番外編 卒業と妹とバイオ兵器④
番外編最終回。生チョコって美味しいですよね。
──────そして冒頭に至る。
「(ちょ、これどうすんだ!?こんなもん食ったら100パー死ぬぞ!?)」
「(黙りなさいこの変態!そんなことは分かっているわよ!ってなんであんたは咲夜を止められなかったのよ!?)」
「ふざけるな!あんな人も殺せそうな臭いの充満した地獄に逝けと!?」
「(・・・真くんと栞さんも逝ってしまいましたしね……。しかし、どうしたらこんな色になるのでしょうか?)」
「(姉さんも兄さんも落ち着いて!ここは何とかして切りぬけないとヤバイんだよ!?主に僕たちの命が!)」
笑顔を浮かべながらも裏でアイコンタクトを行う。
いや、マジでこれは命の危機だよ!?
「あっ!」
咲夜が急に声をあげる。ビクッ!と反応してしまう僕ら。
「ごめんねっ!焼き鮭にかける特製ソース忘れちゃった!」
………何………………だと…………
「あは、あはは……は……」←僕
「…………。(ダラダラダラダラ)」←千雨姉さん
「・・・。(カタカタカタカタ)」←静音姉さん
「……………。(ガクガクブルブル)」←誠兄さん
「取ってくるからちょっと待っててねっ!」
そういって咲夜はパタパタとスリッパを鳴らしながらキッチンの方へ歩いていった。
完全にリビングから消えたのを確認して僕らは笑顔を消し変わりに恐怖で彩りながら話し合う。
次に咲夜が戻ってきてただでさえヤバいこの焼き鮭(?)に“特製”ソースをかけてしまったら……
断言できる。軽く死ねる、と。
さようなら人生、こんにちは地獄。
それだけは絶対に回避しなくては…………っ!
「咲夜には悪ぃがさっさと捨てるぞ!命がいくつあっても足りない!」
「甘いわ、それは生チョコよりも甘い考えだわ誠!」
「・・・そうです。そんな考え、あまっちょろすぎて吐き気がします」
「なんだとっ!」
いや、誠兄さんよ。それだけはマジでやっちゃいけないからね?
だって…………
「ここで何とか咲夜を不満にさせてしまったら………「次はもっとしっかりしないとっ!」という感じでよりヤバい料理が出てくるに決まっているわ!」
バァァァァン!!と効果音がなりそうな感じで言い切る千雨姉さん。もちろんそれだけが理由なんじゃあない。
「・・・逆に何とかして満足させてしまったら「次も私がつくってあげるねっ」となりかねません。誠さん、これはそんな簡単に終わる問題じゃありません。どっちに転んでもデッドエンドな、チップが私たちの命な選択のですよ?」
「ッ!!」
「取り合えず現状を打破するにはこれを一口でも食べな……きゃ………?」
あれ?
「焼き鮭(?)がないッ!」
「「「ええッ!!?」」」
見ると、僕たちの皿から焼き鮭(?)が消えていた。何故にっ!?
しかしその疑問はすぐに解消される。
「うごわあわあわ!!?モガッ、モガガッ!」
「兄さん?」
「変態神・誠!?」
「誠さんっ!?」
突如奇声をあげだした誠兄さんの方を見やる。何か千雨姉さんの悪口が酷くなってたけど気にしない。だって事実だもの。
そこには口にさっきの焼き鮭(?)をくわえた誠兄さんの姿が………
…───!いやっあれはまさかっ!?
焼き鮭(?)が足(?)を器用に使って自ら口に入っていっている……だと……!!
「モガガッ、モガ────!!!!!!????」
ズルズルッ、ゴクンッ!
完全に口のなかに入った焼き鮭(?)がそのまま喉を通っていっているのが見えた。……ぐろっ。
するとその時!
「ウガッ!ゲホッゲホッ!……グギャァァァァ!!」
倒れたと思ったら何やらビクンビクンッ!と痙攣しながら床でのたうち回る誠兄さん。
「…………………………。」
「…………に、兄さん?」
「…………………ヴぅ」
!!?
「ヴァァァァァァッ!ゴギュダゲャクヂゲギャァ!!!!!!!」
唸りだしたと思ったら急に飛びかかってきた!ヤバい、この体勢じゃかわせない!
……いや兄さんぶっ飛ばしたら行けるか。
「真滅奥義────」
ってちょーーーっと待ったーーーーーー!なに姉さん奥義使おうとしてるの!?
しかもよく見たら静音姉さんも懐に手入れてるし!絶対に暗器出そうとしてるよね!
ヤバい、僕が何とかしなきゃ!じゃないと誠兄さんが死ぬ!
「ええいままよ!真滅三式、波紋掌『撃』!」
僕は飛びかかってきた誠兄さんの頭にそっと掌を添えて……
直後、ドガァァァァァァン!!!!!という音とともに壁に叩きつけられていく誠兄さん。
真滅三式、波紋掌『撃』は一手で百の打撃を“撃”ちだす技。
今回はそっとさわった程度の打撃を一秒間に百のペースで打ち出したからこれくらいで済んだ。
本来なら潰れた完熟トマトが出来上がっているはずだ……。
「──姉さん、気をつけて!あれはどこから僕たちめがけて来るか分からない!ここは一旦部屋を出て──!?」
そこで気づく。
────足が動かない!?
慌てて足元を見やると先が五叉に分かれた白い何かが──ってこれは!
テーブルの上に視線を戻す。やはり、と言うべきか。味噌汁(?)から白い何かが僕たちの足元まで伸びていて、絡み付いていた。
見れば、千雨姉さんや静音姉さんも同じように足をとられていた。
「何これ!?『漣』でも壊れない!?」
「・・・粒子ブレードでも切れません」
物体を粒子レベルで崩す『漣』と粒子レベルで切り裂く粒子ブレードでも切れないの!?
──ペタッ
僕たちの動きが止まる。
これは間違いないっ──!これはあの鮭もどきの近づく足音──!
──ペタッペタッ
どこだ、どこからくる!?
撃退の構えをとる僕たち。
僕と千雨姉さんは奥義の構えを。(え?何こんなことで奥義使ってんのかって?はっ、命の危機に使わずにいつ使うんだよ!)
静音姉さんはもう一振り粒子ブレード(小太刀ver.)を構える。
──ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ──────
いや何のホラー映画だよ!!
これだけ足音が近づいているのに全然姿が見えない焼き鮭X。
────ペタッ。ポタッポタッ────
頬に何か冷たいものがかかった。
ああ、わかってしまった。
僕たちはゆっくりと上を──天井を見やる。
そこには器用に張り付いた橙の暗殺者が三体。
ああ、そこにいたのね。
そして橙の暗殺者たちは降下する。僕たちの口めがけて──────────
───────それからの事は何一つ覚えていない。分かったことと言えば、その日以降咲夜は度々料理を作るようになってしまったことと。
あのあと帰ってきた武志兄さんや目覚めた双葉兄妹によって介抱された僕らが目覚めたのはその日から一週間たってからだったことぐらいだろう……。
余談だが、四人とも峠を越えるか越えないかの境を行き来していたらしい……。
咲夜の料理の殺傷能力は世界一ィィィィィィィィ!!!!!
でした。いやマジで。
これで『レイニー』の全メンバーの名前がでました!
メンバーは
紅坂千雨
森一静音
天宮誠
剛馬武志
篠塚蓮斗
篠塚咲夜
双葉真一
双葉栞
の8人です。そう、人間のメンバーは……(ニヤリ)
そのうち登場人物紹介でもつくってその時に詳しく説明しようかと思っています。
さて、次回からはお待ちかね(?)の第2章!
人の国から離れたレンはいったいどうなったのか!
色々飛ばして1章の12年後くらいから始まります!
乞うご期待!不定期ですが!
4/18 神滅→真滅に修正




