執事兼ボディーガード
取り敢えず、領収書を渡し、残りは一括で振り込んでくれる様に交渉したが、まるで譲らない。
結局押し切られ、毎日、入金に来る事になった。
気持ち悪いと言っていた二人も、慣れて、いや、望んでいた姿なのだが。
どこか、引っかかるものの、三人とも結構いい友達的感じでお話をしている。
「それでね、ドロシーがあんな事やそんな事をするから、もう大変なんだ」
「まあー、お淑やかそうですのに、その様に激しい方だったとは」
「ちっ、違うの、ルイーズのばかーーーっ」
「あの~、二人共、もう、そろそろお昼だし、ご飯食べて下見に行かないと」
「優、作って」「え~、昨日も僕が作ったよ」「私手伝う」
「じゃ、テーブルを元に戻すから、手伝って」「は~い」「むう~」
「何食べたい、冷蔵庫に無い物はダメだよ」
ドロシーが来たので、二人でテーブルと椅子を戻す、今日のラヴさんは、害は無さそうだ。
「ラヴさんも食べますか」「えっ、良いの、食べる、こほん、頂きますわ」
「私、食パンのピザが良い、サラミとチーズいっぱい」
「ドロシーは」「私はペペロンチーノとサラダ」
「ラヴさんは何かありますか」取り敢えず僕もドロシーも座り直す。
「そう、ですねぇ~」「今日のラヴさんなら何でもいいですよ」「「ううぅっ」」
「ではぁ、そのもう一人、お呼びしても、よろしいかしら」
「えーっと、誰ですか」
「お話に夢中で、失念しておりましたわ、下に執事を待たせておりましたの」
「執事ですか」
「ええ、まあ、わたくしのボディーガードも兼ねておりますの、お父様の言いつけで、わたくしに|粗暴な殿方の影が無いか、見て参る様にと、申しつけられたらしいのですわ」
「優」「優ってば」「お父様ですか、何、二人共」
「奥様の言いつけでもあります」いきなり背後から女性の声がした。
「あっ、びっ、びっくりしあー」チキンなのに、心臓止まるかと思った。
「「優」」「格好悪いい」「私の時より驚いてる」
体をねじってキッチン側を見ると、真後ろに若い女性が立っていた。
シャツにブレザー、パンツ(下着ではなく、紛らわしい)、カラフルな靴下、整った顔立ち、赤毛に茶色い瞳、170cmぐらい、明らかに外人さんだ。
女性らしい曲線のラインなのに、ドロシーやルイーズ、ラヴさんとは明らかに異なり、対峙する人間に威圧感を与えてくる。
「マリィ、気配を消し勝手に上がり込んではいけません、お謝りなさい」
「申し訳ありません、お嬢様」「マリィ、お座りなさい、謝る相手が違ってよ」
「お嬢様、それは」「早くなさい」「ひゃい」
「優様、マリィの方へ向き直って下さいまし」
「はぁ、こうですか」
僕は“マリィ”と呼ばれ、未だ立ったままの女性の方へ向き直る。
「マリィ」「おっ、お嬢様、おゆる」
「我が家の執事たる者が、無礼をなす事は許しません」「ふえ」
彼女は僕達の目の前に来る、渋々正座すると、深々と頭をたれ、何故か三つ指をついて。
「だんなさまぁ、すえぇながく、そい、とげっ、とうっ、ございまぁすぅ」
正しく、誤ってくれた、どうして嘘教えるんだよ。
そうして、そそくさと立ち上がると、ラヴさんの方へ向かった。
ぽかん。「あいたぁ~」え~っと、執事さんは、ラヴさんの横に陣取った。
「旦那様も、奥様も、遠慮する事無く躾る様にと、申し付かっております」
「わたくしは帰りません、ここにいるのぉ~」
はあ~ぁ。と執事さんは拳をあげた。「きゃん」
「申し遅れました、私はお嬢様の執事兼ボディーガードを務めます、マリオン(Marion)・アームストロング(Armstrong)と申します」
彼女は僕達に名刺を手渡した。
「私は、お嬢様をお屋敷にお連れしなくてはなりません」
「お引越しですか、学校を変わられるんですか」
「いいえ、学業は続けます、只、お嬢様には許嫁の殿方とのご婚礼が有るのです」
「依頼は、・・・キャンセルですか」
「いえ、できれば心残りが無い様に完遂して頂ければと思います」
「「いまどき」」「それはおめでとう御座います」
「いぃーやっ、私は嫌なの」
「お嬢様は真法家本家の跡取りとなるお子を、一刻も早く生さねばなりません」
「嫌っ」また変な話になって来た。
「ならば、奥様はこうも仰せです、『もし、お慕いする殿方がいるのなら、お連れしなさい、会って差し上げます。』と」
「マリィ~、このお家の主に失礼です、座り直しなさい」
マリオンさんはラヴさんの横に、ラヴさんに向かって座っている。
「お嬢様、それには応じかねます」「早くなさい、失礼ですよ」「嫌です」
「早くなさい」「いやぁーーーっ」「きゃっ」
マリオンさんは、壁とラヴさんの間に無理やり入り込み、一気にラヴさんを抱えると、自身の膝に乗せ、自分はそこに座り込んだ。




