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アイ-リストライク  作者: メイイシ
ラエー少年時代
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1/1

ぽわんぽわんラエ君

西暦、2100年。それは「言語と植物と鉄球」によって世界が動いていた。

それは、大人ももちろん子供だって一人に数球【魔鉄球(デバイスボール)】を持つ。腕の機械から花のプログラム、【植物学名コード】を入れることで鉄球に炎を纏わせたり、電気を起こしたりするのが、当たり前の世界になっていた。

 これはそんな世界の一人の男の子の話だ。



「うーん、ラエ君の鉄球に登録されたのは……【学名コード"イリス・サンギネア】。アヤメの魔法だね」


町の優しいお医者さんが、6歳の僕の頭を心地良く撫でてながら、ホログラムの画面を僕に見せてくれた。

 僕の鉄球はみんなのように爆発させたり、超高速のレーダーを打ったりすることはできないけれど、鉄球のまわりの空間を「ぐにゃっ」と、曲げて光を虹色にキラキラ光る少し変わったコードだった。


「攻撃は出来ないけど、とっても綺麗で、ラエ君にはぴったりな優しいコードだよ」

「うん!ありがと、ディオせんせ!」

 * * *

その日の夕方、ラエは家でお父さんが書庫をあさっているとこを見た。


「おとうさんー、何してるの?」


 ラエの父、リロス・モルセナはゴソゴソと棚を漁っていた腰を上げてラエの方に振り返った。


「100年も前に流行っていたスポーツというものがあってねぇ。その文献探してたんだ」

「すぽーつって何?」

「うーん、体をうごかしながら、たのしく運動したりときには競いあったりするいやみんなが本気になれるものだねぇ」


 そんな説明を聞き流してラエは自分の好奇心だけ働かせてリロスに質問詰めにする。


「競うってぇ?」

「運動ってー?」

「本気ってぇ?」


 そんなキラキラ光ってる瞳のラエをリロスは和やかな顔で見つめながらこう語りかける。


「はは、そんなに一気に聞かれると困っちゃうなぁ。……そうだなぁ、今の僕らの世界って魔鉄球をただ単にぶつけ合うだけでしょう?昔のスポーツは少し違ったんだ。…………教えてほしいかい?」


 そこまで聞いて、ラエは質問をやめコクンと小さく頷いた。リロスがが優しい笑顔のまま、手元にあった古びた長方形の端末をぼんと、叩く。

その瞬間、長方形の端末に光が宿り、緑色の画面に切り替わり、画面が動き始めた。


「ほら、見てごらん。これはね、(庭球(テニス))というスポーツの映像だよ。ただの、魔鉄球の戦いとはちょっと違うだろう?」


 リロスが示す動画をラエは瞬きも忘れてじっとそれを見つめていた。

(す、すごい。ボールが変な方向に曲がってるぅ!!

………こ、こんどは手前に落ちたぁぁ!!??魔鉄球じゃあんな動き絶対ないのに、、、、)


「すごいだろぅ、これが100年にあるなんてなぁ。あれはな、あ……ちょっと説明が難しいねぇ。あの画面の人が持っているのはラケットなんだよ」


 リロスは困った顔をして首を手でポリポリと掻いた。

画面の人たちが持っているのは、棒に不思議なあみあみがついた物だった。


「今の魔鉄球の戦いは、デバイスの磁力でまっすぐ飛ばすだろう?でも、昔の人はあの、ラケットという道具の網の目で緑色のボールに引っかかる時の摩擦でな………あぁ、、そうだなぁ」


専門な知識を6歳児にどう伝えるかを迷い、リロスは言葉に詰まってしまった。

だが、ラエにはそれが、とても単純で、簡単な仕組み

にみえた。


(そうだ。ラケットの中のまわるい網の目でなめらかに「こする」から、あんな不思議な動きになるんだ。てことはぐるぐる回せばいいんだよね?)


専門的な知識がわからないラエでも、頭の中では自分の「植物学名コード」と画面の中の球が、ぽわんと結びついていた。


(だったら、わざわざ道具を使わなくても。僕の魔法で、この丸い球のまわりの空気をふにゃりと曲げて、なめらかにぐるぐるってこするように回せば……あんな風に曲がるんじゃないかな?)


「お父さんちょっと魔術球つかってもいい?」

「いいけど、何をするんだいぃ?」


その言葉を聞いたラエは自分のポケットからさっき貰ったばっかの魔鉄球を取り出して、元気いっぱいに宣言した。

「……てにすぅやるーーー!!!!」

「ぅん、え?」

ラエはお父さんの反応を待つことも待ちきれないといった様子で、手のひらに載せた魔鉄球をじっと見つめる。


(よし……画面の中の人みたいに、このまあるい球の横側を、僕のコードででなめらかに「こする」イメージ……!)


 ラエは自分の『空間をふにゃりと曲げる魔法』を、手の中にある3つの真黒の魔鉄球にイメージした。


(使用方法はもうディア先生に教えてもらってる。自分のコードの後にあの言葉を………よし、いける)


「イリス・サンギネア!!――開花(エフローレ)   ぼくのコードおねがい!!」


ラエが優しく唱えた瞬間、三つの魔鉄球の周りからキラキラと神々しい虹色の光の粒子が芽吹くように溢れだした。


―しゅるるるるんっ


普通の人、いや最先端のセロシア精鋭部隊でも真っ直ぐ飛ばすことしかできない魔鉄球がラエの手のひらの上で逆回転を始めたのだ。


「おわっ!? ラエ、球がすごい回転して浮いてるぞ!」

「あはは、見てお父さん!なんか回ってるよ!」


 ふわぁ……と大きなあくびをしながら、嬉しそうに笑うラエ。

 世界中の誰もが「鉄球はどれだけ早く、強く打てるか」と信じている時代。

 けれど、テニスのスピンを取り入れて、鉄球をなめらかに曲げることのできる一人の少年がここにいたのだった。

ラエ君は本名はラエビス・モルセナです。


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