28. エピローグなのじゃ
「さて小僧、最後はいよいよ、これまでのまとめじゃ。お前さんの願いである『どうすればポイントが入るのか』――それに答えを出すときじゃよ」
「はい、お願いします……!」
「先に言うておくぞ。今回の話は、ポイントをもらいやすくするための話じゃ。書きたいものを書くための話ではないぞ」
「えっと……どういうことですか?」
「書きたいものを書くだけでは、ポイントはもらえんということじゃ。小僧、ポイントとは誰が付けるものじゃ?」
「え? 読者さん、ですよね?」
「そうじゃ。ポイントを付けるのは、いつも読者なのじゃよ。じゃからポイントが欲しければ、読者の求めるものに応えねばならん。自分の書きたいものが読者の求めるものと重なれば一番よいが、多くの場合はそうはいかんのじゃ。
そして読者は作品を読む前に、まず作品を見つけねばならん。どうやって見つけ、何を見て読もうと決めるのか。そこを押さえるのが第一歩じゃ」
「タイトルやキーワード、あらすじですね」
「うむ。この講義で何度も見てきたが、ポイントが極端に低い作品には共通する要素があったな。キーワードが2個以下、あらすじが50文字未満、1話が極端に少ない、会話率が極端といったものじゃ。こういう作品は読者に探してもらう前に一覧で素通りされ、読まれたとしてもすぐにブラウザバックされてしまうのじゃよ」
「まずは見つけてもらうことが大事なんですね……」
◇
「大事なのは『探されない状態』、『ブラウザバックされる状態』から脱却することじゃ。その対策を10個にまとめたぞ。
まず1つ目は、全体で3万文字くらいまでに収まる話なら、連載より短編にすることじゃ」
「1万8千〜3万文字くらいの短編は、同じ長さの完結連載の2倍以上のポイントがありましたね。特にムーン女性向けでは、3万文字の短編が30万文字の完結連載と同じくらいポイントを集めていて、びっくりしました。2020年に評価の仕組みが変わってから短編が強くなったんでしたよね」
「うむ。読み終えたその場で星を入れやすいのが短編の強みじゃな。
次に2つ目。連載にするなら、1話2,000文字以上を目安にし、できたらポイントが高くなりやすい3,500〜7,000文字あたりを狙うとよい」
「1話が2,000文字未満の連載はポイントが低かったですね。でも長すぎるのもダメなんですよね……」
「そうじゃな。ノクターンはそこそこ長めでも問題ないが、ムーンでは3,500〜5,500文字あたりが山で、あまり1話が長い連載は好まれんようじゃったな。
続いて3つ目は、タイトルで作品の中身を伝えることじゃ。読者が一目で、どんな話か分かるように書くのじゃ。ある程度長文にしてもよいから読者に伝わるようにするのじゃぞ」
「タイトルはノクターンでは長いほどポイントが高くなってました。ムーンだと30〜40文字くらいで頭打ちでしたね。長さそのものより、中身が伝わるかどうかが大事なんですね……」
「その通りじゃ。サイトの特性に合わせつつ中身を伝えるのじゃ。
そして4つ目。あらすじは50文字未満を避けて、300文字の前後を目安にするのじゃ。検索結果やランキングの一覧では改行が消えるから、できるだけ最初の数行で中身が伝わるように書くのじゃぞ」
「50文字未満のあらすじはポイントが低くなりやすく、250〜400文字が良さそうでした。逆に、あんまり長すぎるのもダメなんですよね……」
「検索やランキング画面では、長いあらすじはただの文字の壁じゃ。見づらくて、最初の数行くらいしかまともに読まれんぞ。
さらに5つ目は、投稿するなら、朝6〜7時ごろ、昼の12時ごろ、夜の18時から0時ごろにすることじゃ。深夜の3〜5時や朝の8〜10時は避けたほうが無難じゃな。読者が多い時間帯に投稿することじゃ」
「夜の19〜20時に投稿した作品の中央値が一番高くて、朝の6〜7時も夜と同じくらい高かったですね。朝4時や朝8〜10時は、その半分以下でした。でも、曜日はほとんど差がなかったから、気にしなくていいんでしたよね」
「その通りじゃ。もっとも、時刻による差もそれほど大きくはなかったから、気にしすぎることはないぞ。
6つ目は、連載をきちんと完結させることじゃ。特にムーンでは必須スキルと言ってもええ。エタると『長期連載停止中』を除外して検索する読者には見えんようになるからの」
「連載の45%がエタで、未完結の連載だけで見たら9割以上が更新停止していましたね……。ムーン女性向けだと、10万pt以上の作品のエタはたった9%くらいで、人気の作品ほどきちんと完結していました。逆にノクターンは、人気があってもエタが半分くらいでしたけど……」
「そうじゃ。じゃがノクターンでも、0ptの連載の4作品に3作品はエタじゃった。止まった作品は、どのサイトでも見つけてもらいにくいのじゃよ。
7つ目は、会話と地の文の釣り合いじゃ。会話率は30〜60%がポイントが高かったな。とはいえ、会話率は数え方にクセがあるから、無理に数字を合わせにいく必要はないぞ。極端に偏っておらんか、読み返して確かめる程度でよいぞ」
「会話率って、『」』で閉じた行しか会話として数えないんでしたね。中央値は約38%で、会話率が0%だとポイントがあまりもえらえていなかったし、会話が多すぎるより、地の文ばかりのほうがポイントが下がりやすかったですね」
「うむ。8つ目は、1作で諦めずに書き続けることじゃ」
「作者さんの半分以上は1作品だけで、継続期間も6割前後が1年未満でしたね。書籍化やコミカライズの記載がある作者さんは、真ん中の人でも4年前後活動していて、75万〜130万文字ほども書いていました。継続が大事なんでしたね……」
「うむ。長く続けておる作者ほど、ポイントの合計も高かったじゃろ。続けるだけで、もう少数派なのじゃよ。
9つ目。キーワードは中身に合う言葉を最低3個は付けることじゃ。同じ意味で表記の違う言葉があれば、それも入れておくとよいぞ。ただし女性向けでは、地雷になりそうな言葉までむやみに並べんようにな」
「キーワードが2個以下だと、ポイントの中央値は10pt前後しかなかったのに、3〜5個になったとたん約120ptに跳ね上がっていましたね。ノクターンは付けるほど上がり続けたけど、女性向けだと9〜15個くらいで頭打ちで、たくさん付けすぎても効果はなかったんでしたね……」
「うむ。男性向けは欲しいもので探し、女性向けは嫌なものを避けて探す、という違いがあるのじゃ。あと、関係ないキーワードは入れんようにな。中身に合わん言葉で釣っても、読んだ読者が離れるだけじゃ。キーワードは読者への約束じゃからの。
そして最後の10個目は、今そのサイトで何が読まれておるかを知ることじゃ。人気キーワードの回で見たように、よく使われる言葉とポイントの高い言葉は別物じゃった。読者がどこに集まっておるのかを、まず見極めるのじゃ」
「たくさん使われていたのは『現代』や『ハッピーエンド』みたいな広い言葉で、中央値が高かったのは『クラス転移』や『乙女ゲーム』『不憫受』みたいなテンプレの言葉でしたね……。でも、流行りに寄せるのって真似っこになりませんか……?」
「テンプレと中身は別物じゃよ。『乙女ゲーム』という同じテンプレでも、書き手の数だけ違う物語があるのじゃ。テンプレは、読者が作品を探すときの入り口にすぎん。入り口を知らんまま書いて、読者のおらん場所で待っておっても誰も来んぞ」
「言われてみれば、どれも当たり前のことに見えますけど、データで見ると、どれも『見つけてもらえない状態』、『ブラウザバック』を避けるための大事な条件だったんですね……!」
「然り! 当たり前のことをグラフで確かめた、それがこの講義じゃ。そして、当たり前のことをきちんとやっておる作品は、実は思うより少ないのじゃよ」
「当たり前のことを当たり前にするだけでも違うんですね……!」
「そうじゃな。また、しなくてもいいことに労力をかけてなくて良いぞ。
例えば挿絵を入れる行為じゃな。挿絵は話数の多い作品以外ではポイント帯は変わらんか下がる傾向にあったじゃろ。ゆえに無理に挿絵を付ける必要もないぞ。特に女性向けでは下がるほうが多い。迷ったら入れんほうが無難じゃ。
こうして『気にしなくてよいこと』が分かるのも立派な講義の成果じゃぞ!」
「はい!」
◇
「さて、共通の土台を固めたうえで、4つのサイトそれぞれの攻め方を授けよう。サイトが違えば、読者が求めておるものも全く違うからの。
まずはノクターンじゃ。作品も作者も一番多い、長編連載が強いサイトじゃな。話数が多いほど、文字数が多いほど、ポイントは上がり続けておったぞ」
「タイトルの長さもキーワードの数も頭打ちがなかったですね!」
「そうじゃ。中央値の上位には『クラス転移』や『貞操逆転』『チートスキル』のような、長編に向いた型が並んでおった。キーワードやあらすじ、タイトルには、どんな型や要素が入っておるのかを、出し惜しみせず書くのじゃ。
それに、ノクターンでは完結しておるかどうかとポイントの関係が薄かったからの。まずは長く続けることが優先じゃな。作品が多いぶん、見つけてもらう工夫が一番効く土俵じゃ」
「男性が探したくなるようなものを長く書くのがいいんですね……!」
◇
「次はムーン女性向けじゃ。1作品あたりのポイントが一番高く、2020年の評価フォームの改修から短編がぐっと強くなったサイトじゃな」
「3万文字くらいの短編が、30万文字の完結連載と同じくらいポイントを集めていましたね!」
「然り! タイトルは30〜40文字まで、あらすじは250〜400文字、キーワードは9〜15個までじゃ。あまり盛りすぎてはならんぞ。3作品に1作品近くが付けておる『ハッピーエンド』で結末を約束して、『乙女ゲーム』のテンプレを舞台とし、『王太子』『公爵令息』のように、相手役がどんな人物かをはっきり見せるのが王道じゃ。
連載なら10万文字ほどの完結作品を目指すのじゃ。それより長くしてもポイントは増えておらんかったからの。3万文字くらいで収まる話なら、連載にせず短編で勝負するのがよいぞ。そして何より、完結させることじゃ。ムーンでは人気の作品ほどきちんと完結しておった。エタだけはするでないぞ」
「短くまとめるのが良さそうですね……!」
◇
「続いてムーンBLじゃ。作者1人あたりの合計文字数が一番多く、作品の完結率も高いぞ。会話率は20〜80%の広い範囲でポイントに差がなく、書き方の幅を一番受け止めてくれる、懐の深いサイトじゃな」
「キーワードの中央値の上位は、『不憫受』とか『後悔する攻め』でしたね」
「うむ。攻めと受けがそれぞれどんな人物で、2人がどう報われるのかを、細かい言葉で約束してやるのが一番じゃ。タイトルやキーワードはムーン女性向けと同じで、盛りすぎてもあまり効果がないから、ほどほどにしておくとよいぞ。
1万〜2万文字ほどの短編でも十分戦えるが、そこそこ長く書くのがよいぞ。BLの完結連載は長いほどポイントが伸びておったからの」
「ノクターンとムーン女性向けの間くらいの特性でしたね……!」
◇
「そして……ミッドナイトじゃ。ここは、ポイント目当てで投稿するところではないぞ。以上じゃ」
「えぇ……。まあ、そうですよね……」
「勘違いするでないぞ。数字が小さいのは書き手のせいではない。ポイントをつける読者が少ないのじゃ。
それでもここで高いポイントを目指すなら短編ではまず難しい。100pt以上の作品が半分を超えたのは、30万文字を超える長い作品からじゃった。『剣と魔法』のような異世界もので、長い連載をコツコツ書き続けることじゃな」
「ここが一番、ハードルが高そうですね……」
◇
「さあ小僧、お前さんの今の居場所を、改めて書き出してみようかの」
「うう……は、はい……」
「所属はミッドナイト。投稿したのは短編1作だけ。タイトルは7文字、キーワードは2個。見事なまでにポイントが入りにくいことばかりしておるのう!」
「ううっ……! ぐうの音も出ません……!」
「じゃが逆に言えば、伸びしろしかないということじゃ。新歓のイベントでポイントを集めねばならんのなら、ノクターンかムーン女性向けがよさそうじゃな。連載を書き続けるのが得意ならノクターン、短くまとめて完結させるのが得意ならムーン女性向けじゃ。
どちらにしても、タイトルとキーワードを作品に合うものにして、あらすじを300文字の前後にする。それだけでも0ptからは離れられるぞ」
「僕でも、できるでしょうか……?」
「それはお前さんの物語の中身次第じゃな。わしが授けられるのは地図の読み方までじゃ。そこから先へ歩き出すのは、お前さん自身の足なのじゃからな」
「神様……! はいっ! 僕、自分の頭でしっかり考えて選びます……!」
◇
「……ふぅ。これで座学のまとめはおしまいじゃがな、小僧、最後の宿題を覚えておるか?」
「あ……! 最近はポイントの合計が減っている、っていう、あの謎ですね……! やっぱり、読者さんは減っていってるんですかね……」
「うむ。どう見ても減っておるじゃろうな。その原因も考えてみたのじゃが、あくまでもわしの推測じゃから、そのつもりで聞くのじゃぞ。結論から言えば、ここ数年で急速に高まった『AIの普及』が、娯楽と創作のあり方を根底から変えてしまったことにあると見ておる。理由は大きく3つじゃ」
「AIが変えてしまった理由が、3つ、ですか……?」
「1つ目は、AIを使ったツールの増大によって新しい娯楽が増え、時間の取り合いになっておることじゃな。動画や配信、SNSに加え、AIのおかげで個人でも楽しめる遊びが爆発的に増えたことで、読者の時間が細かく分かれて小説を読む時間が削られておるのじゃろう。
特に大きかったのが画像生成AIの普及じゃ。これまで絵が描けなかった人でも、自分の頭の中にある理想のイラストを簡単に作成できるようになったじゃろ? 挿絵の回でノクターンの挿絵が急増しておった通り、男性は視覚的な刺激を好むゆえ、小説を読むより自分で絵を生成して楽しむほうへ時間を割く者が増えたのかもしれんの」
「たしかにAI画像はどこでも見かけるようになりましたね……。じゃあ、2つ目はなんですか?」
「近ごろ爆発的に広まってきた、AIと会話するツールやアプリじゃよ。定番の対話型AIだけでなく、自分が設定したキャラクターとの会話を楽しむキャラチャットAIが急速に普及してな、国内で200万人以上が使っておるアプリもあるそうじゃ」
「200万人……すごく普及しているんですね……! でも、それが小説とどう関係するんですか……?」
「昔は相手がいなければできなかった『なりきりチャット』が、AIのおかげで1人でも、自分の好きなタイミングでいくらでもできるようになったのじゃよ。キャラクターとの関係や世界観を自分で決めて、自分のための物語を進めていくその楽しみ方はな、読者が自分を主人公に重ねて読む『夢小説』の楽しみと、よく似ておるのじゃ。
他人の書いた小説を受け身で読むより、自分だけの推しと言葉を交わすほうへ、読者の熱が移っておるのかもしれん。こういった夢小説のような楽しみ方は、もともと女性向けジャンルで人気が高いゆえ、影響も大きく出やすいのじゃろう。
現に、2021年から2024年にかけてのポイントの合計の減り方は、ノクターンの約26%に対して、ムーン女性向けは約35%と、女性向けのほうが少し大きかったからの」
「AIとの会話が増えていってるんですね……。じゃあ、3つ目の理由は何ですか?」
「3つ目は、それまで受け身だった読者が『創作者』になれるようになったことじゃ。AIの文章作成能力が飛躍的に上がり、執筆を助けるツールが増えたことで、誰でも気軽に小説を作れるようになったのじゃよ。
2025年からノクターンの投稿数が急増しておったのもその表れじゃな。読む専門だった者が自ら作品を創り出す側に回り、自分で自分の読みたいものを満たせるようになった結果、他の作品を読まなくなった可能性があるのじゃ」
「絵を作ったり、AIとチャットをしたり、小説を作ったり……AIが普及した結果なんですね……。でも、AIによる問題なんかもよく聞きますし、官能小説はこのまま読まれなくなっちゃうんでしょうか……」
「たしかに、似たような作品の乱造や、キャラチャットへの過度な依存など、AIによる弊害も出てきておる。じゃが心配いらん、わしはこの分野が滅びることはないと見ておるぞ。人の三大欲求に根ざしたものじゃからの、減衰することはあっても、なくなることはないじゃろう。
それに、AIによって人間のできることや可能性が増えたこと自体は、決して悪いことではない。いまは新しい技術が一気に広まった過渡期ゆえ、少しばかり世界が揺れておるだけじゃ。今後どうなるかは、わしにも分からんが……この過渡期を抜けた先に、作り手にとっても読み手にとっても、いい未来が待っておるとよいのう」
「……はい。人間の可能性が広がったその先に、いい未来が待っているといいですね……!」
◇
「神様……本当に、本当にありがとうございました……! 右も左も分からなかった僕に、こんなにたくさん教えてくれて……」
「エナドリを毎日お供えさせた甲斐があったというものじゃわい!」
「……もう講義はおしまいなんですよね……? 神様とお話しできるのも、今日で最後なのかなって思うと、ちょっと寂しいです……」
「……アホを言え、小僧! 誰がこれで終わりだと言うたのじゃ!?」
「えっ……? で、でも、座学は終わりって……」
「座学が終わったら、次にやることは決まっておろうが! 実技じゃよ、実技ッ!!」
「じ、実技ィィィッ!?」
「当たり前じゃ! データだけで小説が書けるようになるわけがなかろう! このわしが手取り足取り、身体の芯まで叩き込んでやるのじゃ!」
「え、ええ!? あ、ちょっと……!」
「ふふふ、なーに最初は天井のシミを数えておるうちに終わるのじゃ」
「えっ、あっ、あー!」
このあとめちゃくちゃ【自主規制】したのじゃ!
(おしまい)




