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第二話

 この小説には、憂鬱しか含まれていない。ただ、私の心の暗がりを、ここに辿り着いた馬の骨達に押しつけるだけの物語である。……いや、物語の体裁すら保っていないだろう。起承転結も曖昧で、まして異世界に転生することも無い。しかし、誰かに読んで欲しいのだ。

以下本編


 ここに一つの心がある。心を具現化することは今の人類には叶わないが、便宜上、色と形を決めようと思う。心の色は紫。それも紫芋の様な紫でなく、鬱血の様な紫だ。所々に血管の様な物が見られ、偏在的に膨張と収縮を繰り返している。今にも内容物の、おそらくどす黒い液体が出てきそうである。形はと言うと、ハート型。しかし、処々の変形が酷い。ハート型だと言われたからこそ、ハート型に見えるのであって、前提が無ければ恐らく形容し難い形であった。なぜなら、知覚可能な形とは人に依って違うからだ。

 こんな心も、自己の醜さは感じ取っている。鬱血はいかにもグロテスクで、観る者に吐き気を覚えさせる。膨張している部分は痣の様だ。しかし、真に醜いのは外見でない。中身だ。どす黒い液体が渦を巻いている。渦もおおよそ渦としての体裁を殆ど失っている。宇宙のカオスにすら似た渦である。渦の中央には虚空が存在し、心の空虚さ、生への意志の欠落を体現している。白い粘液と対を成す黒い漿液は、留まる事を知らない。きっと心が張り裂けて、活動を停止するまで、留まらないのだろう。

 渦巻く漿液の中。最下層。心の底溜まり。ここには最もどす黒い固形が溜まる。渦に置いていかれ、渦に再浮上することもなくただ、じっと底にへばりついている。この固形が心を内側から破壊する。知らず知らずの内に心の壁を溶かす。ミュータンス菌の様だ。


 全くもって醜い。一体何故人々は心を仕舞っておけるのだろう。

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