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中2夏①

「じゃあこの問いをーー、美耶子先生、答えてもらえますか?」

「……はい?」


 教室中の視線が私一人に集中する。

 まずい、違うことを考えていたから、どんな質問か全然わからない。

 私がなかなか答えられないため、生徒たちがざわめく。さあっと、身体から血の気が引いていった。


 私は現在、教育実習生としてこの中学校に来ている。この時間は、同じ教育実習生の三宅くんの授業参観に来てみたのだが……、まさか当てられるとは思っていなかったものだから、意識が飛んでしまっていた。


「えーと、美耶子先生、どうしました?」

「すみません、聞いていませんでした」


 もう、謝るしかない。適当な答えを言って間違えるよりはいい。


 くそー、三宅め! 人が物思いに耽っているときに限って当てるなんて嫌がらせか! 仮にも「先生」と呼ばれる私の立場はどうなる!

 もうっ、ばかっ! ばかばかっ! 三宅なんて滑って転んで醜態を晒してしまえぇ!


 自分の過失はよそに、心の中で毒づいていると、三宅が同じ質問を生徒にふった。


「えーと、じゃあ他の人に答えてもらおうかな?」


 三宅(呼び捨て確定)が教室を見渡していると、一人の少年が、すっと手を上げた。


「あ、答えわかった?」


 少年は、起立して言う。


「あの、板書間違ってます」

「え? ……ああっ、あー、ごめんごめん、消すわ!」


 三宅がチョークの粉を思い切りかぶりながらも、しゃにむに黒板消しを動かした。女子生徒たちがクスクス笑う。

 少年が前を向いたまま、椅子に座り直す。細いけれど確実に大きくなった背中に、キュッと胸が締め付けられる。



 教育実習先には、年下の彼氏、誠人がいた。


美那子さん、ぼーっとしすぎです。

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