。
久々に一人称を私で書いた気がします。
俺とか僕になってたらすみません。
また次も読んでください!
では!




