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9. 妖精のインフラ

それで…


数ヶ月が経った。


ああ、数ヶ月だ。そして今?


アリアの古びた小さな小屋の周りは、もはや森の中の静かな忘れられた場所ではなかった。


そこはすっかり街になっていた。


オークたちは家、監視塔、市場、鍛冶屋、錬金術台、モンスターをテーマにしたカフェ(なぜスライムメイドカフェがあるんだ?)、そして彫像のある中央広場まで建てた。


彫像だ。


私の彫像だ。


魂玉の姿で浮かぶ、威厳に満ちた私…

そして混乱している。

彫像の中で、私は混乱していた。


ありがとう、ボブ。


そういえば、私が助けたオークのボブは、今ではボブ市長だ。

彼はクリップボードと眼鏡(彼には眼鏡は必要ない)を持って歩き回り、こんなことを叫んでいる。


「ワイバーンのためにもっと区画が必要だ!」


アリア:「それで…モンスターの村を丸ごと私の家の玄関先に連れてきたの?」


私:「つまり…私が見殺しにしたいっていうの?」


アリア:「もうカイロ様の責任ですよ」


ええ。オークたちは今でも私をカイロ様と呼ぶんです。


何度言っても


「お願いです。カイロ様だけでいいんです。領主は捨ててください」


だめだ。


そして私は誓った――誓う――リムルやアインズ、あるいは王国と王会議を持つ異世界の王様みたいにはならないと。


玉座も、王冠も、国家も。


そこで代わりに、私はあるアイデアを提案した。


「ここを自由なモンスターのコミュニティにしよう。街にしよう。王国じゃなくて。」


追放者、逃亡した獣人、追放者、モンスター族、そして戦争や欲望によって故郷を追われたすべての人々にとっての安全な避難所。


支配者はいない。ただの人間。生きている。


そして彼らはそれを気に入った。


今はボブが政治を担当している。


アリアが苦情を処理する。


私が怠けるとライラが小言を言う。


私は?


私は裏方に徹する。


魂を救い、脅威を殴り倒し、

必要なら古代の悪を食い尽くす。

…それでも王と呼ばれ続ける。


責任が大嫌いだ。


それで、新しい「王国じゃない」街で5分くらいは平和な時間が過ごせるかもしれないと思った矢先…


ドカーン!

オークの斥候が、剣を磨いている最中に鍛冶屋に飛び込んできた。


「カイロ卿!緊急事態!南の森!妖精が危険!」


何も聞かなかった。


まるでパーカーが燃えているかのように、炎がそこから飛び出した。


そして、そこに着いた時?


一体何が起きたんだ?


何だって?


馬車ほどの大きさで、溶けかけのオーガのような体格と、下品なゲーマーコンベンションのような匂いを放つ怪物が、小さな妖精たちの輪を恐怖に陥れていた。


でかくて、醜くて、放射能まみれの体臭。


まるで最悪のDiscord VCの記憶から這い出てきたかのようだった。


「だめだ、死ね。」


炎が突進!


胸を貫く。


ドカーン。消滅した。


パーカーの埃を払い、呆然とする妖精たちのところへ舞い降りた。


「大丈夫?」


皆、ただ…じっと見つめていた。


小さな羽が羽ばたき、キラキラと光る。


怯えている。


なぜ?


だって、私は魂を喰らう、光り輝く浮遊球体で、黒い炎のモードで、殺し屋を一撃で蒸発させたばかりだから。


「落ち着け!私は優しい魂喰いよ!食べないわよ!」


私は笑顔を作ろうとした。


ほら…優しくしろよ。


ダメだ。


どうやら、浮遊する幽霊球体としての私の笑顔は、地獄への入り口のように見えるらしい。


妖精が一人気絶した。もう一人が悲鳴を上げた。一人がキラキラの魔法で私を攻撃しようとした。


「いいから、落ち着いて!お願い!私は魂を刈り取るために来たんじゃないのよ。本当に!」


私は人間の姿で両手を挙げ、そっと後ろに下がった。


ルーシー:「第一印象10点満点。」


私:「助けにならんよ、ルーシー!」


ポン!


私は素早く人間の姿に変身した。フード、黒いストライプ、かすかに光るオーラ(まあ、少し威圧的かもしれないが、それでも)、そして逮捕されるかのように両手を上げた。


「よし!やめて!見て、あなたを傷つけるつもりはないわ。本当に!落ち着いて!」


妖精たちは凍りついた。


まるで妖精ホラー映画の一時停止ボタンを押したかのように。


小さな槍と魔法の杖はまだ私に向けられていた。


羽根がぴくぴくと動き、キラキラと輝く粉が空中に舞い上がった。


何人かは私の顔を、何人かは私の手をじっと見つめていた。一人はまだキノコの陰に隠れて、「魂の悪魔が可愛い姿になったわ、これはトリックよ!」とささやきながら。


ルーシー(冷淡に)「おめでとう。今じゃあなたは変身能力を持つボスモンスターだと思っているわ。」


私:「ルーシー、ゴム製のアヒルにソウルリンクする前に黙って。」


私はゆっくりと息を吸った。岩の上に胡坐をかいて座り、両手を上げたままだった。


「いいかい、私が君を助けたんだぞ? 魂を食べようともしなかった。ただ蒸発させただけ。そして、君には触れない、いいかい?」


葉っぱのマントを羽織り、明らかにリーダー格の勇敢な妖精が、慎重に羽ばたきながら前に出てきた。


「な、誰だ…?」


「名前はカイロ。ソウルイーターだけど、私はそういうタイプじゃない。モンスターや追放者のための街を運営しているんだ――いや、偶然作ったんだけど――んだ。先に襲われない限り、魂を食らうのはダメだ、わかった?」


彼女は疑わしげにその場に留まった。


他の妖精たちが、葉っぱやキノコの陰から顔を覗かせた。


「…君は私たちを助けてくれた。」


「ああ。またそうするよ。それで…これでいいの? それとも、このまま両手を上げ続けないといけないの?」


沈黙。


それから、ゆっくりと…数人が武器を下ろした。


一人の妖精がそっと飛び上がり、私の頬を突いた。


「あなたって、優しいのね…」


「あれはパーカーよ」


私は首を傾げ、用心深く私の周りに集まってきた妖精たちを見回した。葉の上に座っている妖精もいれば、まだ少し落ち着きなく宙に浮かんでいる妖精もいた。数匹は目に見えて痣ができており、一人は羽が裂け、もう一匹は火傷のような跡があった。


「それで…えーと…どうして叔父の足みたいな怪物が、砂糖でハイになったレイドボスみたいにここを踏み鳴らして来たのか教えてくれないか?それに、君たちみんな、熊とレスリングで負けたみたいな顔をしているんだ?」


妖精のリーダーはため息をつき、光るキノコの上に舞い降りて座った。後で知ったのだが、彼女の名前はクレシアだった。どうやら彼女は妖精たちの中で一番年上だったらしい。つまり、なんと63歳だ。妖精の年齢としては、まあ、そんなところだ。


「事の始まりは二日前よ」と彼女は静かに言った。 「森の奥深くで何かが動いている。暗黒のマナ、歪んだ生き物。私たちには結界があった。古木の力で動く古代の結界だ。何世紀もの間、森を守ってくれた…」


「当ててみろ。壊れたのか?」


彼女は頷いた。「薄氷のようにひび割れたんだ。忘却の谷の奥深くから何かが怪物を堕落させている。今蒸発させたあの怪物も、かつては心優しい森の守護者だったのに。」


「ああ…しまった。」私は顔をしかめた。


ルーシー:「つまり、堕落した森の精霊か。素晴らしい。次は魂を喰らう花か?」


「ルーシー、運命を試すな。」


クレシアは再び立ち上がった。小柄ながらも、決意を新たにしていた。


「私たちは若い精霊たちを守り、残されたわずかな地盤を守ろうとしてきた。でも、堕落した怪物は次から次へと襲いかかってくる…いつまでも逃げ続けるわけにはいかない。」


私は腕を組んで後ろに寄りかかり、頭の中で様々な可能性を巡らせた。

これは単なるモンスターの襲撃ではなく、兆候だった。


何か大きなものが、この世界のバランスを崩していた。


「わかった」と私はようやく言った。「選択肢は二つ。私と一緒にモンスタータウンに加わり、王国にするつもりはない。それとも、再建を手伝って森を腐らせている原因を突き止めるかだ。」


「本当に…そんなことをしてくれるの? 私たちを助けてくれるの?」


妖精の一団がモンスタータウン™(公式ではないが、徐々に広まりつつある)に定住し始めたことで、事態は急速に進展した。本当に…本当に急速に。エネルギーグリッド、マナ導管、資源管理 ― 難民モンスターの避難所を運営するのに、事務仕事よりも多くの書類仕事が必要だなんて、誰が想像しただろうか?


ボブから「インフラ担当の妖精大魔道士」と称されるクレシア ― そう、息子はすぐに政治に熱中し始めたのだ ― は、マナ経路の管理に驚くほど長けていた。妖精たちは、いわば生きた電池と回路基板のようなものだった。しかし、それにも限界があった。


「適切な導管や構築された支援システムなしに、生のマナだけを引き出し続けたら、この辺りのレイラインが燃え尽きてしまうわ」と、ボブが作った大まかな地図を調べている私と並んで飛びながら、クレシアは警告した。


「だから、建設業者が必要なの。本物の建設業者よ。道具と技術、そしておそらく髭もね」と私は呟いた。


ルーシー:「ドワーフのこと?」


「いや。この世界ではドウェフトって呼ばれてるんだ。どうやら、こっちの方言らしいよ。」


ルーシー:「それは本当にバカか、本当に天才的かのどちらかだ。五分五分だ。」


地図は私たちをグレイルート山脈へと導いていた。そこは古代の石の精霊、崖っぷちのモンスター、そしてそう、この世界の熟練工であるドウェフトで満ちているらしい場所だ。


木々の梢を飛び越えていくと、山々が見えてきた。竜の牙のように鋭い尾根が空に突き刺さり、頂上には雪が薄く積もっていた。あのギザギザの岩山のどこかに、次の強力な味方がいるかもしれない…もし彼らが私を坑道に埋めようとしない限りは。


「妖精をドウェフトの町に連れてくれば、古代の血の抗争が始まるんじゃないか?」


「お願い」クレシアは怒鳴った。「あれは300年前のことよ。私たちはもう前に進んだのよ。」


ルーシー:「あの有名な最期の言葉ね。」


私はため息をつき、飛行艇のパワーを上げた。目の前の険しい道を見据えながら。モンスタータウンを、行き場のない人々を真に守れる場所に変えるには、火力だけでは足りない。


物を作る力が必要だった。


そして、彼らと会う時が来た。

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