第22話 旅立ち
お久しぶりです。
学校が鬼畜のように忙しくて書く暇がありませんでした。活動報告でも書きましたが……。
では、第22話です、どうぞ。
「んん~」
朝か?でもまだねむい……
二度寝二度寝っと……
ふにっ。
ん?なんだこれ?
ふにふにっ。
「………あっ」
何か暖かいな……。ま、いっか……。
おやすみ……………。
─◇─
朝起きて抱いていた暖かいもののほうを見たら、ベッドの横に全裸の銀髪美少女が眠っていました。
ていうかノルンだ。
よく見てみるとベッドの周りに寝間着とおぼしき服が散乱していた。
……なんで暑がりなのに布団のなかに入ってくるんだろ。いや、今の気候は秋くらいだから裸じゃ寒くないのか?あ、同じ布団だったら体温で暖かいか。
そういや、こんなシチュエーションを誠兄さんは“sneg?”とか言ってたな。意味の分からんスペルの羅列だ。いや、ロリコン(←意味はよくわからないけど姉さんたち曰く変態の代名詞)な誠兄さんだから当たり前……なのか?
いや、そんなことはどうでもいい。
「ノルン、朝だよ」
ゆっさゆっさと揺らす。なかなか起きないノルンは強敵だ。
ゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさ。
三十秒ほど続けると、ついに起きた。
「…………(ぼ~っ……)」
ありゃりゃ、寝ぼけてるや。
「おはよう、ノルン」
「…………(コクッ)」
さて、最後の朝御飯を作ろうか。
…………いつかは帰ってくるけど、ね。
─◇─
「それじゃあレン、ノルン。外の世界での注意事項を言うわね」
ところかわって世界樹の前。僕とノルンはリリス姉さんとクリフィ姉さんの二人から説明を受けていた。
相変わらず真下からじゃてっぺんが見えないくらい高いです。
「まずひとつ。外の世界では“ゴールド”っていう通貨がいるわ。これを使って物を買ったりするの。
銅貨一枚で10G、銀貨一枚で1000G、金貨一枚で100000Gになってるわ。
だいたいパン一つで100G、銅貨10枚って所かしら。
どこの国もこの通貨を使ってるからその辺りは気にしなくても大丈夫よ」
ふむ、100G=100円って感じだな。百進法は分かりやすい。
しかし貨幣じゃなくてどこも硬貨なのか。財布が重くならないのか?
「ゴールドは物を売ったり、冒険者っていう職業になって依頼を達成したりして貰えるわ。用は魔物を狩ったりしてお金を稼ぐの」
ま、そんなところ。
魔物にだって僕らと同じくらいの知能を持つやつはいるにはいるけど、圧倒的に少ないからな……。
身近な人(?)にはコハクがいるか。
しかし冒険者か。それなら簡単にお金を稼げそうだ。
「それで、ここが大切。その冒険者なんだけど……」
しかし。
リリス姉さんがとんでもないことをいった。
「──あなたたちは絶対になっちゃいけないからね?」
…………………Why?
─◇─
「まぁ言ってしまうと、そのギルドのシステムに問題があるのよ」
「……?それは人間種だけとか、そういうこと?」
確かにそれなら納得がいく。彼らは魔人種を毛嫌いしてるからね。
ただ魔法の使い方が違うだけなのに……。
魔人種は人魔法──正確には元素魔法が使えないだけ。
けど固有魔法は、生まれたときから持っている先天性のものもあれば、特別な魔導書を使って後天的に覚えることだってできる。
それに、初めに反乱を起こしたのは────
「ちょーっと違うわね、レン。ギルドが差別しているんじゃなくて、認定試験そのものが私たちにとって不可能なのよ」
っと、今はリリス姉さんの言葉を聞かなくちゃ……。
「…………」
「ギルドの認定試験は、筆記じゃなくて、実技。
ま、魔物を狩る組織だから当たり前かしらね。そこで、ギルドに入るには試験官に実力を見せなきゃいけない。武力も、魔法も。」
なるほど、つまり……
「元素魔法を使えない魔人種は、絶対に入れない。だからあなたたちは絶対に冒険者になっちゃいけないの。あっ、でももし冒険者に絡まれても遠慮なんてしなくていいわよ。思いきり殴り飛ばしていいから」
「姉さん、僕らが思いきり殴ったら、その人はお星様になっちゃうんじゃないかなぁ……」
その前に紅い果実になりそうだけど。
「大丈夫よ~」
珍しい。クリフィ姉さんが荒事に同意するなんて!
それだけ外の人間は丈夫なのか。さすが異世界。頑丈ボディがデフォだとは。
「わかったクリフィ姉さん。もしそうなっても遠慮なく──」
「ええ~、遠慮なくお星様にしちゃいなさい~♪」
「やっぱり駄目じゃないか!」
「ふふふ~、あなたたちを汚そうとするゴミなんて消えてしまえばいいのよ~」
いかん。姉さんの目がマジだ。
それも本気とかいてマジと読む方の本気だ。
「ふふふふふふ~………この世の至宝を汚すやつなんて私が消し炭に……ふふふふふふふ…」
KOEEEEEEE!姉さんがっ、姉さんがトリップしている!
ああっ、風が、妖精卿に季節外れの嵐の前触れがぁぁぁ!
「姉さん戻ってきて!妖精卿が荒れる!」
「ふふふふふふふ…………あら?私は何を?」
「よかった、戻ってきてくれた……」
少し死を覚悟したよ。
流石は『妖精女王』と言いたいけど、暴走は勘弁して。
前の模擬戦で天変地異を起こしたのは記憶に新しいから。
「ええと……レン、ノルン?話を続けるわよ?」
「ごめんなさいリリス姉さん。続きお願い」
「…………」
「…………ノルン、寝てないで話聞く」
「(ポコッ)………痛い……」
しかし立ったまま寝るとはまた器用だなぁ、ノルンは。
「続けるわね。そんなわけであなたたちは冒険者になれないから、旅人か行商人ってことにして外の世界を見て回るといいわ。その途中で勇者にあったら監視して、大体の実力と能力を私たちに教えてくれたら、後は私たちがネリルに伝えておくから。」
ネリルか……。あの娘は背が伸びないよなぁ……。
ゾクッ!!
な、何だ!今脳裏に大斧振りかざした鬼が見えた!?
さ、流石は『直感』の魔王……。姿が見えないのに心の中の悪口を見抜くとは……。
「さて、と。そんなとこかしらね。じゃあ転送するわ。クリフィ、お願い」
「はい~、いくわね~。『心の鍵は世界を繋ぐ』」
ざわっ……
一つ、大きく世界樹が揺れる。
「『一の鍵はその肉体を』」
詠唱と共に世界樹から落ちてきた葉が赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の七色に輝くていく。
「『二の鍵はその魂を』」
そして僕とノルンの回りをぐるぐると廻りだし、ついには僕らをすっぽりと覆い隠す虹色のドームが出来上がった。
「レン!ノルン!外の世界は魔人種への差別が本当にひどいから、本当に信頼できる人間以外、絶対に正体をばらしちゃダメよ!」
ザワザワザワサワッと葉が擦れる音に紛れてリリス姉さんが叫んでいるのが辛うじて聞き取れた。
「レン」
「どうしたの、ノルン?」
葉の回転速度がどんどんと増すなか、ノルンが僕に囁いてくる。
「手、握って……」
「うん、わかった」
きゅっ、とノルンの小さな手を握る。その手はとても冷たく、そして震えていた。
ノルンは僕のように前世(?)の記憶がないから、僕以上に外の世界が怖くて、生まれて一度も離れたことがない妖精卿を離れるのがとてつもなく不安なんだろう。
けど。
「大丈夫だよ」
家族を安心させられなくて、何が男か。
僕が力をつける理由は、今も昔も変わらない。
「僕がいるから」
ただ、ただ愛しい妹たちのために──
僕は、力をつけたのだから。
「……ん♪」
きゅっ、と。
ノルンも僕の手を握り返してくる。
もうその手は、震えていなかった。
「『終の扉は二つを繋ぎ世界を渡る“クロス・リング”』」
そして僕らの視界は白い光に閉ざされ───
次の瞬間、僕たちの目の前に剣が迫ってきた。
さっそく命の危機だと!?
次回、第23話 『始まりは厄介事と共に』
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