中2夏②
誠人に会ったのは、本当に久しぶりだった。
彼は中学生になって勉強や部活で忙しくなったし、私も教員採用試験の勉強など、互いに時間に追われ、会う機会が減ったのだ。
ーー違う、本当は、会おうとすれば時間は作れる。なのに私は、避けている。
本当は、どんどん身長が伸び、たまに会ったときにはハッとするほど大人びてきた誠人に、どう接していいのかわからないでいる。
しかし時は経ち、彼が中学二年生になった初夏、私は実習生として彼に向き合わなければならない立場になってしまった。
誠人の評判は、自然と耳に入った。
剣道部で活躍していることや、成績が上位にあること。先生方からの評判は高く、将来をとても期待されている男子生徒。
学年問わず、女の子たちからも人気があるようだ。誠人は顔も整っているし、その上文武両道だったら、そりゃほっとく女はいないだろう。
学校で見かける誠人はいつだって人に囲まれていて、みんなに好かれていた。
今も、渡り廊下で友達と談笑する誠人を見つけ、思わず引き返した。目的地へは違う道を通って行けばいい。
きっと誠人には、私よりももっと相応しい相手がいるはずだ。普通に同年齢の子と付き合って、青春を謳歌するべきだ。それなのに。
私が彼を縛っているのだ。
解放してあげなければ。学校で過ごす彼を見て、そう心に決めた。
***
「ーーくそ、また逃げられた」
そのとき、誠人がそんなことをつぶやいていたなんて、彼女は知らない。