第6話 ドバーン
読者の皆様へ
•今まで筆者が書いてきたものには、誤字脱字がたまにあります。許してください。
•街中での銃の使用は法律違反です。真似をしないでください。
•銃で人を撃ってはいけません。
真似をしないでください。
•建物を落下させて人を下敷きにするのは犯罪です。
真似をしないでください。
(第5話より少し前•••)
2月10日 9:12 ガリア地方 某居酒屋のカウンター
ハクはネミーからテトラ•ロノーザ、ヴィラ•アプリシエイタル、ティア•ゴッツタインといった3人のロノーザ人について聞いていた。
「なるほどな。それじゃあ、ロノーザ王国の復活は二度と望まれへんな。」
ハクはガックリと肩を落とした。
「うん、普通は王族の血が途絶えても国家自体が滅亡するわけじゃないんだけど、ロノーザはちょっとね~。」
ネミーから聞かされた話はこういったものだった。
ーーー
そもそも本来バース星に、所持者は存在せず、ロノーザ星から渡来してきた人々が広めたものだ。
約90年前にロノーザからバースに、当時ロノーザ星中最強の力を持っていた所持者がやって来た。この人物こそヴィラ•アプリシエイタルだ。
彼女は"バグクェイク"によって荒廃したバースを憐れみ、コモン•ジーバンブー、アスプ•ジーバンブー、シェイド•テンポーを筆頭とした1000万のバース人に己の力を分け与えた。
その力を授かり所持者となった者達は、荒廃したバースを見事"バグクェイク"以前の状態まで再興させることができた。
初めて見る別惑星の生物に、初めは「エイリアンだ」「怪物だ」と恐れていたバース人も、ヴィラ•アプリシエイタルを救世主だと崇め、今となっては"始操神"と呼ぶまでになった。
そして、それから長い年月が経ち、バース合衆国とロノーザ王国となった二者は、親交を深めていた。しかし突如現れたルーガ星からの侵略者達に、ロノーザ人は故郷を奪われ、バース人も同じく滅亡の危機に瀕した。そして逃げ延びたロノーザ人達とバース人は共闘してルーガ軍に立ち向かうが、未だに決着がつかないまま今に至る。
そしてテトラ•ロノーザ。
この人物はロノーザ王国がルーガ軍の攻撃を受けた際に、当時の主要大臣及び僅かなロノーザ国民らと共にバースに逃げてきた者だ。
しかし、ルーガ軍の攻撃などもあり集団からはぐれてしまい、入念な捜索が行われているにも関わらず、現在も消息不明となっている。
これは今生き残っている全てのロノーザ人にとって大問題だった。
なぜなら、テトラ•ロノーザという人物は何を隠そう、先代の王と王妃の一人娘であり、ロノーザ王国最後の王だからだ。
病気で余命幾許もない先代が死に、このままテトラ•ロノーザが見つからなければ、王族の血が絶える事になって、ロノーザ王国の復活の見込みは無くなる。
それからティア•ゴッツタイン。
彼女こそが一時期テトラ•ロノーザではないかと噂されていた人物であった。彼女はルーガ軍の第1次バース侵攻の際にルーガ軍の総力約6~7割を単独で壊滅させるという恐ろしい戦績を残しており、亡き後もヴィラ•アプリシエイタルと並んで史上最強の所持者と称されている。
ティア•ゴッツタインは、その年齢や体質等から、テトラ•ロノーザと同一人物だと人々に噂されたが、何とティア本人は自らをヴィラ•アプリシエイタルの生まれ変わりだと自称し、テトラ•ロノーザ本人ではないと否定したのだ。
その後、公にテトラ•ロノーザ=ティア•ゴッツタインといった構図がメディアに取り上げられなかった事もあって、この件は都市伝説扱いとなった。
しかし、本当にティア•ゴッツタインがテトラ•ロノーザ本人だったとしたら•••
ーーー
「ハー君の意見はどーなの?1次侵攻の時にティア•ゴッツタインと会ったんでしょ?」
ネミーはハクの肩を指でつつきながら言った。
「あん時はそんな事考えてる余裕も無かった。てか、そもそもテトラ•ロノーザとヴィラ•アプリシエイタルなんて名前、初めて聞いたで。」
ハクは考え込むように顎をさすった。
ハクはバース人所持者の始祖的存在がいることを知っていた。そして、先代のロノーザ王とその王妃に子供がいることも知っていた。
しかし、ティア•ゴッツタインがバース•アヴァランの始祖的存在の生まれ変わりだと自称していたこと、現在のロノーザ王族の血が絶えかけていることは初耳だった。
ロノーザ王国の完全滅亡。
そのカウントダウンが刻一刻と迫っていることは、ハクにとって受け止めがたい真実だった。
「そーりゃそうだよ~。だって、公にはされていない国家機密レベルの情報だもん♪」
そう言ってネミーはニヤリと笑った。
「え、そんなん俺に教えて大丈夫なん?」
先ほどまでのハクの憂鬱が驚愕でどっかに飛んでいってしまった。
「大丈夫、大丈夫。ハー君って約束破らないし、口も堅いじゃ~ん。なにしろ○の○○だからね♪」
「なっ•••。」
「アッハッハ!ハー君ったら顔真っ赤っ赤!」
ネミーは、普段動じる事の少ないハクが、動揺しまくっているのが可笑しくて仕方がなかった。
「ここでクーイズ!なぜ先代ロノーザ王とバース政府はこの国家機密を国民に教えないのでしょ~か?」ネミーはなんとか笑いを静めて言った。
「そりゃ、国家機密やから•••っじゃなくて、ロノーザ•バース両軍の士気が下がるからちゃうの?」
「正解!
"ロノーザ王族の血が絶えかけている"
"死亡したティア•ゴッツタインは、バース•アヴァランの始祖の生まれ変わり"
"テトラ•ロノーザとティア•ゴッツタインは同一人物かもしれない"
ただでさえ"白金の翼"が死んだことで士気が下がってるのに、この情報を教えたらバース人はまだしもロノーザ人は絶望して戦えなくなるかもしれないからね~。」
ネミーはハクが期待通りの解答をしてくれたことが嬉しかった。
「さて、かなり話がずれたけど、ハー君は結局バング地方軍司令官に復帰するの?しないの?」
ネミーはハイテンションな様子から一変して、眼光を尖らせて言った。
「それは•••」
ーーー
2月14日 16:19 "戦場になっちゃった場所"
「邪魔な奴は居なくなった!残った奴を撃て!」
「でも、私達は通常弾しか持ってきてませんよ。せいぜい痛がるだけでは?」
「数多く撃てばいつかは倒れる!そうでなくとも、私の援護になる!撃ち続けろ!」
リスエットとその部下らしき人物の会話をよそに、ビットはリスエットの追撃から必死に逃げていた。
「ダントー!生きてるー!?」
ビットは、30m先の巨大角柱に向かって叫んだ。
リスエットは強かった。眼色が黄のビットに対してリスエットの眼色は黄橙だった。
相性はビットの方が圧倒的に有利なのにも関わらず、リスエットの攻撃をビットは避けるのが精一杯でダントの救出ができずにいた。
リスエットから受けた傷を左腕に"移動"させて、なんとか両足だけは機能できるようにしておいたが、もはや移動させられる傷の数が限界に近づいていた。
〔もう左腕の感覚がない•••。傷を一点に移動させ過ぎたかな•••?〕
ビットは自身の変形能力で、全身の傷を左腕に集めていたがもう左腕は原形をギリギリとどめているぐらいまでボロボロになっていた。
ビットはダントを下敷きにしている角柱を、巨大化させた右腕で殴った。
それでも全体がなかなか崩れてくれない。
「ダント、ごめん•••僕を庇って•••」
謝罪しながらビットは角柱を殴り続けた。
「セイッ!セイッ!セイッ!よし、やっと崩r」
「捕まえたぞ。」
やっとのことで角柱が崩れた瞬間、背後からリスエットに首を掴まれて14mほど投げ飛ばされた。
ゼエゼエと息を切らしながら、ビットが立ち上がると、四方八方から敵兵士の銃弾を撃ち込まれた。
「ギアアアア!!」
ビットが悲鳴を上げて倒れこむ。
「隙ありだ。」
リスエットの重そうな蹴りが腹にとんでくる。ビットは腹をドーナツ型に変形させて回避しようとした。
〔ダメだ!変形が間に合わない!〕
ドグッ!!
そのままみぞおちに蹴りを食らって、ビットは綺麗な血のアーチを描きながら、アスファルトに落下した。
「ナイス援護だ。諸君。」
「「「ハッ。光栄です。」」」
リスエットが自身の部下を褒めた。
「君が体を変形させようが、コチラは変形速度を上回る速さで攻撃すればいいだけのこと。にしても肉体を自由に変形できるなら、年齢や性別も変えられるのか?羨ましいな。」
リスエットはそう言いながら、倒れているビットにツカツカと近づいていく。
「ゴフッ!ガハッ!ゲホゲホ!そりゃ、どうも。」
ビットは吐血しながらも、なんとか立ち上がったが、すぐに倒れてしまった。
〔この人強い•••下手したら、半年前に戦ったペルスよりも•••ヤバいかも•••〕
バジュラ戦以来の強敵にビットは冷や汗をかいた。
リスエットはうつ伏せに倒れているビットの首を掴んで、自身と目を合わせさせた。
「何かお前は特殊な雰囲気がするな。」
リスエットがそのままビットの顔をじっと見つめた。
〔あれ、これもしかして油断してる?なら今のうちに•••〕
ビットはこっそり右腕に全身のアバリエナジーを溜めた。
「お前••••••女か?男か?それともまだ子供か?」
「さあ、どれだろうね!」
ビットは渾身の力を込めて、リスエットの顔面を殴った。
バゴッ
さっきとは逆に今度はリスエットが綺麗な血のアーチを描いて吹っ飛んだ。
が、ドサッと落下する事はなくスタッとアスファルトに着地した。
「痛って。これは油断した。まさかこの俺がエリアス以外の人に見とれt」
「隙ありだ。」
ダントが突然リスエットの背後に現れて、先ほどビットが殴った場所を野球のバットよりふた回りも大きそうな鉄柱で叩いた。
リスエットが再び宙を舞って、綺麗な血のアーチを描く。
「「「「「リスエット隊長!!!!」」」」」
激昂した敵兵士達がダントとビットめがけて、四方八方から銃弾の雨を降らせた。
「ビット伏せて!」
ダントがビットの上に覆い被さって、銃弾を全て受けた。
「おい、緑メガネ!さっき俺が落としたマンションで下敷きになってただろ!!何で生きてんだ!!」
2連続で同じ場所を殴られて頭にきたリスエットは、銃弾を身体中に受けているダントに怒鳴った。
「タンクタイプだからだよ!」
銃弾を全身に受けながらも、ダントは言い返した。
「撃ち方やめ!こいつらはもう俺1人でぶっ潰してやる!」
完全に頭にきたリスエットは部下に銃撃を止めさせると、ダントとビットに一歩近づいた。
「•••!ヤバい、ビット逃げるよ!!」
ダントはまたもや嫌な気配を察知して、ビットを抱えると、リスエットに背を向けて一目散に逃げた。
「え、ちょっ•••ダント?一体どうしt」
ズゴオオオン!!
二人がさっきまで居た場所に、ダントを踏み潰した角柱の2、3倍はありそうな物体が4本落ちてきた。
そのうち一本が危うくダントの脳天にぶつかるところだった。
「アイツ、さっきまで全然本気じゃなかったの!?」
ビットが真っ青になった。
「ダント、もう降ろしていいよ!歩けるから!」
ビットはそう言って降ろしてもらって、ダントと並走した。
二人が走るすぐ後ろに巨大な角柱が次々と落ちてきた。
「どうする?接近戦ならあの角柱落としはできないだろうけど、接近戦で勝てる?。」
ビットが走りながらダントに訊いた。
「足止めならできるけど、ビットが手も足も出ない相手に勝てるとは思えないよ。っていうか、傷は痛まない?」
ダントは走りながら首を横に振って言った。
「リスエットに受けたダメージは全部左腕に移動させてるから、大丈夫。ダントこそ僕のせいで右腕が•••」
ビットは短くなったダントの右腕を見て、意気消沈した様子で言った。
「ああ、これならナーズさんにくっつけてもらうよ。大丈夫大丈夫。」
ダントは千切れた右腕を左手で持って、笑って言った。
と、またダントの頭に嫌な感情が流れてきた。
「止まってビット!」
ダントはビットの手を掴んで立ち止まらせた。その直後、
ドオオオン!! ドオオオン!! ドオオオン!! ドオオオン!!
大きめの体育館ぐらいの大きさの角柱が、二人の進行方向に落下した。
前後を塞がれた。
二人は左右に逃げようとしたが、同様に塞がれてしまい、囲いの如く、上空以外の逃げ道が全て無くなってしまった。
〔〔まずい•••〕〕
二人がそう思っていると、今度は今までで一番大きい角柱が二人の頭上に落下してきた。
ダントは必死に頭を回転させた。
〔地面を掘るか?イヤ、間に合わない!上からビットだけでも脱出させる?イヤ、高すぎる!囲いを壊す?イヤ、間に合わない!俺は万が一死なないとしても、ビットがやられる!〕
ビットも必死に考えを巡らせた。
〔地面を掘る?ダメ、間に合わない!上からダントだけでも脱出させる?ダメ、高すぎる!囲いを壊す?ダメ、間に合わない!私は角柱の隙間から、肉体変形で脱出できるけど、ダントは逃げられない!〕
「ダント、ビット。手を上げろ。」
誰かの声が聞こえた。
低く、調子の変化の無い、淡々とした喋り方。
〔〔あれ、この声って•••〕〕
二人は声の言う通りに手を上げた。
二人はその声の主に掴まれて、空高く(と言っても20mくらいだが)引き上げられ、囲いの外に脱出させられた。
「「ハンナ!」」
ダントとビットは驚愕と感激が混ざった声をあげた。
二人を助けたのはハンナだった。
「オイ、ダントにビット。建物でお手玉してる奴はアイツらか?」
ハンナは遠くのリスエットを見た。
「そうだよ。気をつけてハンナ、アイツは強い。」
ダントはハンナに真剣な表情で言った。
「うん、攻撃範囲と身体能力がペルス以上。能力は念力っぽいけど。」
ビットが念を押すように言った。
「それは厄介だな。」
ハンナが言った。ダントとビットそれに対して頷く。
しかし、ハンナはこう言った。
「まあ、相手が俺じゃなかったらの話だけど。」
キャラ図鑑6
カロワ•ヴァンテルア(今回も未登場キャラですみません)
身長 171cm
体重 64kg
17歳
♀
11月1日誕
血液型Rh-O型
趣味:剣道、人助け
嫌いなもの:命を弄ぶ人、人が死ぬこと
好きなもの:喜んでくれる人、フルーツ、星
外見:黒髪ロングヘアーに赤色のタレ目。
得意:接近戦
不得意:遠距離戦
エナジーレベル:100(フェーズ3)
眼色:赤
戦闘タイプ:オールマイティ
ステータス
攻撃:☆☆☆☆☆
速度:☆☆☆☆☆
頭脳:☆☆☆☆☆
能力:☆☆☆☆☆
体力:☆☆☆☆☆
ダントやハク達の師匠であり、ルーガ軍の1次侵攻の際にゾー•ジーバンブーらと共に戦った英雄。
高い戦闘力を持ち、"暁闇"の異名で恐れられた。
数年前にダントやハクといった仲間や弟子を助けるために自ら犠牲となって、ルーガ軍に捕らわれる。
また、その際にダントに自らの眼色と、自らの愛刀が収納されている"リング"を渡す。
心優しい性格で、困っている人や理不尽な事を放っておくことができない。