5話 魔物との戦闘
昨日おとといは投稿せずに申し訳ありませんでしたが毎日投稿はしないと明言しているので俺は悪くありません。
王城の豪華な食堂で食事をとってから、ギルダーさんに連れられてスライム討伐へ向かう。いや、悪魔とのハーフなのだが。
その集合場所は冒険者ギルドの時と同じ王城の正面門で、そこには既に『神国四戦騎』の内2名、『爆騎』ラファエル=ステイシア=アラナンド――その名前が表す通り王族だ――と、言わずもがなギルダーさんである。
「ラファエル殿下は爆炎を操る魔術剣士であります。魔力での直接攻撃でない以上悪魔の性質は効果がないのだが、爆発はである以上粘性も効果を為さない。相性のいいお方です」
「そうなのか……ヒントは爆発、か」
勇者ならば技くらい作れそうなものであるが。
「爆発ならば、王家に代々伝わる剣術『王龍剣術』の【王龍咆哮】を使うのがいいでしょう。アリア殿下が教えてくださると思います」
今度アリアに訊いてみよう。恐らく教えてくれるだろう。
……。
多分。
ともかく。今は【王龍咆哮】を使うことは出来ないので結局、役立たずという事である。そもそも今回の戦いに俺を連れてきた意図は戦闘を見学させることらしいので、目的は達成できる。戦う必要などはない。
緊迫した空気の中、ラファエルさんが少ない予備動作で、しかも高速で動き出すとスライムはそれを見切っているかのように硬化させた触腕で打撃を叩き込もうとするが――ギルダーさんが瞬時にそこに割り込み、硬くなっている触腕を1撃で斬り飛ばす。その援護もありラファエルさんはスライムの本体近くに辿り着く。
スライムは慌てたように小さな触腕を大量に出して近づいてきたラファエルさんを迎撃し、当のラファエルさんは爆発の力を溜めておいたらしい刀身を触腕に触れさせることで爆発を起こし、触腕を纏めて散り散りに処理する。
たった10秒にも満たない一瞬の攻防だけで、神国四戦騎の実力の高さ、そしてスライムと四戦騎の実力差が目に見える。移動や行動の一つ一つがとにかく速い。そしてスライムは全く対応できていない。
俺がそこまで思考する間に、スライムがさらに増やした触腕をギルダーさんがまとめて斬り落とし、ラファエルさんが止めを刺そうと技名を呟く。
「……爆焔斬」
何とも厨二風な技名であるが、この世界がファンタジー世界であるから仕方のないことなのだろうか。
その技はとんでもない威力を誇っている。いくら踏ん張っていた訳ではないとはいえ、騎士の一部が後方に吹き飛ばされているほどである。スライムは当然のように跡形も残らず消し飛んでいる。
「流石ですな、ラファエル殿下」
「まあ……」
素直に実力に感動したのか、あるいは身分の差からか、ラファエルさんを賞賛するギルダーさん。ラファエルさんはそれに対して困ったようにはぐらかす。
「勇者様」
唐突にラファエルさんが俺に話しかけてくる。話しかけられる内容に心当たりはないので、俺は思わず首をかしげてしまう。
「?」
「戦いの内容……参考になりましたか?」
明らかに同等以上の身分と格上の実力を持つラファエルさんに対し、どうやって答えるか一瞬は逡巡したものの、結局正直に答えることにした。
「……正直、レベルが高すぎて全く」
「それはありがとうございます。相手も結構強いので油断してると負ける危険性がありました……どうかご承知ください」
「大丈夫です、今後の活躍も期待しています」
「私もです」
お互いに本音なのか社交辞令なのかわからない――俺は本音だ――、軽いやり取りをして互いに離れる。俺はギルダーさん率いる神国騎士団の陣地、ラファエルさんはアラナンド教の騎士集団、神国聖騎士団の陣営に戻っていった。
「ギルダーさんもすごい戦いでしたね」
「それほどでも」
ギルダーさんは手慣れたように受け流していく。ギルダーさんは戦闘経験だけでなく、人生経験もかなり豊富なようである。これが65歳の貫禄。
「次は戦いやすいと言われるゴブリンと実戦訓練をする予定です」
「そうですか。勝てそうですか?」
「1対1で負けることはないでしょう。囲まれないよう私が他は対処します」
八百長というかなんというか……神国はそれほど勇者を丁重に扱うという印なのだろうか。不満がある訳ではないけど。
そうして、ゴブリンたちがいるという第1領域へ、ギルダーさん率いる神国騎士団の4分の1、ラファエルさん率いる神国聖騎士団の半分がゴブリン戦についてくることになった。神国全体で見るのならば神国四戦騎の半分、神国騎士団の4分の1、神国聖騎士団の半分という、相当な量の戦力である。
「さて、ここら一帯のゴブリンは1匹ずつしか近づませんので、どんどん倒してしまってください」
「わかりました」
早速、騎士団員たちの包囲の中に1匹のゴブリンが入ってくる。
俺はそのゴブリンに向かい、抜いた聖剣、エクスカリバーを構え――その刃を、ゴブリンの緑色をした首肌に当てると、そこから紅い血が噴き出す。
ゴブリンは一撃で絶命した。抵抗の暇もなく。俺の攻撃を認識することも出来ず。俺自身の手で。そう考えると嫌悪感が襲ってくる。俺は生物を殺めた――罪悪感すらも感じる。しかし、これから先に殺さなければ死ぬ可能性があることを考えると、その考えを振り払うしかなかった。
ゴブリンたちを全て片付けて王宮に戻ると、騎士団員たちには報酬として、銀貨1枚と銅貨2枚、階級に応じてそれ以上が配布された。俺と四戦騎には後々別のものを渡すらしいのであとで謁見の間に呼び出されるようだ。