6.私の最初の体
彼女は顔の汚れを拭きながら、信じられないという思いと、少しの驚きで目を大きく見開いて私を見た。
「あなた…名前がないの?」
私はぎこちなく宙を漂った。一枚の葉っぱが、劇的に私の脇を通り過ぎた。
「いいえ。ただの『魂の玉』、『浮遊物』、『ああ、神様、あれは何』…よくある名前よ。」
彼女は考えながら首を傾げた。そして、世界を滅ぼす存在に名前を付ける資格などない者の絶対的な権威をもって、こう言った。
「じゃあ、教えてあげるわ!」
「ちょっと、何…」
「あなたは私を助けてくれた。あなたは強い。光る。蛍みたいだけど、同時に恐ろしい。どうかしら…カイロ?」
私は瞬きした。
精神的に。
精神的に。
システムが通知をポップアップした。
[名前の割り当てを検出: カイロ]
[この名前でよろしいですか? はい/いいえ]
私は少しの間、彼女のそばをうろついた。
「カイロ…」
響きが良かった。
「ソウルグレムリン マークII」よりはましだ。
「わかった、カイロにしよう。」
彼女はまるで子犬に名前を付けたばかりで、魂を喰らう宇宙兵器に名前を付けたばかりではないかのようにニヤリと笑った。
[名前登録: カイロ - エルダーソウルイーター]
「称号解放: 『選ばれし名』 - 正体への第一歩を踏み出した。」
「それで、あなたの名前は?」と私は尋ねた。
彼女は瞬きをして、うつむいた。
それから小さく呟いた。
「ライラ。」
私はライラの周りを優しく漂った。まるで、境界の問題を抱えた、好奇心旺盛な光り輝く炎の精霊のように。
「ライラ、初めまして。さて、本当の質問なんだけど、どうしてダンジョンの階段から突き落とされたみたいな顔をしていたの?それに、あの安売りの悪夢のようなモンスターどもが、まるで無給インターンみたいにあなたを追いかけてきたのは一体何なの?」
彼女はくすくす笑った。弱々しく。まだライラの腕を掴んでいたが、もう震えはしていなかった。
「…何か盗んだの。」
私は空中浮遊の途中で止まった。
「何か盗んだの?例えばパンとか、魔法のオーブとか、誰かの奥さんとか?」
彼女は疲れた笑みを浮かべた。
「遺物ね。」
「…わかった。選択肢2にしよう。」
「レッドファングの森の南にある遺跡だった。…偵察するだけだったのに、奇妙な光る破片を見つけたの。触った途端、モンスターが姿を現したの。普通のモンスターじゃない。まるで操られているみたいだった。目が赤く光っていたわ。」
私は鼻歌を歌った。口のない生き物にしては、なかなかすごいことだ。
[システム分析:異常な魔法の痕跡を検出 – オブジェクト分類:起源の破片 – 危険度:機密]
ルーシーが口を挟んだ。
「宿主。あの破片は普通じゃないわ。高レベルのアーティファクトよ。この世界の魔法システムの中核構造、あるいはその終焉に関わっている可能性が高いわ。」
「…当然よ。私のやることは、単純なものじゃないから。」
私はライラの方を振り返った。
「呪われた遺物に触れたから、地獄のペットどもがみんなあなたを追っているのね。」
彼女はばつの悪そうに頷いた。
「…ああ。ごめん。」
「お嬢ちゃん、謝るんじゃないわよ。私の経歴の8割くらいが、違うフォントで書いてあるじゃない。」
私は彼女の隣を漂った。
「わかった。破片はどこだ?」
彼女はマントからそれを取り出した。ギザギザの水晶が、古代のエネルギーで脈動し、輝きを放っていた。
そして突然…
森は静まり返った。
[危険接近]
[存在検知:A級魔法存在 - 「切断の犬」]
「おいおい。」
破片が脈動した瞬間、森全体が悲鳴を上げた。
文字通りではない。
だが、感じ取ることはできた。
木々が揺れ、空気が裂けた。まるで核爆弾が「ブー」と囁いたかのように、魔力の圧力が下がった。
そして――
ありとあらゆる怪物が、姿を現した。
骨の仮面を被った狼。角のあるトカゲ。悪意を滲ませる巨大な影の獣。バスほどもある忌々しいムカデまで!
彼らは皆、私たちの方を向いた。
そして突進してきた。
「なんてこった。」
「走るぅぅぅぅ!!!」
ライラはオリンピックの森の短距離走の訓練をしたかのように走り出した。
私は――超自然的な恐怖の、堂々とした浮遊球体のように――攻撃的に浮遊した。
「ルーシー!」私は心の中で叫んだ。
「近くに安全な場所なんてあるの?」
「計算中…北東3.2kmに遺跡が一つ。軽く防護されている。今すぐ駆け込めば生存率47%。」
「了解。」
「ライラ!あっちへ!」カフェインで満たされた鬼火のように木々の間を駆け抜けながら、私は叫んだ。
彼女は反論しなかった。ただ、破片を掴み、死なないように必死に走った。
私たちの後ろには?
轟音、悲鳴、唸り声を上げる混沌の壁。
まるで森が恨みを抱き、その恨みを晴らそうとしているかのようだった。
[迫り来る脅威:切断の猟犬 – 推定30秒]
「冗談でしょ?!タイマーがあるのよ!?」
私は木々の間をジグザグに走り抜け、影の触手を投げつけてモンスターを躱し、道を切り開くのに十分な力を使った。魂を喰らうビュッフェ警報を発動させるほどではない。
死に追われながら、私たちは夜空を駆け抜け(そして漂いながら)いった。
洞窟の中へはかろうじて入った。彼女の髪には土が付着し、背後では魔法の残滓がパチパチと音を立て、私は息切れしたハムスターの幽霊のように、精神的に喘いでいた。
「よし…大丈夫だと思う…」そう言うと、洞窟の壁に声が反響した。
そして、それは起こった。
ライラの手に握られた破片が光った――いや、吠えた。まるで声があるかのように。
「ライラ?」
彼女は凍りついた。
彼女の目は大きく見開かれた。
そして――
聖遺物から、地獄の煙幕弾のように黒い霧が噴き出した。呪われた炎の触手で彼女を包み込み、爪を立てた影が彼女の魂に巻き付いた。
「ライラ…だめ!」
私は駆け出したが、魔法が燃え上がった。悪魔的で、重く、記憶よりも古い。
叫び声が――彼女のものではない、何か別の――洞窟を切り裂いた。
そして煙が晴れると――
ライラは立っていなかった。
何かが違っていた。
同じ体、同じ形。だが、その目は――もはや怯えも優しさもなかった。
真紅に輝いていた。
「ああ…これが器か。理想的ではないが…まあいいだろう。」
声は重層的だった。ライラの声色の下に、より暗く、より古めかしい何かが潜んでいた。悪意に満ちていた。
「お前は誰だ?ライラに何をしたんだ…」
「彼女はまだここにいる…どこかに。だが、この小さな球体、今、支配しているのは私だ。」
私の体は怒りで白熱した。
[魂の痕跡を検出:悪魔型 – 進化候補:魔王級]
ルーシーは囁いた。
「宿主…それが何であれ、封印された魔霊だ。おそらくかつての魔王の意志の断片だろう。もし彼女と完全に融合したら…」
「…ゲームオーバーだ。」
私は怒りと恐怖に震えながら、その場に留まった。
「彼女を…放して。」
悪魔のような笑みが彼女の顔に浮かんだ。
「さあ、連れて行きなさい、カイロ。」
「この野郎!」私は叫びながら突進した。まるで生きた怒りの彗星のように、私の体から炎が噴き出した。
私はまともにぶつけた――直撃、鋼鉄を溶かすほどの熱――
何も起こらなかった。
瞬きさえしなかった。
私は水を噴射した――石を削り取るほどの圧力の奔流――
それはただ笑った。
そして、それは反撃した。
激しく。
私は吹き飛ばされ、洞窟の壁に激突した――まるで神に蹴り飛ばされたビーチボールのようだった。
全てが砕け散った――私のオーラも、私のプライドも、おそらく私の尊厳も。
「ちくしょう!」
「こんな風に――死ぬなんて――ありえない!」
ルーシーの冷たく、陰鬱な声が重なった。
「合体92%。完了すれば、ライラは完全に飲み込まれる。」
「…止める方法が一つある。」
「教えてくれ。」
「…両方食べるのだ。」
「何だって?!」
「悪魔の魂とライラの魂を食べる。合流点を消費する。それが唯一の方法だ。」
私の魂が揺らめいた。
「できない…彼女は…ライラは無実だ!」
「ならば、消える準備を。」
私は彼女を見た。
彼女の体。
彼女の声は悪魔の笑い声で歪んでいた。
彼女の瞳…魂の最後の残滓が揺らめいていた。
私には選択肢がなかった。
彼女か…それとも他のすべてか。
私は叫び声を上げて突進し、彼女の胸を突き刺し、魂空間へと突き刺した。
そして私は食べ始めた。
中で、世界は砕け散った。
赤黒い虚空と引き裂かれた記憶が渦巻く混沌とした渦。
中央には、かろうじてしがみつくライラ。そして、彼女の頭上にそびえ立ち、既に勝利したかのように笑う悪魔。
「彼女から離れろ!」
私は全てを解き放った――ダーク・オーバーロード、ニュー・デバウアー、パーフェクト・パーセプション、持てる限りの技を――
そして悪魔の魂を裂いた。
悪魔は抵抗した。
ああ、深淵のように抵抗した。
叫び、切り裂き、燃え上がり、ライラを引きずり込もうとした――
しかし、私は彼女の魂にしがみついた。
私の精髄をその魂に巻き付けた。
「放さない!」
そして――
私は噛みついた。
悪魔は吠えた――
そして私はそれを貪り食った。
その力。
その憎しみ。
その痛み。
すべてを。
そして、一瞬――
私はライラの魂が私の中で震えるのを感じた。
怖い。孤独。薄れゆく光。
私は彼女を抱き寄せた。
「…戻ってきて。」
「あなたが私を名付けたのね。」
「だから今、私はあなたを守るために、私の名をあなたにつける。」
[魔魂:消費]
[ライラの魂:保存 ― 束縛レベル3達成]
[新たな称号獲得:魂の守り手]
[新たなスキル:デモンベインオーラ]
[進化解放:神話級魂の化身]
私は目を覚ました――
まだ浮いていた。
ライラは私の傍らに倒れ込み、息をしていた。
彼女の目が瞬きながら開いた。
「…カイロ?」
私は微笑んだ――もし魂の玉が笑えるなら。
「捕まえるって言ったでしょ。」
何かがおかしい。
温かい。重い。地に足がついている。
まるで…肉のよう。
待って。
肉?!
体がぴくりと動いた。いや、ガクンと震えた。片足が動いた。そしてもう片足が。
よじ登ってみたが、何かがひどくおかしかった。浮いているのではなく、座っている。膝と腕で。
「何だ…」
両手が顔に上がった。柔らかい。人間の体。魂の玉のゼリーではないことは明らかだ。
視線を落とした。
「私に体があるなんて!?」
指がある。足がある。胴体がある。短い。
辺りを見回すと、ひび割れて水に満たされた石に自分の姿が映っていた。
長い銀髪。青白い肌。紫色に輝く瞳。
小さな体。少女の体のように繊細だが、不気味な力で輝いていた。
「…なんてことだ。」
「ライラの体を手に入れたようだ。」
[システム通知:融合未完了 – 共用器形態達成]
[ホストソウル:カイロ | サブソウル:ライラ]
[安定化率:78%]
「ルーシー!説明してくれ。頼む。」
「貪り食う過程で、両方の魂は極度の緊張下で同期した。どちらかが失われないように、ハイブリッドな器が作られた。おめでとう。君は今、魔法的に安定化した、共用体を持つ二重の魂の存在だ。」
「私がプレティーンの女の子になるって、もっと前から言ってくれればよかったのに!!」
「君はサプライズが好きだと思ってたよ。」
心の奥底から、彼女の存在を感じた。
ライラ。
「…カイロ?」
「…君は私を救ってくれた。」
「ライラ。ああ。私たち…今、同じ人間みたい?」
「…あなたは私の体の中にいる。思考の中であなたを感じている。」
「わかってる。気まずいわ。まるで『初めて服を着る』みたいに気まずい。」
彼女は私の心の中でかすかに笑った。
「…ありがとう。私を消さないでくれて。」
「もちろんよ。あなたが私に名前をつけてくれたの、覚えてる?それであなたは私の最初の本当の友達になったのよ。」
私は再び自分の小さな手を見つめた。
「それでもね。悪魔の魔法と実存的なトラウマの嵐を抱えた、歩く12歳の少女になることに慣れるには時間がかかりそうだわ。」
[新たな特性獲得:ソウルバウンドフォーム – ハイブリッドソウルボディ]
[すべてのステータスが時間の経過とともに宿主の安定性に合わせて進化]




