3話 戦力増強
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何とかしてアリアの生い立ちから話題を逸らし、俺とアリアは今日の転職について話をしている。まあ元々職業がないので転職という言い方は正しくはないのだが。
どうやらアリアも今日転職するらしい。今日が15歳の誕生日で、15歳になると冒険者ギルドに登録でき、その際に転職することが可能のようだ。
ちなみに転職というのはステータスプレートに表記される職業を変更することを指し、レベルが100に達すると可能である。
アリアは速度攻撃型前衛攻撃職がいいらしい。俺もソロでやるなら速度攻撃型前衛攻撃職を勧められた。なんでも、敵の攻撃を回避しながら効率よくダメージを与えられるからだそうだ。ソロならば、相手の攻撃を耐えたり回避しながら攻撃する職が有効だ。攻撃防御系などは痛いのでお勧めしない、と。
「確かに痛いのは嫌だな。俺が死んだときもガチで痛かったからもう勘弁だ」
「え、一度亡くなってるんですか!?」
俺はこの世界に来る前に一度死んでいるのだ。当時のことはもう思い出したくもないが、この世界に来てからも混乱していたのはよく覚えていて、記憶に新しい。
「そうだな……元の世界では馬車みたいな交通手段があって……それに轢かれて死んだ」
「そうなんですか……」
またもや重苦しい話になってきたので、俺は転職について再びアリアに話しかけ、慌てて話題の転換を図る。
「速度攻撃型の職業でお勧めってあるか?」
「剣で言えば、魔術で自らを加速する、速度攻撃型でありつつも特化ではない『魔術剣士』、聖剣を扱う速度型職業『聖剣士』、そして最も一般的な攻撃職『剣士』などですね。その他の武器にも似たようなバリエーションがあります」
よく聞く中で、『騎士』は物理防御型、魔法使い――この世界では『魔術師』は魔術型という事になるのだろう。剣を使うのもありだが、槍や斧――まあ速度型要素はないのだが――も良さそうだ。
「一般的なパーティ編成ってどんな感じなんだ?」
「まず敵の攻撃を受ける役割の防御職、騎士や戦士が3名程度、剣士や槍術士などの近中距離アタッカーが3名程度、魔術師、弓術士などの遠距離アタッカーが2名程度、癒術士や聖職者などの支援術士が1名程度、斥候、盗賊などの隠密職が1名程度の10名前後のパーティが一般的ですね」
異世界物などではパーティは4~6名で描かれるイメージがあるのだが、この世界におけるパーティは結構大規模のようだ。そんなパーティを異世界で俺が作れるとも思えないのだが。
そうこうしているうちに6時40分、7時に王城を出発し冒険者ギルドへ向かう予定らしいのでそろそろ用意を始めたい時間である。俺もアリアも一度自室へ戻り、装備を携え出かける用意をするのだった。……まあ俺は聖剣だけだが。
用意ができて、王城の門へやってきた。どうやら今回は国王本人は同行せず、騎士の偉い人が同行するようだ。
門にいる偉い人は国王よりも年を取った感じの男性だ。
「どうも、儂はギルダー・アルダと申します。神国騎士団団長で、神国四戦騎の一騎、『神騎』です。本日は冒険者ギルドまでの案内と、その後の戦闘訓練を担当させていただきます。よろしくお願いします。ちなみに、職業は『騎士王』をやらせていただいています」
「俺は勇者の金堂勇」
アリアは元々双方と知り合いであり、ギルダーさんはアリアの師匠でもあるらしいのでアリアは紹介を省かれた。俺はアリアと雑談をしながら、ギルダーさんの案内でギルドへ向かう。
雑談をしていて時間を潰せたのか、直ぐに冒険者ギルドへ到着した。王城からも見る限りではそこまで遠くはない。500m程度だろうか、遠くも近くもなく、といった感じだ。
ギルダーさんがギルドの扉へ手をかけ、何も意識せず開く。すると、中から声が聞こえてくる。荒くれ者だろうか。
「ようこそ冒険者ギルドへいらっしゃいました。依頼の受領でしょうか? それとも作成でしょうか?」
「冒険者登録をよろしく頼む」
「ギ、ギルダー様でしたか。という事は国の騎士ではなさそうなその2名の登録ですか?」
「その通りだ」
なんというか、本当に治安のいいギルドだった。荒くれ者のいそうなイメージの酒場はどうやら隣にあるらしいが、酒場にも荒くれ者など存在しないとのこと。この国の冒険者ギルドはクリーンなイメージをモットーにしているとのこと。
「では、男性の方。こちらへいらっしゃいませ」
「わかりました」
身分を明かしていない以上タメ口で喋って問題になるのも面倒くさいので敬語で喋る。
それから色々と聞かれた。身長は170.3㎝だとか、体重は48.5㎏とか、生年月日は神国歴とやらで聞かれたが、16年前神国歴の506年と答えておいた。そして、肝心の職業だが、選択式らしい。選択肢は個人によって違うようだ。
俺の選択肢には、特化したステータスが必要なもの以外全てが表示されているのだという。元のステータスが高いから、だそうだ。ちなみに特化したステータスが必要なものというのは、例えば速度特化の侍だとか盗賊だとかである。
俺が選択したのはシンプルに剣士の上位職である『剣聖』にした。魔術を扱うという異世界の定番、魔術剣士もよかったし、騎士とかも結構格好いいと思ったのだが、聖剣エクスカリバーを使っているから、聖の字の入っている剣聖を選んだ。ただ単純に合うから、である。
冒険者登録を終え、待合室の、ギルダーさんの隣の椅子でアリアを待つ。ギルダーさんに職業を使えると少々驚かれたものの、特に気にもかけずとにかく待機する。先ほどはアリアは剣士を選択する、と言っていたので剣士或いはその上位職に就くだろう。
俺が待ち始めてからしばらくすると、アリアが登録を終えて俺が座っている椅子に寄ってきた。その手には、アリアは新しく発行してもらったらしいステータスプレートが握られており、職業欄には『戦姫』の文字。ステータスを見ると、勇者で剣聖の俺ほどではないが、かなりの高ステータスであることが見て取れる。
「勇様、剣聖ですか!?」
「ああ、そうだが……何か問題でもあるのか?」
「儂は騎士の相当な上位職、聖騎士の1つ上位職として神国最強格『神国四戦騎』の一角をやらしていただいていますが……剣聖は剣士系職で聖騎士と同格の存在です」
聞いた限りであれば、かなりヤバそうな職業だが……まあやることは変わらない、と割り切って皆でギルドを離れた。
ちなみに、アリアに「俺の呼び方はせめて『勇さん』にしてくれないか?」というと快諾してくれた。