第3話 再
作者より
今回は、一部グロ表現があります。
責任をもって読んでください。
マジで気をつけて下さい。
12歳未満は読書の中止を推奨します。
また、未成年飲酒は犯罪です。
2月6日(火) 0:10
ダントはハンナがやっていた事に特に驚きはしなかった。敵の捕虜に暴力を振るって問題になった隊員の情報がごく稀に耳に入ることもあるし、ハンナが降伏した敵の眼球を躊躇なく握り潰す光景なんか今までに何度見たことか。
が、今回ばかりは話が違う。ハンナが拷問していた二人組はルーガ軍の兵士はおろか、所持者ですらない者なのだ。いくらなんでも放ってはおけなかった。
「安心しろ。別に殺そうって訳じゃない。」
ハンナがダントに向かって放ったその言葉を聞いて、二人組の感情から不安や恐怖が消えるのを、ダントは察知した。
「そんな事、訊いとらん。
所持者でもない人間を、しかも同じバース人を拷問するなんてどういうつもりやねん。」
ダントと一緒にその場に駆けつけた、ハクがハンナに向かって怒りをあらわにした。
しかし、そんなハクを見てハンナは鼻でフッと笑った。
「今のは笑うとこじゃないでしょ•••」
同じくダントと一緒にその場に駆けつけた、ビットが驚きと呆れの混ざった声で言った。
ハクの目がどんどん吊り上がっていく。
「おい、逆に聞くがお前らならコイツら二人組に情報を吐かせられると思ってるのか?
生ぬるいことばかりやってるから敵にもナメられるんじゃないか?」
ハンナは違うか?とでも言いたげに、肩をすくめた。
ダントとビットは言い返せなかった。確かにハンナの言うことも一理ある。実際にそれで敵の策にはまりそうになったことが何回もあった。
「そんな事は重々承知の上や。
だからこそ同胞を攻撃したアカンやろ。」
ハクは黙ることなく、ハンナの意見に同意した上で、事の本軸の問題について言った。
「はあ、どいつもこいつもカロワ•ヴァンテルアの影響を受けて、弱体化しやがって。」
ハンナは溜め息をついた。
「ねえ、今•••カロワの事を冒涜したの?
師匠がどんな気持ちで戦ってきたか••分からないの••?」
ダントはハンナの言葉を聞いて、突沸でも起こったかのように怒りが吹き上がってきた。
「いや、"誰一人見捨てない"のスローガンは素敵だろう。
俺もそんな綺麗事を昔は夢見ていたさ。
•••だが、そんな考えじゃいつか足元をすくわれる。
ダント、お前の師匠はそのせいで敵に捕まったんだろう?」
「•••!」
ダントはまたしても言い返せなかった。
「もうええ。
お前の言うことに関係なく、以後このようなことはするな。」
ハクはそう言うと、例の二人組をビットと一緒に警察に引き渡しに行った。
ーーー
2月10日 8:17 アウェインホテル 1F 食堂
ダントとシフォルンとビットは、朝食を食べていた。
「結局、例の二人組は誰に依頼されてたん?
なあ、ビット。」
シフォルンはだし巻き玉子を食べながら、ビットに訊いた。
「それがまだ捕まってないらしいんだよ。
ハクから聞いた話だと、バング地方に嫌がらせをしようとしたガリア地方の誰かって事らしいけどね。」
ビットはそう言って味噌汁を啜った。
「そう言えば、最近ガリア地方からバング地方に対する嫌がらせがこれ以上ないほど激化してるらしいなあ。
他の地方でも、"バジュラ"の戦いで起こった責任の押し付け合いで、どんどん溝が深まってるって聞いとるわ。」
シフォルンは米飯を口に放り込んだ。
「うん•••俺達頑張ったのにね•••。」
ダントはそう言って、その戦いの事を少し思い出した。
ーーー
ルーガ軍の2度目の侵攻が本格的に始まった半年前。
敵の最高兵力がバースの首都メルスなどの主要都市を襲い、数多くの命が失われた。その数約3000万。
160~170人に1人ぐらいの人が死んだ。
救出できた一般人は、全体の4割にも届かない。
その時の戦いをダントは良く覚えている。
死闘だった。
目の前でさっきまで自分を励ましてくれていた上官クラスの人が首だけになって、転がってきた事。
昨日知り合ったばかりの仲間が、炎で丸焦げになって落下してきた事。
自分を庇った老兵が左右真っ二つになって、内臓がグチャグチャになっていた事。
自分よりも年が幼いであろう子供達が一ヶ所に集まって、巨大な肉塊と化していたこと。
町の黒い道路が血でみるみる赤黒く染まっていった事。
四方八方から、「痛い」「誰か助けて」「死にたくない」という声や言葉にならない叫びに耳と心を痛めた事。
救出に成功した市民を運んでいたら、既に手遅れの状態で、自分の腕の中で死んだ少年が居た事。
両腕と顔の皮を失っても、笑いながら襲いかかってきた強敵が居たこと。
思い出せばキリがない。
あの戦いで名前を訊く前に死んでしまった兵士も数多い。
そして、今もその爪痕は深く残っている。
ーーー
あの戦いを思い出して、ダントとシフォルンは箸が止まった。
「• • • 。」
「• • • 。」
「ユリアもあの戦いで死んだんやったな• • • 。」
シフォルンは戦友の名前を口に出した。
「うん• • • 俺達を庇って • • • 。」
ダントはテーブルの上をただ黙って見つめた。
「ん?ちょっと待って?
ユリアはまだ死んでないよ?」
ダントは、はっと気づいてシフォルンに確認した。
「ユリアちゃんは、まだ意識が戻らずに昏睡中って聞いてるけど、シフォルンまさか•••。」
ビットは最悪の事を察した。
〔まさかユリアが病院で息を引き取ったのか?〕
ダントは寒気がした。
「• • • 。」
シフォルンは何も言わずに黙ってうつむいた。
「ねえ、シフォルン。冗談• • • だよね • • • ?」
ビットは真っ青になりながら、シフォルンに詰め寄った。
「冗談だって言ってくれよ•••なあ•••。」
ダントも少し青くなりながら、シフォルンに詰め寄った。
「 • • • 。」
シフォルンは何も言わずに黙ったままだった。
〔〔嘘だ• • • そんな • • • 。〕〕
二人が絶望しかけた瞬間だった。
「生っっきとるでええええええ!!」
テーブルの横からいきなり大声が聞こえて、ビットとダントはびっくりして跳びはねた。
ユリア•ゼズリン。
ダント達の戦友が車椅子状態でそこにいた。
「ユリアあああ!!よがっだよおおお!!じんばいじだよおおお!!」
ビットがぼろぼろ涙を流しながら、ユリアに抱きついた。
「良かった~シフォルン、ヒヤヒヤさせないでよ。」
ダントはホッとして、背もたれにもたれ掛かった。
「エヘヘ、1週間ぐらい前に外出の許可を貰えてん。
まだ、リハビリ中やけどな。
• • • ビットちゃん、そんなに抱きしめたら痛いで。」
そう言って、ユリアは笑った。
「そもそも、状態が良好に向かってたから一般の小さめの病院に移されたんやろ?死ぬわけないやん。」
シフォルンが言った。
ユリアは左脚と左腕にギプスを着けていて、顔の下半分が包帯で覆われて、左首筋には火傷の跡があった。
「ハハ、感動の再会だ。まだ歩くことはできないし、物を持つので精一杯だけど、医者曰く順調に回復しているらしい。」
ユリアの車椅子を押していたシンが言った。
「おお!これはこれはシン•ワーグナー、我らの大将ではありませんか!」
「おいおいシフォルン、公の場でもないのに何で敬語なんだよ。」
シンがシフォルンのおふざけに笑った。
ーーー
シン•ワーグナー。
ダント達が所属するバング地方第39師団(40まである)を率いるリーダー。
何故そんなお偉いさんがこんな下っ端と仲が良いのかというと、シンプルにそういう人だからである。
ーーー
「ところで意識が戻ったのはいつなの?」
ダントはふと思った疑問をユリアに訊いた。
「ああ、それなら3週間前やで。
あの時の両親の喜ぶ顔と来たら • • • ムフッ、ウフフ。」
ユリアは思い出し笑いをした。
「悪いなダント、ビット。ちょっと驚かしてやろうと思うてシンとユリアに来て貰ったんや。」
シフォルンは満足そうに言った。
「うっわ~、流石シフォルン○○○○だあ。」
ユリアに抱きついたままビットが茶化した。
「ぐっはあ、おいおいそれはひどいて~。」
シフォルンの心臓を貫かれたようなジェスチャーに、全員が笑った。
でも、この場にハンナとハクが居ないことがダントは少し残念だった。
〔あの二人今何してんのかな•••〕
ーーー
同時刻 ガリア地方 某酒場のカウンター
「何だか拍子抜けでしたね。
予想が良い意味で裏切られたと言いますか。」
ハクは隣の"ロノーザ•バース合同軍最高司令官"であるネミー•リゲイトに言った。
「まだだ。
彼らは目的のためなら、本性や本音を一切表に出さないことだってある。」
ハクはこのお偉いさんとガリア地方の思想調査をしていた。
最近、ガリア地方とバング地方の互いの地方に対する嫌がらせがこれ以上ないほど激化してる事を受け、はるばる600海里を渡って来たが、思ったほどバング地方を嫌っている様子の人がいないのだ。
むしろ、バング地方の方が多いくらいだ。
「まあ、少なくともあと5週間は行うぞ。」
「はい、かしこまりました。」
ネミーの言葉にハクは従った。
「しかし、お聞きしたいのですが、何故私ごときが最高司令官との調査に呼ばれたのでしょうか?」
ハクはガリア地方に着いてから、ずっと疑問に思っていたことを口にした。
それを聞いて、ネミーは少し沈黙するとハクの方に体を向けた。
「まさか、調査の為だけに君を呼び出したとでも?」
ネミーは不敵な笑みを浮かべた。
「• • • まさか • • •!」
ハクはネミーが何故自分を呼び出したのか分かった。ネミーが次に言う事は容易に予測できた。
「そのまさかだ。」
ネミーはそう言うと、一枚の紙をハクに手渡した。
その紙を見て、ハクはゴクリと唾を飲み込んだ。
緊張が走る。
ネミーはハクが紙の内容を読んだことを確認すると、こう告げた。
「"轟音"のハク。
再びバング地方の総大将に戻ってみる気は無いか?」
キャラ図鑑3
ハク•テンポー
身長158cm 体重54kg 18歳 ♂5月21日誕
血液型A型
趣味:筋トレ、シフォルンとどこかに遊びに行くこと、映画観賞。
嫌いなもの:
ホラー映画でわざわざ死ぬって分かってるのにルール破って死ぬ人、
ゾンビ映画で人同士で殺しあいを始める人、
立場が不利になった途端被害者面する人
好きなもの:エナジードリンク、睡眠、唐揚げ
外見:水色の短髪で青色の目。かなりイケメン。
得意:味方援護及び敵の妨害
不得意:敵の撹乱
エナジーレベル:87(フェーズ2)
眼色:青、黄
戦闘タイプ:サポーター
ステータス
攻撃:☆☆☆☆
速度:☆☆☆☆
頭脳:☆☆☆☆
能力:☆☆☆☆☆
体力:☆☆☆
テンポー家の長男として生まれた、ロノーザ人とバース人のハーフ。乳児の頃に故郷のロノーザからバースに亡命した。
真面目な性格で、おふざけ気質なシフォルンとは相性が悪いと思われがちだが、乳児の頃からの幼馴染みで仲は良い。
しょっちゅう二人でいろんなところに遊びに行く。
軍の中でもかなりの優秀人材と認められている。
国家反逆を行ったダントの監視と、正体不明のハンナの管理を任されており、
ハンナとダント両方の面倒を見ることに手を焼いている。
ちなみに、ルーガ軍の一回目の侵攻の時は、バング地方軍のトップを務めていたが、今は下っ端に自発的に移動している。
※背が低いことを非常に気にしている。