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第一話

 この小説には、憂鬱しか含まれていない。ただ、私の心の暗がりを、ここに辿り着いた馬の骨達に押しつけるだけの物語である。……いや、物語の体裁すら保っていないだろう。起承転結も曖昧で、まして異世界に転生することも無い。しかし、誰かに読んで欲しいのだ。

以下本編。

 

 そも、事の始まりは紀元前。恐竜なんかは既に死滅している。もはや爬虫類と両生類、それからゴミにも近い哺乳類だけがいる。咲き誇る花の美しさを感じる者は存在せず、ただ、閉鎖的な精神世界と、何も感じぬ共同世界、そしてほぼ白紙に近い認識世界があるのみである。ただ一つ例外がある。それがこの、バケツたる私だ。金属製で叩くと騒々しい。使う生物が存在しないせいで、バケツとしての生を全うしているとはいえない。無論、中に生臭い、赤黒の液体は入っている。バケツの置いてある床に、フローリングは存在せず乾ききった大地と、健気な草が生茂る。やはり観測する者がいないので、草は草以上でも以下でもない。バケツの中の液体は自ら流を作っていて、命が宿ったようである。いや、死んでいるに決まっている。当然だ。ただの水流。しかし流れは速く、時々溢れていく。いったい溢れた水を何と表現するのが相応しいか分からぬが、この水は床を塗らし始める。乾いた大地においては、この水は貴重なものである。だから、溢れた事を咎められない。何度も言うが咎める人間はいない。やがて大地は生臭くなる。当然だ。生臭い水で乾きを治そうとしたのだから。しかし、大地に優しいのは水だけのようだ。燦燦と照りつける太陽が即座に大地を干乾びせ、生臭さだけを大地に残した。そしてこの生臭さを残した床には、やがて鼠が来る。生臭い甘美につられバケツに嵌る。そうして生き血を貯めるのが、私の仕事である。

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