第5話 庭園で
ちょっと短いです。
気温の高い、地球で言う初夏にあたる第四の月。
(この世界では第一~第三の月が春、第四の月~第六の月が夏、第七~第九の月が秋、第十の月~第十二の月が冬の気候となっている、全12ヶ月で一月30日の一年計360日である。)
今宵の月は満月だ。
しかし雲によってその輝きは遮られている。
僕、リュカ・エルニアートはパーティーを抜け出し、夜風に当たっていた。
………はたしてこれは3歳の子供がするようなことなのだろうか。全く分からない。
さっきは本当に殺意がわいた。いきなり現れた俺様ガキ大将だぜヒャッハーなやつが上から目線で結婚命令されるとは…。
あれでもこのパーティーに呼ばれてるということは彼らも貴族だろう。
リュカ・エルニアート、3歳。
この国の未来にものすごい不安を抱く今日この頃。
そんなこんなで噴水の側まで歩いていた僕は、噴水の縁に腰を下ろしている一人の少女に気がついた。
年は僕よりも1つ上くらいだろうか。
彼女はその瞳と同じ真紅の色をしたドレスを着ており、サラサラと風に流れる黄金のような輝きを放つ金色の長髪は、僅かにこぼれ堕ちる月の光に照らされ幻想的な輝きを放っている。
彼女はこちらの視線に気がついたのか、僕に微笑み、肩にかかった金の髪をかきわけながら言った。
「こんばんは、お嬢さん。そんなところに立ってないで、こちらに座りなさいな。」
ほら、と彼女は左隣の縁をポンポンと手で叩く。
…………今、僕のことを『お嬢さん』と呼んだように聞こえたけど、きっと幻聴だろう。
いや、幻聴に違いない!
まあ彼女の誘いを無下にするのも悪い。そう思って僕は彼女の隣に座った。
途端、ふわり、と桃のような甘い香りが届く。
「私はリリスよ。貴女、名前は何て言うの?」
彼女──リリスは優しい声で僕に話しかける。今、『あなた』が『貴方』ではなく『貴女』って言われた事が何故か分かったけども、僕は何も気づいていない。
本当に何も気づいてないもーん。
……え、『嘘つけ、ホントは気づいているだろう?』
はっはっは。ハタシテナニヲイッテイルノカナ?
僕には何も分からないよ。ごめんねっ☆ミ
「こんなところで何してるの?パーティーはどうしたのかしら?」
怪訝そうな顔をして僕の顔を覗きこみながら言う。
「ちょっとね。つまらなかったから逃げてきたんだよ。」
答える僕。今、舌っ足らずにならずに上手く言えたことに内心感動していた。
「・・・ふぅん?何でつまらないの?」
落ち着いた様子で聞いてくる。その目は興味と好奇心で彩られていた。
「そのままだよ。ただ食べて騒ぐだけなら誰でもできる。魔族の進行がおさまっている今のうち王族とパイプを繋ごうとする大人ばかりだったし。どうせ理由は自分達の『権力』の増強あたりだろうけどね。……まぁ、個人的な理由もあったんだけど……。」
言いながらブルリ、と体を震わせる。まさか同性──しかもまだ4つかそこらのガキんちょにあんなことを言われるとは……。
するとクスクス、と笑う声が聞こえた。見ると、リリスが手を口にあてながら笑っていた。
僕の視線に気づいたのか、彼女は笑うのをやめて僕に言った。
「ごめんなさいね。でも、貴女って本当に面白いわね。ホントにまだ子供なの?って思うくらい周りをよく見てる。こんな子初めて見たわ。」
…………僕って精神年齢18歳のはずなんだけど……。何だか15の頃だった前世(?)から考え方が全く変わった様子がないんだよなぁ…。
これは僕が子供っぽいってこと?それはそれでショック…
─────チャキ
僕の思考はここで一旦中断される。リリスはまだ気づいてない──のはまあ当たり前のことなのだが。
僕たちはいつのまにやら、噴水の傍にある植え込みや柱の影に現在進行形で隠れている武装した暗殺者っぽい気配を醸し出す人たち──気配から考えて10名ほどぐらいか──に囲まれていた。
………………えっと、何で?
やっとテストが終わりました。もうボロボロ……。
これもテスト前にパズドラをDLしてはまった結果だろうか……。
ちなみに桜餅のコードは171,418,475
ヨミを使っています!(2012/12.18現在)