防虫剤の匂い
「きゃはははあ、くっくっくっ、がははははははあ、うっうっ、ぐるじぃ~」
「だあははははははははははあ、ごっ、・・・ごっ、ごっ、めん、ぐっぐっぐっ」
「「ぎゃああああはははははははあ」」「お腹、なあははははははあ、いだあ~ぃ」
「どっ、ドロシ、・・・ぶっ、ぎゃははははあ、ごっ、ごめん、ぶっしゅううっ」
「酷い、二人して、好きでこうなってるわけじゃないもん」
「ごめん、ドロシー、不意を突かれちゃって、つい、もう、落ち着いた、ぶっ」
「優、ひどいぃー、ルイーズも、どうして毎回そんなに大袈裟にするの、さっきの飴、返して、せっかく取っといて上げたにっ」
「大袈裟じゃないしぃー、めちゃくちゃ面白いんだもん」
眩い閃光と、熱線、熱波が治まり、ドロシーの福笑いの様になった目鼻立ちを目にした僕達は、込み上げる笑いを押さえる事が出来なかった。
「ぶううううっ」ドロシーが何気にそっぽを向いた。
僕はその顔を見てはっとする、とても美しいと思った。
僕は気付いた、この目鼻の配置は、ピカソの作品の様な、多角的視点から見た造形美なのだと。
「素晴らしい」「ぎゃははははははっ、ぐっぐっぐっ、ぐるいぃ~、死ぬぅ~」
「ルイーズいい加減にして」
ぎゅるるる。「はあぁ~っ、笑い過ぎて、お腹すいたあぁ~~~」
しかしこれでは『目立つ』と言う問題の解決にはならない。
この美しさを理解する人は少ないと思う。
このままでは、ドロシーを傷つける者が、きっと出て来る。
「ルイーズもういいだろ、それより、何か大きい布を持ってない」
「ん、あるわよ、どうするの」
ルイーズが幅30cmぐらいの結構長い、真っ黒な布をカバンから出してくれた。
「ドロシー、この布を顔に巻いてくれないか」ドロシーがうるうるする。
「違う違う、ドロシーは美しい、とっても可愛い、・・・だからその、他の男に見せたくないんだ」
「「えっ」」えっ、僕、変な事言ったかな。
「そ~う、そう言う事なら巻いてもいい、かなぁ~」
「・・・じゃ、私も可愛いから巻く」「いや、ルイーズは」睨まれた。
ルイーズがカバンからもう一枚出してきた、良く入るなあー。
で、二人共、頭から真っ黒な布を掛け、目だけが少し出るぐらいに布を巻いた。
ドロシーは服装的にちょっとアンバランスだけど、ルイーズはあの小さいカバンの何処に入っていたのか、真っ黒なセーラー服をだして、上から着こんだ。
黒い布、黒いセーラー服に黒い靴、ブロンドの髪に青い瞳、とても似合ってる。
これで家までは大丈夫だと思う。
「じっ、じゃ行こうか、でもルイーズは男の人を引き付けない」
「多分、・・・大丈夫、この服、防虫剤の匂いきついから、ママが無臭のやつ使わないの」
「まあ、取り敢えずよかった、その恰好じゃ、お店では食べれないから、先に僕の家に行こう、その後で僕が買い物に出てご飯を買って帰るよ」
「分かったわ、優」「お腹が空いて歩くのいやー」
「僕の家、ここから15分ぐらいだから」
「いやー、お腹空いたぁー、歩けないぃーっ、おんぶぅー」
「ねえ、ルイーズ、我がまま、そんな事したらまた襲われるから」
「大丈夫だもん~、ねぇ~、おんぶぅ~」
仕方無いな、もう日が完全に沈んでしまった、特売も気になるし。
僕はしゃがんだ。「わぁ~いぃ~、うんしょ、温かくてらくちぃ~ん」
「はいはい、しっかり摑まっててね」「ううううんもうっ」
おー、女の子の生太もも、すべすべしてる。
「こらー、さわさわするなー」「はい、御免なさい」「もうーーーーーっ」
しっかし、防虫剤の匂いすっごいなあー、これは虫付かないわー。