マイスターの弟子たち
// 「未来に至る二つの顔」の続編のようなものです。
ある晩、マイスターが亡くなった。傍らには、医者と、あの客と、ジョンがいた。
ジョンは、節くれだったマイスターの手に静かに自分の手を重ねていた。
「これが、悲しいということなのですね」
「そうだな」
あの客がぽつりと答える。しばらく間をおき、言葉を続ける。
「他の弟子たちには私から連絡しておこう」
「ありがとうございます」
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通夜になると、マイスターの弟子たちがポツポツと顔を見せた。
「お前が親父の最後の弟子か」
どの弟子も最初の一言はそれだった。
「よし、お前の仕事を見せてみろ」
二言めは誰もがそれだった。
「くっそ! あの親父! こんなの俺に仕込んでねーじゃねーか!」
三言めも決まってそれだった。
ジョンはこれらの言葉に戸惑い、何度もあの客を探し、どういうことなのかの説明を何度も頼んだ。だが、あの客はその度に、「ふううん」と楽しげに微笑むだけだった。その「ふううん」にジョンがなおさら戸惑っていると、次の弟子がやってきては同じ言葉をジョンに投げかけるのだった。その合間には弔問客もやって来て、結局ジョンは、その「ふううん」の意味をあの客から聞くことはできなかった。
深夜になり、残っているのは弟子たちとジョンと、あの客だけとなった。
弟子たちはジョンに、自分が仕込まれていないという技術について尋ね、ジョンはそれに答えた。あるいは、ジョンの仕事を見て、こうした方がいい、ああした方がいいと言うのだった。
夜明け近くになると、弟子たちはそのあたりに転がって寝ていた。
「どう感じているか教えてくれないか?」
後ろからあの客の声が聞こえた。ジョンは振り向き答えようとするが、どうにも適切と思える言葉が思い当たらない。
「どう言えばいいのでしょうか? まるで、私が皆さんと同じであるかのように」
「ふううん」
あの客はまたそう答えた。だが、今度はその後に言葉が続いた。
「そりゃぁ、同じだからだろうさ」
「同じ? ですが、私はロボットで…」
ジョンがそこまで言った時に、あの客は「そんなつまらないこと」とでも言うように手を振った。
「同じだろ? マイスターの弟子なんだから」
ジョンはその言葉を理解しようとしたが、あと少しで理解できそうなところまで来ると、自分はロボットであるという考えが割り込んできてしまい、掴みかけた理解がどこかへ消えてしまうのだった。
「私はロボットで…」
「ふううん」
あの客はやはりそう答えた。
「じゃぁヒントをやろう。君にももう実はわかっているんじゃないかと思うけどね」
期待から、ジョンはあの客の次の言葉を静かに待った。
「彼らには君がロボットかどうかなんてことは関係ないんだよ。マイスターの弟子だってことの方がよっぽど大事なんだ」
「弟子であることがですか? ロボットであることよりも?」
あの客はただうなずいた。
ジョンは、なんども自分の手から逃げてしまっていた理解を、やっと掴んだように思った。
「もう君は工業製品ってわけじゃなくなったな。何人も兄ができてしまった」
ジョンは掴んだ理解を眺め回し、撫で回し、そして味わった。
「これは、何と呼んだらいいのでしょうか?」
「さてね? 私にはわからないよ。君の中での出来事なんだから。何と呼んだらいいのか、これからそれを探してみてもいいんじゃないか?」
「私にできるでしょうか?」
「困った時には、兄弟を頼ればいい。頼り過ぎちゃいかんがね」
ジョンは寝転がっている兄弟子たちを見た。
「はい。やってみようと思います。あなたにもお手伝いをお願いしてもよろしいでしょうか?」
あの客は微笑むと答えた。
「構わんよ。私たちがどれほどのものを生み出したのか見たいからね」
そう言うと、あくびをして横になった。
ジョンはまたしばらく新しい理解を眺め回してから、充電の準備をしてスリープに入った。




