第17話 始まりを告げるエピローグ
第1章エピローグ。
「──むかしむかし、この世界──リヴァイスはとてもとても平和でした」
綺麗な満月が森を照らしている。その中にぽつんと建っている一軒家で、声は響く。
「リヴァイスには、3つの種族が仲良く暮らしていました。それは人間族と動物の特徴をもった獣人族、そして竜の特徴をもった竜人族です。」
声は続く。その声の主──足まで伸びた黄金色の髪を伸ばし、ピンと横に長く伸びた耳をもった美しい女性はベッドで眠っている聞き手である少女に語り続ける。
「彼らは協力して襲ってくる魔物を追い払いながら幸せに暮らしていました。」
彼女が少女に語っているのは、この世界ではありふれた物語。
「しかしあるとき、まだ彼らが足を踏み入れてないところ──私たちが魔大陸と呼ぶところから、魔物の特徴をもったおぞましいものが襲ってきました。」
「それは魔族と呼ばれ、彼らは魔王の指示にしたがって人々を殺していきます。」
女性が持っている、少女に語っている物語はこの大陸──3種族の住むエリュシオン大陸で親が子供に読み聞かせる昔語り。
「そんなとき、一人の少年が立ち上がりました。
彼は、一人の青年と二人の少女を引き連れ、現れる魔族を倒しながら、ついに魔王のところまでたどり着きます。」
それは一人の勇者と三人の仲間の物語。
「魔王はとてもとても凶悪でした。指の一振りで天を裂き、歩くだけで大地を割りました。
そんな魔王に、勇者たちは追い詰められ、ついに魔族の群れに囲まれてしまいました。
勇者たちは諦めませんでした。必ず、魔王を討ち、人々に平和をもたらすために。」
「その時、奇跡が起こったのです。突然彼らを優しい白い光が包み込みます。」
「神様は彼らを見捨てなかったのです。この世界に平和をもたらすため、神様は傷付いた勇者たちの傷を癒し、彼らに自分の力を与えました。
盾を持ち、皆を守り続けていた青年に、神様は『絶対に壊れない』不滅の盾を、
弓を持ち、皆を後ろから助けていた少女には『絶対に命中する』不可避の弓を、
杖を持ち、皆の傷を癒続けた、勇者の幼馴染みである心優しい少女に『全てを癒す』治癒の杖を、
そして世界を平和へと導こうと剣をふる勇者には、『全てを切り裂く』絶対の剣を授けました。
神様の力を授けられた勇者たちは反撃に出ます。魔族たちも応戦しますが、もはや勝負になりません。
全ての魔族は青年の持つ不滅の盾を貫くことができませんでした。
魔族たちの眉間には、少女のもった弓から放たれた矢がささっていきます。
運良く彼らを傷つけても、勇者の幼馴染みたる少女の持つ杖から放たれる癒しの力で勇者たちの傷はあっといぅに消えていきます。
そして全ての魔族は倒され、残るは魔王だけとなりました。
魔王は同族を殺した勇者たちを殺そうとしてきます。
魔王は凶悪でした。勇者たちは何度も何度も吹き飛ばされ、傷を負い続けます。
そして三日三晩彼らは戦い続け、ついに勇者の剣が魔王の心臓に突き立てられました。
虚空に魔王は砂のように消えていきます。しかし、魔王はただでは滅ぼされませんでした。
この世界から二度と自分達をほふったもの──つまり勇者がこの世界から産まれないように呪いをかけたのです。
勇者たちは魔王を討ち倒したことで英雄となりました。
それからというもの、魔王が現れるたび、私たちは異界から『勇者』たる人物を招き、彼らを慕い、助けることで魔王を討ち、この世界は平和に包まれているのです……」
パタン。
女性はそこで本を閉じる。既にベッドの中の少女はすやすやと眠っていた。
「──おやすみ。私の可愛いノルン。」
彼女は少女──ノルンに柔らかい笑みを浮かべ、さて寝ようかと椅子から腰をあげ──
「クリフィ!起きてるなら早く来て!」
突如、バァン!という音と共に玄関の扉が吹っ飛び、これまた金髪の美女が入ってきた。
吹き飛ばされた扉が彼女にぶつかる──寸前、扉は床へと叩きつけられた。
彼女──クリフィーシャは突然真夜中に入ってきた珍入者を一瞥すると、
「…………………どちら様で?」
すると珍入者は声を張り上げて叫ぶ。
「私はリリスよ!ドジクリフィ!!」
「嘘言わないで。私の知っているリリスは万年幼女の魔王さまで、あなたみたいな少女じゃないわ。」
「だ・か・ら!その万年幼女の魔王さまよ!妖精女王・クリフィーシャ!!」
「!!なるほど、わかったわ。それならなんで貴女、成長してるの?不老不死の幼女さま?」
「今なんて副音声で魔王って言った!──ってそれどころじゃないわ。早くこの子を診て!!」
珍入者──魔王リリスは腕の中の少年をクリフィーシャに優しく渡す。
彼の首筋についた──まるで噛みつかれたかのような小さな二つの傷をみて、クリフィは眉を潜める。
「リリス、あなた、こんな小さな子を『眷属化』させるなんてなに考えてるの!?」
しかし、リリスは困惑した顔で首を横に振った。
「仕方ないわ。だって、『クルタナの呪剣』の呪いをかけられたのよ?……こうするしか、なかった。」
「確かにあなたの、『吸血姫』の血を与えたら、不老不死の力を得る……。でも、だからって、こんな小さな子を……。」
「それだけじゃないわ。この子の血を少し吸ってしまったのだけど、結果がコレよ。」
自分をつん、つん、とつつきながら続ける。
「それにこの子は、たぶんだけど……」
「あなたやノルンと同類、ってわけ?」
「…………………どうしてわかったの?」
「何となく、よ。まあ、わかったわ。この子は妖精女王の名に懸けて絶対に死なせない。」
「お願い。この子の血が何かの加護を持ってるなら、私の加護と混ざってどうなってしまうかわからないから……。」
「それで……この子、これからどうするつもり?もう人の世界に居場所は無くなってしまったのよね?」
「大丈夫。私、真祖『吸血姫』の名に懸けて──私が立派に育て上げる。」
「あらあら、それならわたしも一緒に育てましょうか♪」
「なっ……!」
「ふふ、あなた、子育てなんてしたことないでしょう?」
「うぐっ!」
「決まりね。それで、本命はどうしたの?」
「あ、それ?すっかり忘れてたわ。──やっぱり、人間は勇者召喚を決行するみたい。」
「………それは、いつ頃かわかる?」
「星の並びから考えて……十年後くらいに。」
「そう……。」
「ま、先は長いわ。面倒なことは今代の魔王に任せるわよ。それより今は……」
「ええ、そうね。この子の名前はどうする?もう無くなっちゃったんでしょ?」
「もう決めてあるわ。人間は誰も彼の名前を覚えてない……。でも、私はもう、新しい彼の名を決めたわ。」
「何て名前にしたの?」
「ええ、この子は、この子の新しい名前は──────」
──────レン。レン・ニンフェア。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
この『紫銀』をかきはじめて早3ヶ月と少し。
ここまで作者の心が折れなかったのは皆様のお陰です。
さて、予告通り次回に番外編をいれ、第2章にいれようかと思っております。
まだまだ続けたいと思ってますので不定期ですがこれからも『紫銀』をよろしくお願いします!
4/19 エスト→ノルン に訂正。
まさかメインヒロインの名前を間違えてしまうなんて……orz




