第2話 状況把握
やあ!まさかの学校前で轢かれて逝ってしまった僕で~す♪
……あ、名前教えるの忘れてた。
僕の名前は篠塚蓮斗。ただのしがない学生だったさ!
……え?ただの学生はヤ〇ザの所に忍び込んだりしないって?
まあそこは大切な人生経験ってことで、ひとつ。
いや~、あのときは焦ったなぁ~。何せお金を頂戴した後ベルの音がなったと思ったらドスとか拳銃とかで武装したイカついスキンヘッドのおじさん逹に囲まれたからね。
日本には銃刀法って法律があるのを覚えてないなんてねぇ……。
ちょっと危なかったから適当に蹴り飛ばしと動揺させた後頭っぽいこれまた真っ黒な服を着たデブのおっさんを人質にして逃げたぜ!
ついでに財布を川に投げ捨ててやった。だって見た目豪華なくせに中身入ってなかったんだもん。
詐欺だ詐欺!訴えてやる!
─────現実逃避、終了。
さて、と…………。
この人たち、誰だ?
そう、僕はどこかに寝かされていて、たくさんの大人逹に囲まれか顔を覗きこまれていた。
「─────。─────!」
……?何か嬉しそうだな?てか何て言っているのだろう?
そう思って手を動かそうとしてみたのだが…。ん?
手、ちっちゃ!
え?何で?慌てる僕。
すると大人逹も慌てはじめる。。僕が泣こうとしていると思ったのかな?
そのままでいると女の人が何かを呟く。
するとパキパキパキッ、と凍る音が響いたと思ったら氷の鏡が現れた。
…………いや、もしかするとこれは………魔法?
しかし僕の疑問は一瞬で消え去った。
その鏡に写っていたのは──
黒髪黒目の僕、篠塚蓮斗ではなく──
小さな銀髪の赤ん坊だった。
………………なんだとおおおおおおぉぉぉぉ!!??
コテンッ
─○─
Side セイラ
「奥様、無事に生まれました。元気な男の子ですよ。」
私──セイラ・エルニアートは生まれたばかりのわが子の顔を覗いていた。
雪のように白いその肌は、女の子ではないのかと思うくらいきれいで──
この子の何よりの特徴は、その髪だろう。
私の髪は銀色だ。よく皆が羨ましがる。
対して夫の髪はくすんだ赤。
でもこの子は──澄んだ水よりも輝きをもつその髪は──とても綺麗な紫銀の色をしている。
銀の色合いが強いそれは、淡い紫の色がかかっていてどこか幻想的な雰囲気を醸し出していて、まるで天使の様だ
「この子が……。私とあの人の──!」
と、ここで我が子が目を開いた。その瞳は紫水晶のように深い紫色。
キョロキョロと目を私達──医者やメイド、そして私に向けると、うるうると眼が潤んできた。
泣いちゃダメだ!私は慌てて氷属性の魔法を使ってあやそうと試みる。
「氷の鏡よ、今ここに現れたまえ『アイスミラー』」
そしてパキパキと音をたてて私とこの子の前に氷の鏡が現れる。
我が子はそれをじっと見つめると──コテンと眠ってしまった。
すやすやと眠りはじめる。
その顔はとても愛らしくて──
「……奥様、この子の名前は何というのですか?」
メイドの一人が私に聞いてくる。そんなものは決まっている。この子が産まれる前から、夫と共に決めていたのだ。
「この子の名前はリュカ。リュカ・エルニアート。あの人と私の、初めての子供────」
ああ、どうしよう。頬の緩みが止まらない。
何で可愛いのだろう。
何て愛らしいのだろう。
「リュカ。今日からあなたは、私の子供。ずっと一緒にいようね。ずーっと…。」
私は、
今までの人生で最大の笑顔を、
愛するわが子に贈った。