中1春①
『年下の彼氏――小学生編』の続編です。
『高校生編』と並行して執筆しております。
ーー春。ついに待望の日がやって来た。
制服のブレザーに袖を通し、鏡に映る姿をじっくり見てから深いため息をついた。
「……ブカブカ」
すぐに身長が伸びるだろうから、と大きめの制服を買ったせいで、制服に着られている感が否めない。今日の入学式が終わったら年上の彼女と会う約束をしているのだが、こんな姿を見られるのはプライドが許さない。制服姿を披露するのはまだまだ先の話になりそうだ。
俺は部屋を出て、キッチンにある冷蔵庫から牛乳を取り出した。
「お、誠人、おはよう」
牛乳を飲んでいると、父さんがパジャマの上から尻をかきながら起きてきた。
「おはよう」
「今日から中学生だな。誠人、父さんは入学式が終わったらそのまま会社にでるから一緒には帰れない。悪いな」
「それ何度も聞いた。別にいいよ」
「そうか。……今日は頑張れよー!」
そう言って俺の頭を撫でた。されるがままになってあげているが、心の中では子ども扱いされることに少し不満を抱いていたりする。文句言ったら傷つきそうだから我慢するけどさ。
父さんの分も朝食を用意し、先に食べ終わってから洗面台で歯磨きをする。
今日から中学生ーー。
鏡にニヤけた自分が映っていた。うがいをして、気を引き締める。
そう、今日、俺にはしなければならないミションがある。「友達いっぱいつくるぞー」とかどうでもいい。「勉強がんばるぞー」とか今それどころじゃない。
俺がこの一大決心をしたのは、少し前の、小学六年の冬に遡る。友達が彼女とキスしたことを話すと、年上の彼女は血相を変えて「小学生がキスなんて許しません!」と言った。そこで俺は思った。そっか、中学生になったらいいんだな、と。
誠人くん、意気込んでます。