第9話 レンの逆鱗
正月忙しくて、投稿が遅くなりました!
おまちかね(?)の第9話です!
Side リリス
「ーーッッ!!?」
私が気づいたときには、彼の姿は消え去っていた。
そこに残るのは、かすかな紫銀色の光だけ。
慌てて上を見上げると、物凄い速さで空を駆けるリュカの姿が─────
「──っ!追いかけないと!」
急いで彼の後を追いかける。幸い私の固有魔法『神域』には加速系の神域がある。
追い付くことはできるはずだ……たぶん。
まさかいきなり飛ぶとは……。ん?あれ?飛行魔法って完成してたっけ?
……べつにいいか。
「でも、ちょっと気になるわね…。」
そう。何故。
何故彼は、自分が襲われたときより、王女とはいえ喋ったこともない(だろう)赤の他人が拐われた時の方が殺気が強いのかしら?
Side END
Side 紅坂千雨
「やっと帰ってこれた……。」
舞い散る桜が美しい、ある昼下がりの頃。
ヤ○ザとかがたむろしていた海底洞窟の壊滅から二日、私、紅坂千雨はある一軒家の前で、思わずそう呟いた。
背には愛用の薙刀を背負っています。
これといって変わった様子の無い、いたって普通に見える洋式二階建てのこの家。
しかし騙されるなかれ。この家には今の技術が鼻で笑えるくらいの某青狸もびっくりの技術が詰め込まれているのだ!
ま、その説明は後で。
「ただいま~。」
ガチャリとドアを開けてはいる。靴を脱いで揃えてから、キッチンにある冷蔵庫へと突撃した。
私は冷蔵庫からグレープジュースを取り出すと、コップを使わずに一気に飲み干す!
………気管に入って思いっきりむせちゃった。反省反省。
てへっ
そうして喉の乾きを潤した私は、そのまま階段下の物置へと足を運んだ。
いつものように壁に偽装してあるフタを開け、手のひらを押し付ける。
……普通、家庭にはこんなもの無いよね…。
この指紋認証機、実はレンが作ったものだ。
どうやって作ったかは、最後まで教えてくれなかった……。一体、拾ってきた空き缶と学校でもらった導線からどういうプロセスを経てこのような立派な機械ができたのか、全くわからない。
私の可愛い義弟(兼弟子)は錬金術師にでもなるつもりなのだろうか?
そこで思考を遮るようにピーと高い電子音が響く。ウィーン、と音をたてて開く物置の扉。
…………うん、やっぱ細かいことは考えないようにしましょ♪
知らぬが仏♪
私が中に入ると、後ろの扉が閉まる。そして感じるのは緩やかな下降の感触。
住宅街に建っているどこにでもありそうな一軒家。
それが私達『レイニー』の隠れ家だ。
─○─
ウイイィン、ピーンポーン。
少ししてからドアが開いたので、私は肩に掛けていた薙刀の入った袋を入口横の収納ケースに入れておいた。
「お、お帰り、リーダー。」
横から声をかけられた。そちらを見やると、黒髪黒目、胴長短足の日本人の特徴を全て詰め込んだような男がいた。手には書類を持っている。
「ただいま、誠。私がいない間になんかあった~?」
私はその男──天宮誠に聞く。既に手の中にはコンビニで買ってきたショートケーキの乗った皿があった。
「相変わらずの甘党ですねぇ……。そういえば、あなたがやったこと、今テレビや新聞で凄いですよ。『何があった!!犯罪組織壊滅のその裏!?』って感じのニュースばっかですよ。流石はリーダー。一人でぶっ潰すとは、もはや人間じゃなブホァ!!?」
うざいから殴っておいた。
「あのねぇ、まず糖分は運動の後に摂るのは健康のため。次に壊滅のことだけど、あんなの静音とか武志にも出来るわ。そして最後に、私はれっきとした人間!ホモサピエンス!」
誰が人間をやめたですか!私はまだ17のうら若きおとめですぅ~。
「素手でコンクリート粉々にしたり時速100キロオーバーで走るバイクに走って追い付いたり水の上を走ったりできる人間がいてたまるものですか!」
「できるんだから仕方ないじゃない!」
「まさかの逆ギレ!!?」
「人間、元気と根気と努力があれば何でもできる!」
「そしてアント○オ猪木!!?しかも何か多い!」
あ~、もう!
「ギャーギャー五月蝿いっ!」
「理不尽!?」
五月蝿いから裏拳をかましといた。
……勢いあまって壁にめりこんじゃった。
…………うん、自業自得だね!だって煩かったもん!
……うん?
あたらしい じんぶつ に えんかうんと した!
「・・・何を遊んでいるんですか?あなたたち・・・。」
あ、静音だ。相変わらず味気ない服装だなぁ~。だからレンに振り向かれないのに。
……あれ?これで全員?
「静音?武志と詩織ちゃんと真一くんと咲夜ちゃんは?」
まだ現れないメンバーの状況を聞くと、
「武志さんはスポーツジムで筋トレ、しーちゃんと真くんは学校。咲夜ちゃんも学校の入学式です。」
ふむふむ。中学生ズは学校か。しかしあの脳筋、いつもいつも筋肉筋肉筋肉筋肉。
他にやることないのかねぇ?
「・・・そういえば、なぜレンくんは殺人よりも誘拐事件の担当件数が多いのでしょう?・・・何か知っていますか?」
……それを聞くか。
「…………あまり思い出したくないわ。その話はまた今度教えてあげる。」
脳裏にフラッシュバックするのは血塗れのレン。
泣き叫ぶ咲夜。
私は──彼らに何もしてあげられなかった。
防ぐことも、守ることも、救うことも────
「──っ!」
唇をかんで思考を中断する。思い出しすぎると、マズイ。
心配そうに、そして罪悪感を感じたのかやや静音がばつの悪い顔をしていた。
「ごめんごめん。私は大丈夫よ。ただ、今言えることは────
あの子の目の前で誘拐をしたやつは、ただでは帰れないでしょうね。」
それでもやったやつは、よくて半殺し、悪くて…………
「────精神を砕かれるでしょうよ。」
次回、レン(リュカ)がとった行動とは!?
まだ見ぬ誰かにフラグがたちましたね!