第25話 天体魔法(アステール)
あけましておめでとうございます!今年初更新です!
年内どころか新年ジャストにすら間に合わなかった、だと……!?
第25話、どうぞ。
さて、今更ながら元素魔法と固有魔法の違いを説明しよう。
まず元素魔法だが……、これは魔人種には使えない。人間種、獣人種、竜人種専用の魔法ともいえ、魔人種迫害の原因ともなった要因でもある。
魔人種、または魔物は身体の何処かにひとつはある特殊な臓器──魔臓に魔力を送り込み己の身一つで魔法──これには特に決まった名称はない──を発動する。
また魔臓に一番近い皮膚の上にはこれまた魔紋といわれる紋様が浮かぶのだが……、これは別に同じ種族であっても同じ場所に絶対ある、と言うわけではない。
例えば二人の魔人種──吸血鬼がいたとする。一人は右腕に捻れた十字架の紋様があれば、もう一人は左足に三角形の複雑な紋様があることだってある。
ただし粘塊種──いわゆるスライムは例外で、彼らは体そのものが魔臓であるので、魔紋は浮かんでない。
また、人間種や獣人種や竜人種──総じて亜人種のみが使う元素魔法は、魔力を『世界』そのものに捧げることで発動する。
その際、魔力をマナ、詠唱を供物と呼ぶのだが……人間種の間では未だに細かいプロセスが分かっていないらしい。
つまり、『魔力を使い、詠唱をすることで魔法が発動する』といった感じである。
では、固有魔法とは何なのか。
一言でかつ乱暴に言ってしまえば、それは『心臓に刻まれた魔法』である。
生まれた瞬間、いや、母体たる存在のなかで心臓ができた瞬間から偶然魔法陣の形に紋様が刻まれる──それが固有魔法。
故に固有。故に強力。
何故なら心臓という魔力を産み出す器官そのものに刻まれ、かつ既存では考えられない紋様となっているからである。
なぜ通常の魔法とは異なる魔法が生まれるのか?
そもそも魔方陣とは通常、面に描くもの。
稀に立体魔方陣などがあるが、そんなもの魔宝具、または神器の領域である。
しかし固有魔法とは、心臓の表面の模様が、張り巡らされた血管が、大きさが、様々な要素が複雑かつ繊細に絡み合って発動する、奇跡の魔法である。
後天的固有魔法とは、心臓に無理やり術式が完成するように自身の心臓に直接陣を刻むことで固有魔法を得ること、だが……当たり前ながら、成功率はほぼゼロであり、心臓から生まれる魔力の撹乱、または暴走で死ぬケースがほとんどだとか。
そう──例えるなら、偶然拾った宝くじが特賞の十億円だった、くらいの確率だと思えばいい。
そしてこれまでの説明でわかると思うが……魔人種でも固有魔法持ちは産まれるのである。
リリス姉さんもその一人だ。彼女の固有魔法は神域魔法。ある種の『結界』を自在に造りだし、そこに3つまでルール・特性を付与できる。
そしていましだかノルンが使ったのももちろん固有魔法である。
名前は天体魔法。
文字通り天体を操り、また造り出す魔法。
先程の夜の世界を造り出す魔法は『夜』。
ノルンを中心として最大半径十キロ、最小半径一キロの領域に球体状の『夜の世界』を造り出す。
これ単体では視界が悪くなるくらいしか効果がないが、問題は『夜』内でのみ使える魔法。
その一つが先程の『星』である。
高エネルギーを纏った手のひら大の星を降らせる魔法──それだけなら怖くはない。一発一発の威力はそれほど高くないのだから。
問題はその数、である。
そんな威力の星が幾百、幾千と一瞬の間もなく降り注ぐ。
弱いといっても、そこらの魔物なら一撃で風穴が空く威力。
そんな魔弾が降り注ぐのだ。
防御魔法を展開しても降り続ける魔弾にそう長く耐えられない。むしろ防御壁のせいで動けなくなり、回避すらできず魔力が途切れるそのときまで削られつづける。
数の暴力さまさまである。
さて、今回ノルンは最小範囲で『夜』を展開してたので僕は空中歩行術、瞬脚『天』で回避したが……、まぁ、こうなるよね。
五分ほど空中に留まり、降りてきた僕が見たのは見渡す限りの平原。
『星』はそこにいた一切を塵と化したのである。
そして自然破壊を終えたノルンは───
「すぅ………」
寝てやがりました。
…………え?後片付け、僕がするの?
─◇─
さて、久々の創造魔法で木々を戻したのはそれから十分後、すっかり気絶している…………と思ったら酸欠で失神というか仮死状態だった冒険者っぽい女の子を肩に引っ提げながら、さっき起きたノルンと街道を歩く。
この女の子、武器もないし他に持ってるものは小さなナイフとロープ、薬の入った小瓶しかなかったので背負ってきたのだが……。
背が高くて持ちづらいぜ☆
………いやいやまてまておちつけおちつけステイステーイ。
僕の身長は165㎝、まあ現代では低くない。
そしてノルンは155㎝。小柄である。
でもこの少女……、目測、170㎝強、だと……!?
……いやいやまてはやまるな。そう、この少女が特別背が高いだけかもしれない。いや、きっとそうさ!
この世界の平均身長は前世と変わりない、はず!
けして僕が小さいのではないのだ!
内心そんなことを思いながら歩くこと少し。
途中、野生の狼とか角のはえた兎とかが襲ってきたがまぁ弱すぎて。
殴るまでもなく手で払うだけで爆散した。
………これは力加減辛そうだなぁ……。
もしこんな感じで人を殴ったら……骨折ですめばいいなぁ…(遠い目)
あ、何か外壁っぽいのが見えてきた。
「レン」
「ん?どしたのノルン?」
「……あれ、町みたいだけど」
「そうだね。ま、結構近かったかな?」
いい場所に転移してくれたものである。
これで剣が降り下ろされるような場所にピンポイントじゃなかったらなぁ…。
「それで、だけど」
「?」
「……この格好で、入るの?町」
ふむふむ。この格好とな?
僕←フードつき黒ローブで全身真っ黒(気絶した少女つき)
ノルン←同じくフードつき黒ローブ。しかも持ち物なし。
ふむ、なるほど。
絶対無理ですねわかります!
まずいまずい。どうしよ?
とりあえここの少女に奈落魔法でさっきの記憶を消し、ついでに何か水が出る魔法具欲しがってたっぽいから創造魔法で性能いいの創って、武器もないから遊びで造った蛇腹剣あげよっと……。
そしてノルンに頼んで風の膜で少女をおおってもらって。
推定距離二キロメートル、目標、門番っぽい人の横30㎝右!
「どらっしゃぁぁぁぁぁ!!!!」
面倒事は投げ飛ばしちゃえ!
キュイイィィィィン!
僕がわりと全力で投げた少女はあっという間に星となった。
「さて、今のうちに空から侵入っか♪」
「レン………」
何やらノルンがジト目で見てくるが、僕だって女の子を投げ飛ばしたことに反省はしている。
しかし後悔はしていない!警備兵とかに捕まって面倒ごと起こすくらいならこっそり入ったほうが楽……いや、簡単だから!
……え?何で少女を連れていかず投げ飛ばしたかって?
いや、結構高めに飛ぶ予定だからたぶん耐えられないだろなー、って思ったから。
それに僕らの顔とか見られたし?人間種じゃないから説明とか大変だし。
謝礼がわりに武器(笑)と魔宝具あげたし。
「…はぁ……」
無表情でため息をこぼすノルン。
それでも僕の意図を察してくれたのか。
僕は足で、ノルンは『翼』で空に舞う。
さて、始めての妖精卿外の町だ。
楽しみだなぁ。
そう言えば、一月ほど前に連載から一年が経過してました。
半年は書いてなかったんだけど……。
因みにネタバレ?でもないのですが。
ノルンの『星』は
ランクDの魔物なら一撃で塵。
ランクCも塵。
ランクBで耐える個体が出てきて、
ランクAならほとんどが耐えて、
ランクSならほぼ無傷。
な威力。どこが弱いんだよ主人公ェ……。




