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桃太郎?

作者: 大林 遥

 あるところに、おじいさんとおばあさんが暮らしていました。


 ある日、おじいさんは芝刈りに、おばあさんは川へ桃を取りに行きました。

 おばあさんはこっそりためていたへそくりで、amazonで大きな桃を買い、おじいさんに内緒でとても大きな桃を独り占めしようとしていたのです。


 そして、川上から桃が流れてきました。

 おばあさんはにこにこほほえみながら川から桃を引き上げ、これまたにこにこ微笑みながら包丁を振りかぶり、目の前の大きな桃に振りかぶったところ、中から悲鳴が聞こえてきました。おばあさんは 訝しんでそっと桃をたたっ切ると、桃の中からおっさんが出てきました。

 どうやらもう完熟していたようです。


 彼は桃太郎と名乗り、自分は力が強く、力仕事が得意でおばあさんをいくらでも手伝うからその薄ら笑いを浮かべて包丁を見つめるのをやめてくれと懇願しました。


 とりあえずおばあさんはamazonにクレームを入れました。


 そして、仕方なくおっさんを居候させることにしたおばあさんは、後に残った桃の残骸を見て、それはもう深い、深いため息をつくのでした。さすがにおばあさんにはおっさんの入っていた桃を食べるような勇気はありませんでした。桃は(amazonの)スタッフが責任を取っておいしくいただきました。彼らは死にたそうな顔をしていました。


 ちゃんと返金してもらってほくほく顔のおばあさんは、amazonすらいらないといっておしつけてきたおっさんを一瞥し、こいつをどうしてくれようかと悩みました。

 とりあえずおばあさんは家におっさんを連れて帰り、おじいさんにすべてを説明しました。


 おじいさんはへそくりをためていたことに対しては何も言いませんでした。

 かわりに、ヘイカモとばかりに人差し指をクイクイッと曲げると、なんと、家の裏口から猿、雉、犬が入ってきたではありませんか。おじいさんは、へそくりをためて大きな黍団子を楽天で買ったらこいつらが入っていたと説明しました。

 仲の良い夫婦ですね。日本の通販はもうだめかもしれません。


 とりあえずおばあさんはへそくりをためていた罰として、おじいさんを鍋で殴りました。おじいさんはこの世の不平を嘆きました。


 おじいさんが強烈な頭の痛みに悶えているうちに、ペット3匹衆と桃太郎はこれからどうするかを話し合いました。桃太郎はともかく、動物ズは畑仕事などできるはずもないので、最悪あの悪夢の「拾ってくださいBOX」に入れられてしまう可能性もあるため必死で話し合っています。

 目が血走っていて必死に考えているさまが伝わってきますね。


 結局、思いついたのは大道芸くらいで、三匹とも必死で体をあらぬ方向へ曲げようとしているところにおじいさんをしばき倒し終えたおばあさんがやってきました。そして、こう言い放ったのです。

「鬼退治をしてきたら死ぬまでここにいさせてあげるから、鬼退治に行ってきておくれ」

と。

 それに対する動物の返事はもちろん、

「えぇ~いy (ギロリ)おまかせあれ!」

だったそうな。見事に尻に敷かれていますね。


 それからというもの、桃太郎一味は支度をはじめました。

 まず、桃太郎は「日本一」と書かれた旗を背負いました。旗の裏には(笑)と書かれていたことに彼は一生気づきませんでした。

 そして、おばあさんに黍団子を作ってくれと頼みました。しかし、優しいおばあさんは、黍団子のほかに野菜など、ほかの食糧も持たせてくれました。黍団子だけじゃビタミンが摂れませんからね。


 ちなみに、ビタミンの正しい発音はヴァイタミンです。


 しかし、それを見た桃太郎は不満を口にしました。肉がないではないか、と。しかし、幸い聞き分けが大変よろしいようで、おばあさんがギロリと彼をにらみつけるとすぐに口を閉じました。彼はのちに、「人生でこれほど死を身近に感じたことはない」と語っています。

 いったいあの数瞬の間に彼に何があったのでしょうか……。


 何はともあれ、桃太郎一行はおじいさん、おばあさんに見送られながらその地を発ちました。そしてバスに乗って、電車に乗り換え、船着き場に到着しました。


 誰も昔々なんて言ってません。


 そしてガタイのいい豪勢なおっちゃん船長に行き先を伝え、出発しました。彼は鬼ヶ島と聞くと頬を引きつらせてやんわりと断ろうとしてきましたが、黍団子を渡すとおとなしくなりました。一体黍団子には何が入っていたのでしょう。

動物たちは鬼を見るような目で桃太郎を見ていました。退治しましょうか。


 そしてなんだかんだあって(雉が動物園に売られかけたり猿が動物園に売られかけたりした)鬼ヶ島に到着しました。


 鬼ヶ島に到着した一行が最初に目にしたものは「めんそ~れ、鬼ヶ島!」という何とも気が抜けるような垂れ幕でした。しかも、鬼ヶ島には都市規模の住宅街が出来上がっていて、彼らは幸せそうに暮らしています。桃太郎の心が痛みます。通りすがりのおばあちゃん鬼が「こんにちは」と声をかけてくれました。桃太郎の心がさらに痛みます。食料を手に入れようと店に入ったら店員さんが優しく接してくれました。


――もうやめたげてぇ! 桃太郎のライフはもうゼロよ!


 動物たちはものすごくいたたまれない顔をしている! 

「もう、帰る?」

桃太郎の心が折れました。

 動物たちもすごく微妙な顔をしています。帰ります。


 さて、船の隅でガクブルしていたおっちゃんを黍団子で奮い立たせておばあさんの家まで帰ろうとすると、突然桃太郎のスマホが「ホワィン」、と鳴りました。

“いいんだな?”

 桃太郎一行は瞬時に体を百八十度回転させると、あ、猿が勢い余ってもう一回転してる、鬼ヶ島に向かって歩き出しました。誰もあのバb……おばあさまには勝てないのです。仕方ないね。


 桃太郎一行が重くて重い、それはもうヒノノ〇トンくらい重い足を引きずってのろのろ歩く時速100mの不審者となっていると、後ろから

『ズッドッドッドッドッ『スコーン』「ぐぇ」ドッドッドッ』

 という音が聞こえています。すでに被害が出ているようです。


 一行が音に気付き後ろを振り向くと、なまはげに似た何かが鬼の形相をして音速に迫る速度でこちらに向かってくるではありませんか。ちなみに音速は言い過ぎました。てへぺろ☆


 なまはげはちょっと行き過ぎてから戻ってきて、鬼の形相でこちらを睨みました。その様子はまさに鬼。


 鬼……。


 鬼退治……。


 ということで、数瞬の間に桃太郎たちの見事な連携でなまはげは簀巻きにされていました。


 これを持って帰ればおばあさんも満足するだろうと思い、桃太郎がなまはげを見てみると、そこにはなまはげのような顔をしたおばあさんの顔がありました。

 桃太郎は腰を抜かしました。

 なんとかまた差し込みました。


 話を聞くと、桃太郎たちがたらたらしていたため、「たらたらしてんじゃねーよ!」と言いに来たようです。辛そう(小並感)。


 ちなみにおばあさんがそこまで鬼を忌み嫌う理由は、なんか気に食わないかららしいです。

 鬼たちに「鬼!」と罵られていました。桃太郎たちはツッコむのを我慢するのに精一杯でした。ついでに牢屋に入れられていました。


 その後、桃太郎はおばあさんという名の呪縛から解放されたおじいさんと一緒にちゃんとした桃を食べました。あ、あとおばあさんには懸賞金がかかっていたらしく、お金にも不自由することなく平穏に暮らしました。

 雉と猿は動物園で幸せな見世物ライフを送っていますし、犬は今もどこかの拾ってくださいBOXで「クゥ~ン……」してます。みんな幸せそうで何よりです。

 めでたしめでたし。


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