小さな小さな大きな出来事
「はい、じゃー今日のHRは席替えをするぞー。」
「…え。」
これは小さな、でもとても大きな事件。
窓際の後ろから3番目。これはとても良いポジションだと思う。
だって一番後ろより先生に注目されないし、なにより窓から外が
「……綺麗だなぁ。」
ぼんやりと呟いてみる、そっか多分もうこの景色ともお別れか、なんて考えながら。
ほんの少し前まで満開だったピンクの花が綺麗な緑一色になった綺麗な景色、雲も少なく澄み渡った空をしっかりとみて…
そして、いつもみえていたあの人の事を考えて、私は先生が作った番号が書いてある紙をとるために席を立った。
「…真ん中」
くじの結果。私は真ん中の列の後ろから2番目の席になった。
うん、なかなか悪くないけど…さ。…まぁしょうがないか、くじなんだから。
私はなんとなく恨めしく窓際の席を眺めながら教室を後にした。
そして生憎というかなんというか…現在は面談期間なので昼休みはなし。当然あの中庭にも行く理由がない。
「…なんか、本格的に私ストーカーみたい…。」
いや、あととかつけてないけどさ?なんていうか…思考が??
「いやいやいや!違う違う違う!健全だから私、健全な恋する乙女だから!!なんとなく会いたい事とかあるよねぇ?!」
とりあえず懸命に自分に自分で言い訳する。…いや、言い訳じゃない!事実だ事実!!!ふぅ…。
というか一人になるとさぁ…つい独り言って増えるよねぇ。この時もさ?無意識だったよ私。気がつかなかったもん
声をかけられるまで
「あの?」
ぽん、と不意に肩を叩かれる
「ひぎゃあああああ?!」
…あぁ、我ながらなんて可愛げのない悲鳴だろう。もっとこう…きゃーっ!みたいな悲鳴あげられないのかなぁ私、いやでも実際きゃー!!とか言ってる人さ、かなり心余裕だと思うよ?実際出ないってあんな声。
…と、今のはきっと時間にしたら0.2秒位だと思う。よく頭まわったなぁ。
混乱?いやいやするでしょう!!だって…
「あ…あ、碧…くん??」
「…はい。こんにちは」
さっきまで会いたかった人がいつものなんとなく気の抜けるオーラで立っていたのだから。
「あ、ええと!奇遇ですね!!ちょっと私!ここに用があって!」
「人探しでしたら、お手伝いしましょうか?」
「え、」
…イマ、ナンテイイマシタ?
「え…ええと、人探…し??」
「あれ、違いました?でも確かさっき会いたいって言…」
「うっわあああ!?」
こーえーにーだーしーてーたー!?そして聞かれてたあああ?!?!
「?!!?」
「あ、北村さっ」
まさか当の本人に聞かれてるとは思わなくて混乱した私はとにかく逃げ出そうとその場を駆け出した
…そう、前も見ずに
「うわっ」
そして下り坂って事に気がつかなかった私はそのまま草で足を滑らせた
「…〜〜っっ!!!」
そしてそのまま私は地面に勢いよく衝突した
…はずだった。
「…???」
あれ?痛くない…と、そっと目を開けてみる
「……………え。」
あれ?ういてる?地面じゃないよ目の前。地面の方に傾いてるけど、大分離れてるし……って
「えぇ?!」
「…大丈夫ですか?」
背後から声がきこえる
どうやら私は碧くんのこの細い腕に支えられたらしい。今は碧くんが後ろから私を抱きかかえるような形になっている
…ていうか、え、えぇ、あれ??ん??
「怪我はないですか?」
え、こんな、細い腕で、っていうか私重いよね、え、動けないどうしよう大丈夫かな、折れないかな
「……あのー…?」
はっ!しまった、いきなりの事でついフリーズを…!!
「…あ、えと、はい!大丈夫!大丈夫です!!」
「そうですか。」
ほぅっと後ろから安堵の息が聞こえた……首元で少しくすぐったい。
えーと…助けてもらったのは有難いんだけど…恥ずかしいからそろそろおろしてもらえないかなぁ、とか思いながら碧くんの方をそーっとみてみると
「?、どうしました?やっぱりどこか痛いとか…」
「え?!いやいやそうじゃないんです!…えーと」
心配をさせてしまった!!あぁっなんかしゅんとしてる!!
「ちっ!違うんです!なんというか、碧くんに支えられたのに驚いたというか!まさか私を片腕で支えるなんて思わなかったので…」
ってなんで出てくる言葉がさっき思った事!!他に思いつかないとか頭弱すぎだよ私!!どうでもいい時だけまわるんだからーもーー!!
と、私がまたうわーっとなっていると後ろで表情はみえないけど碧くんが笑ったのがわかった
「これでも一応、男ですから」
「…っっ///!!!」
きっと今彼は無邪気な笑顔で楽しそうに話しているのだろう、そうに違いない
「…?北村さん?」
「ーーっだああぁ///!!!」
ごんっ
「ゔっ!!」
勢いよくあげた頭が見事に碧くんのあごにヒットし、そのままよろめいた碧くんを跳ね除けるように、私はその場から全力で駆け出した。
うわあああもう無理!!本当に無理ーーーー!!!!!
後日、たくさんのモンブランパンとメロンパン、そして湿布を持って私が碧くんに謝罪に行ったというのはいうまでもないお話。
もうこのまま短編シリーズにします!
そして実はただ碧くんにあのセリフを言わせたくて書いたという私の趣味全開なお話でした(笑)