番外編 卒業と妹とバイオ兵器②
番外編その2です。まだ番外編は続きます。
僕たちの昼食は、『ペスタロッテ』という洋食店でとることにした。
ここは裏通りにあるひっそりとした店であるが、味は奥が深く、女性客に人気の、いわゆる隠れ料亭というやつだ。
テーブル席に座った僕たちは、さっそくメニューを見る。
ちなみに並びは、窓側の僕の隣に桃華で、向かった正面に五行さん、そのとなりに八塚となっている。
……僕のとなりはじゃんけんで決められたのだが、凄く壮絶だった。
最後は見ての通り桃華が勝ったのだが、それまでに何回あいこになったと思う?
49回ですよ、奥さん!
……とまあ、こんな感じだ。さっきから「えへへ~」とさりげなく腕を絡ましてくるし(いや別に構わないんだけど当たってるからその辺もっと気を付けてほしい……)、それを見た五行さんは黒いオーラを出しながらメニューをへし折る勢いだ。
心なしか京也の目が涙目だし……。
「お、俺はこれにしよっと」
京也が指したのは、チーズがたっぷりかけられたハンバーグ定食だった。
「じゃあ私はこれに」
五行さんはリゾットを。
ん~、僕は何にしようか……うん、決めた。
「じゃ、僕はこれに」
僕が選んだのはペベロンチーノというパスタの一種だ。これはあっさりしててとても美味しい。
「桃華はこれにします!」
最後に桃華が選んだのはパエリヤだ。
すぐに店員をよんでメニューを伝える。さて、この待ち時間がとても暇だなぁ……。
「そういや蓮斗。お前確か白鴎学院に入るんだったよな?」
「うん、そうだよ」
「先輩!?白鴎学院って確か誰も浪人せず大学に進学できるって噂の超名門校じゃないですか!?どどどどうしましょう!これじゃ桃華、先輩と一緒に大学生活がエンジョイできません!」
白鴎学院っていうのは某大学に進学してる人が全国一という鬼畜教育で有名な高校だ。
もっとも、鬼畜なのは学業の面だけで、その他は
とても充実してるらしい。
……え?何で僕がそんなとこに受かれたかって?
はっはっはっ。なぜならそれは……
特待生だからね!(ドヤァ)
ふっ、ちょっと、ほんのちょっとだけ僕の開発グッズを見せたら土下座してまで頼まれてしまった…。
いやほんとのこというと普通に受験したんだけど面接で試験官の人が僕の持ってた“痴漢撃退グッズNo.14 10万ボルトスタンストラップ”を見てそうなっちゃったんだ……。
これ作ったの五歳の頃だったっけなぁ……。ああ、懐かしい。
たまに変なおじさんにどっか連れてかれそうになってたころに作った“痴漢撃退シリーズ”の一つだ。
ちなみに他のNo.1~No.36はちっさい子達にプレゼントしてあげた。
まさか男の僕がそんなものの世話になるなんて……ぐすん。
閑話休題。
「私も白鴎学院だぞ、姫路」
ここで五行さんがカミングアウト。うん、五行さんって頭も凄くいいもんね。確か全国四位だったっけな?
って待てよ。となると五行さんって完璧じゃないか?そりゃモテるか。
「そ、そんなぁ……。先輩が、蓮斗先輩が五行先輩に寝とられちゃう……」
「いやそもそも僕誰とも付き合ってないからね!?」
いきなり何をいうのだ、この子は。
「お待たせしました。こちらチーズかけハンバーグ定食とリゾット、ペベロンチーノとパエリヤとなります。大変お熱くなっておりますのでお気をつけください」
「「「「あ、どうも」」」」
ここで店員が頼んだのを運んできた。
とりあえずご飯にしよう。
「……俺、完全忘れられてないか……」
途中から完全空気だった京也であった。
ドンマイ!
─◇─
「んふぁいんふぁい、ほれふまふぎふぁろ」
「京也、ちゃんと食べ終わってからしゃべりなよ。行儀悪い」
「でも篠塚。これ、ほんとに美味しいな。どうしてこんな店を知ってたんだ?」
「もきゅもきゅもきゅもきゅ」
みんな、それぞれ頼んだのを美味しそうに食べている。紹介しただけあって美味しそうに食べてくれるのは嬉しい。
「うん、だってここのシェフは僕の師匠だからね」
「「「……えっ?」」」
「ん?おいボウズ、誰かと思ったらお前か!久々だなぁ!」
丁度厨房から顔を出した一人の難いのいいコックが僕たちの席の方に近づいてきた。
いわずもがな師匠だ。
「お前が咲夜ちゃんや千雨さん以外をつれてくるなんざはじめてじゃねぇか?」
「ああ師匠。この人たちは僕の学校の部活仲間で……」
「ども、八塚京也です」
「私は五行楓です」
「わたしは姫路桃華です!」
「ガッハッハッ!元気いいねぇ嬢ちゃんたち!この時期ってことは卒業祝か?」
「そうですよ師匠」
「ならいい!今日は俺の奢りだ!好きなだけ食ってけよ!」
そういって師匠はキッチンの方へと戻っていった。
「……なんか、凄い豪快な人だったな…」
「凄い覇気だった。まるで歴戦の戦士みたいだ……」
「いい人だったね~。でも、何で名前言わなかったのかな?」
「ああ、師匠はあんまり名前を言いたくないらしいんだ。僕も知らないしね。だから師匠ってよんでる」
師匠とのであいは──(以下略。続きはいつかの番外編で)
そのあとデザートを食べるとき、何故か「あーん」大会が開かれたりしたんだが……それはまあ、語るところではないだろう
そして最後に、終始京也が空気だったことをここに記しておく……
─◇─
「お、お兄ちゃんが寝とられた……」
とある一軒家で、ケータイを見ながらわなわなと震える少女がいた。
「……よし!私は負けない!お兄ちゃんに……えへへ~」
ふにゃけた顔で妄想しながら、彼女は何かを決意した彼女は、まずは本屋であるものを買うため、いそいそと着替えを始めた。
悲劇の種が、生まれようとしているのだが、幸か不幸か、それに気付けたのは誰もいなかった……
テレッテッテレ~~
桜餅 は レベル が あがった!
年齢が 1 ふえた!
学力 が 1あがった!
力 が 0 あがった!
防御 が 0 あがった!
素早さ が 3 あがった!
0ゴールド を てにいれた!
称号 『桜餅は食べられない』を てにいれた!
……ぶっちゃけいっちゃえば、ただの誕生日です。




