第10話 リュカの魔法
お久しぶりで。
今回短め。この連休中にもう一話書こうと思ってます。
Side リュカ・エルニアート
……逃がすかッ……!
僕、リュカ・エルニアートは王女をさらった誘拐犯を空から追っていた。
自分に透明化をかけているので、気づかれていないはず……
王女を拐った張本人たる男の追跡から数十分。まだ男は民家の屋根の上を走っていた。
しかし驚くことに、
「………早い。」
ポツリ、と思わず言葉をこぼす。未だに男に奇襲をかけれないのは双翼が決して遅いわけではなかった。
男が速すぎるのである。
恐らくかなり強力な風元素使いなのだろう。
そのまま追い続けることさらに数十分。
男はやがて大きな豪邸の敷地内へと入っていった。
「………………。」
とりあえず門から見えないところに降りた僕は双翼を解く。
翼は羽となって虚空へと消えていった。
「さて、どうやって潜入するか……。」
「──厄介ですね。魔法を使っては行けませんよ。」
急に横から声をかけられた。
「うおお!?ビックリしたぁ……。」
いつの間にか隣にリリスがいた。おかしいな、さっきまで気配すらなかったのに……。
自慢ではないが、気配にはかなり敏感な方だ。と、言うか、そうならなければいけなかった、といった方が正しいのかな?
昔、真滅流の修行として富士の樹海(?)見たいな所に1ヶ月放り込まれたことがあったからだ。
しかも日本にいない狼や熊、果てにはアナ○ンダもびっくりの大蛇がいた。
しかも持ち物は無し。着の身着のままの状態で、だ。
何故そんな目になってたかって?簡単だ。
寝てる間に放り込まれたから。
……あのとき後5秒起きるのが遅かったら、今頃狼の餌になってたかも。
…………いやぁ、いい思い出だな。あれは。
あのとき食べた熊鍋や蒲焼きは美味かったなあ……。
狼の肉って、意外にいけるのね。癖のある味だったな。
あれは塩でなくタレならもっと美味かったかも……
………おっと、話題がそれた。まあ何故ついてきたとかどうやって此処が分かったとかどんな魔法で来たとか色々リリスに言いたいことがあるが、置いておこう。
それよりも────
「魔法が、使えない……ってことか?」
「いいえ、どうやら魔力に反応する魔具があちこちにあるみたいだわ。少しでも侵入者が魔法を使えば、館にいる要人は何処か遠くの隠れ家……?、に転送されてしまうわ。…………拐ってきた子供たちもろとも、ね。」
ピクン、と眉が跳ね上がったのが自分でもわかった。
「…………どこの世界にも外道はいる、か……。」
「………?何か言った?」
「いや、ただの独り言だ。さて、僕一人でいくけどどうする?リリスは?」
するとリリスは少し顔を赤くしながら答える。
「ほんとは騎士隊に伝えるべきだと思うけれど……。私もああいう連中は大嫌い。虫にも劣る。いいえ、明日を今を生きるために死闘を演じる虫たちの方が立派。よって虫│未満よ。もし助けにいくなら、私もいくわ。…………本当はリュカちゃんと一緒にいたいだけだけど…。」
「…………?ごめん、最後のとこ聞き取れなかった。何て言ったの?」
な、何でもないわ、と答えるリリス。人のこといえた義理じゃないけど貴女も相当幼児とは思えない。
ま、いっか。さて、と。ちょっとこの髪の色は目立つから黒に変えよっか。
ということで魔法で色を変える。
顔でわからないとは思えないけれどと……一応、仮面をつけてこう。
僕はおもむろにドレスから仮面を取り出す。顔全体を覆うタイプだ。色は漆黒。
「それで?魔法なくしてどうやって王女様を助け出すの?」
興味深そうに問いかけてくる。
ん~、と。
「魔法が感知されるってことは、魔具も同じ?」
するとリリスは目を閉じた。周りを何かの結界が覆った。
「いいえ。魔具は反応しないみたい。どうやら警備が持ってる魔具で誤作動が起きないようになってるみたいよだわ。」
それを聞いて僕は安心した。
いける、と。
「リリスさん。今からやること、そして僕がすることは、絶対に誰にも言わないでね♪」
「──え?」
さて、と。いきますか。
何せ今からするのは本にも神話にも載っていなかたった魔法。
そして思い浮かべるのは前世で家族の一人が使っていた装備。
僕が作って、彼女にあげた、一つの隠密用武装。
「さぁ、今ここに創ろう────『物質創造』《幻装ヤタガラス》」