第2話 別地方
読者の皆様へ
拷問は犯罪です。絶対に真似をしないでください。
銃の所持は犯罪です。絶対に真似をしないでください。
恐喝は犯罪です。絶対に真似をしないでください。
23:16 アウェインホテル6F客室
ハンナは目が覚めた。旅館の一室だ。
この部屋まではダントが運んでくれたのだろう。
3時間前に夕食を食べ終わって、ハクらとダントの雑談が盛り上がってきたところから記憶がない。そこで寝てしまったらしい。
窓のカーテンを開けて、外を見た。
海が見える。
そこでボーッとしていると、窓から少し遠いところに怪しい人影が見えた。
この辺り一帯は銃の所持が禁止されているのに、明らかに本物の銃を持って、周りをキョロキョロしてる男がいる。
ハンナは部屋の入口から靴を持ってくると、窓を開けた。さんのところで靴を履くと、地面からの高さ約18mの窓から飛び降りて、ほとんど音を立てずにフッと地面に着地した。
降りた場所から、その男がいる方へ移動した。
だんだん周囲から目立ちにくい場所に移動してるのを気にも止めず、ハンナはその場所に着いた。
黒い人影が旅館の建物の壁をよじ登っている。
作業員ではない。顔は分からないが、服装は確認できる。作業員ならば、装備なし制服なしでこんなことはしない。
ちょうどここなら人が明らかに怪しいことをしていても、気づかれにくいから当然だろう。
「ここで何してる。」
ハンナが人影に話しかける。
すると、突然後頭部に硬いものが突きつけられた。
この感触は・・・間違いなく拳銃だ。
「いやあ、ちょっとお掃除をしようかと思いましてねえ。ちょうどアナタみたいな人を。」
「別地方の人間か?」
一切動揺する素振りをせずにハンナは言う。
「だーいせーかーい。よく一人でこられたね、バング地方の少年。」
背後の男は勝ち誇ったかのように言った。
ーーー
今、バース国は9の地方に分かれている。
人口は多いが経済が不安定なキルファ
人口は少ないが資源が豊富なジニストア
人口、経済共に豊かなアプルイ
治安が悪く、ほぼ無法地帯なワースト
宗教や食文化が盛んなオープス
自然豊かで、排他的なウリザリス
経済、人口、技術全てが最高数値の中央都市メルス
治安が良く、全地方の中で唯一銃の所持が禁止されているバング
そして治安は良いが、民度が二極化しているガリア
ガリアとバングは隣同士の地方でありながら、資源や領域などで対立することが多く、こっそり諜報員を違法に送って、技術を盗み合うことも多い。
特にガリア地方には、バング地方に恨みを持つ人も多いため、和解は中々に困難な状況だった。
無論、ルーガという共通の敵がいて、協力しなければならないという状況でも、尚のこと両者は対立を深めるばかりだった。
ーーー
「あまり大事にしたくないんだ。大人しくしててくれないかい?騒ぎを起こしたくないのはお互い様だろう?」
男は同意を強要するように言った。
〔この地域に銃持ってきてる時点で既に大事だろうが。〕
ハンナはそう思って呆れながら、手を上げて無抵抗の意思を示した。
「おい、急げよお?この少年がコッソリ助けを呼んでるかもしれないし、気が変わって抵抗するかもしれないからねえ。」
男は壁をよじ登ってる人影に話しかけた。
人影が頷いて、壁の更に上へと登っていった。
「僕らの目的が気になるよーだね、少年。」
男はハンナに猫撫で声で、言った。
それを聞いて、ハンナは溜め息をついた。
「お前達の考えてることは容易に想像がつく。どうせ、この旅館で爆破を起こして、原因をバングの所持者に擦り付けるとかだろう。
丁度、今の旅館には結構な数のガリア地方民が泊まってる事だからな。」
それを聞いて、男は感嘆の声を挙げた。
「凄いなあ。今の状況で、そこまで分かるとは、子供の割に鋭いじゃないか。•••まあ、気付いたところでだけどね。事件の後に君が証言をしたって、その前にマスメディアが世論を固定させるだろうからね。」
それを聞いて、フードに隠れたハンナの口がニヤリと口角が上がった。
「認めるんだな?」
「ああ、もちろん。どうせ、君に真実を話したって大人は子供の言うことなんか聞かないからね。」
男は余裕ぶった様子で言った。
〔馬鹿が。それを言わずに黙ってれば良いものを。〕
ハンナは男に心底呆れ果てた。
「なあ、何でさっきから俺がお前達に対して大人しくしてるか分かるか?」
ハンナは男に質問した。
「?」
次の瞬間、男の銃を持っていた手が音もなく切断された。
「っ•••?」
男は一瞬のことに声が出なかった。
切断された手首が地面に落ちるとほぼ同時に、ハンナは男のみぞおちに、音もなく蹴りを打ち込んで気絶させた。
ーーー
5秒後 アウェインホテル7F客室
先程の壁をよじ登っていた人影は、窓から建物の中に侵入した。
そして建物内の廊下に足をつけた、その瞬間だった。
「玄関からじゃ危険物の持ち込みは出来なかったのか?」
ハンナは既に待ち構えていた。
その人影は声をあげる間も無く、先程の男同様に無音蹴りをみぞおちに打ち込まれて気絶した。
ーーー
23:50 アウェインホテル外 某所
ハンナに倒された二人は目を覚ました。
互いの手元を確認する。拘束されていないし、身体に何かされたような感じもない。
「ここはどこだ?」
周りを見渡すと、どうやらどこかの建物の一室らしいが、全く場所の見当がつかない。
「お前達が好きそうな、人目につかない場所だ。」
ギイイイと音がすると同時に人の声がした。
二人は重そうな扉を開けて入ってくる人間を見た。
さっき、自分たちを制圧した人だ。
「お前達がやろうとしたことは、もう証拠を取ってある。言え。誰に依頼された?」
ハンナはそう言うと、ボイスレコーダーを再生させた。
<お前達の考えてることは容易に想像がつく。どうせ、この旅館で爆破を起こして、原因をバングの所持者に擦り付けるとかだろう。
丁度、今の旅館には結構な数のガリア地方民が泊まってる事だからな>
<凄いなあ。今の状況で、そこまで分かるとは、子供の割に鋭いじゃないか。•••まあ、気付いたところでだけどね。事件の後に君が証言をしたって、その前にマスメディアが世論を固定させるだろうからね>
<認めるんだな?>
<ああ、もちろん。どうせ、君に真実を話したって大人は子供の言うことなんか聞かないからね>
〔さっき、録音されてたのか•••〕
男はその音声を聞くと、観念したように天を仰ぐと、口を開いた。
「依頼はされていない。俺たちの意思でやっt」
言い終わりを待たずに、男の口にハンナの重い蹴りが命中した。
男は呻き声をヒイヒイあげて床に転がり、男の歯がいくつか散らばった。
「"事件の後に君が証言をしたって、その前にマスメディアが世論を固定させるだろうからね"お前はそう言ったな?何故実行してもいないのに、マスメディアが世論を固定させれることが分かる?」
ハンナは男の左腕を掴むと、肘を本来曲がらない方向に、力ずくでゴキッと折り曲げた。
「グアアアアア!!!!」
男の悲鳴が部屋にガンガン響く。
「さて、これでまず一つ目だ。お前は関節何本目で吐く?」
ハンナそう言いながら、男の右腕を掴んだ。
「待て!私が話す!その人を拷問しないでくれ!」
女が悲痛な叫びをあげた。
「お前には聞いていない。」
ハンナはそう言って女の胸ぐらを掴むと、壁に叩き付けた。女はグハッと胃液を吐くと、その場に寝転がってヒイヒイ言った。
「依頼は•••された•••高い金でな•••そいつは•••色んな所に•••顔が利くらしい。」
男は喉からヒューヒューと音を漏らしながら答えた。口と腕の激痛で一言発するだけでもかなりキツい。
「そいつの名前は?」
ハンナは男に詰めよった。
「知らないんだ•••高額な金を•••上乗せする変わりに•••互いの事には•••明かし合わない•••約束で•••。」
男は声を必死で絞った。
少しでも発言を止めたら、目の前にいる怪物が喉を掻っ切って来そうだった。その上、この怪物は自分が銃を後頭部に突きつけた時から、一度も声や口調に調子の変化がないのが余計に恐ろしかった。
人を人とも思わない、人命を奪うことに何の躊躇もない、そんな殺戮兵器に見えた。
「でも•••そいつと•••取引を•••した場所と•••時間とか•••取引金額•••そいつに•••繋がりそうな事は•••なんでも•••教えr」
「もういい、十分だ。お前らが持ってる情報に価値はなかった。もう用済みだ。」
ハンナは男が言い終わる前に淡々と言い放つと、二人を引き摺って、運び始めた。
男は絶望した。殺される。もう抵抗する力もない。
「ま、待って!!話す価値のある情報はまだあるはずよ!」
女は危機を脱する可能性を期待して、ゲホゲホと喉に引っ掛かった胃液を吐きながらも、対話を試みた。
「も、もし私達を殺したら、あんただって面倒なはずよ!私達が持っている情報が手に入らなくなるし、あなたも殺人の容疑がかかって•••。」
そこで、女は口を閉じた。
もはやいくら言っても無駄だ。手足の抵抗も、怪物の怪力の前では無力だ。
もう既に怪物の考えは確定しているようだった。
〔死ぬの?こんな子供に?せっかく良い金脈にたどり着けたのに•••こんな所で?〕
女は事実を受け入れられなかった。
自分たちは何回も依頼を成功させて、金を手に入れてきた。失敗なんかしたことが無い。
でも終わる。こんなあっさり。
そんなことを頭に巡らせていると、怪物が進む方向に何やら別の少年が現れた。
「ハンナ、一体何してるの?」
緑髪にメガネの少年は怪物をハンナと呼んだ。
キャラ図鑑2
ハンナ•ティーチ
身長135cm 体重25kg 18歳 ♀1月2日誕
血液型AB型
趣味:睡眠、漫画
嫌いなもの:ネバネバした液体、体格の大きい男、やたらとベタベタくっついてくる人、人混み、騒音等々多数存在
好きなもの:自分を受け入れてくれる人、べっこう飴、うどん、鳥
外見:常に白いフードを深く被っており、他人に肌を見せることも全く無いため、不明
得意:短期決戦、力勝負、頭脳戦
不得意:持久戦、水中戦、精神戦
エナジーレベル:130(フェーズ3)
眼色:不明
戦闘タイプ:アタッカー
ステータス
攻撃:★★★★★★(Max)
速度:★★★★★★(Max)
頭脳:☆☆☆☆☆
能力:☆☆☆☆☆
体力:☆
生い立ちについてはほとんど不明(迫害を受けていた地域に住んでいたという噂があるが•••)。
敵巨大天空要塞破壊作戦の際に、救出されたロノーザ人で、高数値のエナジーレベルを持つ。
親友ティア•ゴッツタインを敵軍幹部のバッシーガに殺され、仇を討つため利害が一致したダントと協力関係を結ぶ。
あらゆる毒やウイルスに侵されており、本来生きること自体困難な状態だが、常に無理矢理アバリエナジーを体に高速循環させ続けることで、戦闘を可能にしている。