失温
僕の手の中で温もりが消えていく
ユックリと確実に・・・
僕が始めて知る人の死
簡単で呆気なく如何する事もできない現象であると・・・
知りたくなかった事を思い知った
僕は声が枯れるほどに彼女の名前を叫ぶ
彼女が死ぬと言う事よりも・・・
『独りにされる』そう想ってしまった・・・最低だ
なんて・・・顔してるのよ
僕の不安を見透かしたように
彼女は僕の頬を冷たくなった震える掌で撫ぜた
灰かに微笑を浮かべながら
本当に我儘なんだから
僕の頬を撫ぜながら・・・
彼女の瞳から一滴零れ落ちる涙
あは・・・
僕は彼女の身体を抱きしめた
言葉なんて出るはずがない
だから温もりが消えてしまわない様に強く
強く抱きしめた・・・何処にも行くなと
ねえ、私の分まで長生きしてね・・・
灰かに微笑を浮かべ彼女はそう言った
僕は頷く事しかできなかった
約束よ・・・破ったら許さないから
あぁ・・・死神が来たって死んでやるもんか
僕は守りたくもない約束をした
涙が溢れ出て止まらなかった
絶対なんだからね・・・きっとよ
そう言って彼女は・・・冷たく震える指先でそっと僕の涙を拭った
私の分まで生きてね
何時も傍にいるわ
だから…生きてね
約束よ、絶対なんだからね・・・
彼女は瞳を閉じた
僕を何時も優しく見詰めていた
彼女の瞳はもう・・・開く事は無かった
その綺麗な瞳が開かれる事は・も・う・ 無い
悲しみに消されそうだ
この心と体・・儚い思いが届かないもう二度と
叫んでても・・・・想い狂っても届かない
僕はこの日・・・・ 温もりを失った
読んでくれてありがとう