第三話〜桜と黒薔薇〜
「よぉし昼休みだぁ!桜〜!私今日お弁当忘れたから食堂行くけどどうするー?」
昼休みが始まるなり蘭々は私の元に駆け寄ってきてそう言ってきた。
「うーん、今日は穂乃果もいないし……」
一緒に行こうかな、と言おうとしたところで教室の外を黒薔薇様が通っていくのが目に入る。
ふと朝の彼女の涙を思い出し、私はほとんど反射的に動いてしまった。
「……ごめん蘭々、私今日は一人で食べるね!」
「え、あ、ちょ桜!?」
急にどうしたの〜!?と後ろから蘭々の声が聞こえるけれど私は振り返らずに黒薔薇様の後ろをついて行った。
「……屋上……?」
この学校は屋上に入ることが禁止されておらず、昼休みや放課後ならば生徒も自由に屋上に行くことができる。
が、風通りが良すぎるためあまり人が訪れることはないと蘭々や穂乃果から教えてもらった。
おそるおそる扉を開けて外を覗くと、その音に気付いた黒薔薇様が素早く私の方を振り返る。
「誰……?」
「あ……えっと……」
「……あなた、朝の……」
黒薔薇様は私の顔を見ると朝のことを思い出したらしく、警戒をといた。
「ご、ごめんなさい……朝、ぶつかった時に泣いていたのが気になっちゃって……」
「……そう」
彼女はスッと後ろを向いて柵の方へと歩き出す。
「……あの、何かあったんですか……?」
絞り出すようにして、彼女の背中にそう問いかける。
「……あなたには関係ないわ」
少しの間沈黙が流れた後、黒薔薇様は静かにそう呟いた。
そしてくるりと私と向き合い、続けた。
「あの時も言ったでしょう?私には関わらない方がいいと」
「……そう、だけど……でも、黒薔薇様……なんかすっごく……悲しそうに見えたから……」
屋上の上を吹き荒れる風が私と黒薔薇様の服や髪を揺らしていく。
「……沙夜」
「……え?」
「野薔薇沙夜よ」
彼女は私から目を逸らして、再び呟くようにして言葉をこぼす。
「え、あ、私は神坂桜……です……?」
「……そう」
(あ、あれ?自己紹介……じゃなかったのかな……!?)
度々流れる沈黙の空間に、私は自分から来たにも関わらず逃げ出してしまいたくなる。
「……神坂さん」
「あ、はい!」
「……私と関わったこと、あなたはきっといつか後悔するわよ」
「え?」
「……雨が降るわ。そろそろ中に入った方がいいわよ。……私はいつもここにいる。だから……」
来たかったら勝手に来なさい、と私の方は一度も見ずに屋上から降りて行ってしまった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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